米国疾病予防管理センター(US CDC)からのノロウイルス関連情報
http://www.cdc.gov/


米国における食品由来ノロウイルスアウトブレイク(2009〜2012年)
Vital Signs: Foodborne Norovirus Outbreaks - United States, 2009-2012
Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR), June 3, 2014 / Vol. 63 (Early Release); 1-5
http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/wk/mm63e0603.pdf (PDF版)
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm63e0603a1.htm

(食品安全情報2014年12号(2014/06/11)収載)


序論

 ノロウイルスは、米国における急性胃腸炎および食品由来疾患の主要な原因である。小児や高齢者を中心に、患者は毎年米国居住者の15人に1人の割合で発生し、入院患者数は56,000〜71,000人、死亡者は570〜800人と推定されている。ノロウイルスはヒト−ヒト感染によって伝播することが多いが、食品を介して感染が拡大する可能性があり、食品由来感染は予防対策の重要な対象となっている。

方法

 食品由来ノロウイルスアウトブレイクの疫学状況を把握するため、全米の州・地域等の各保健当局から全米アウトブレイク報告システム(NORS:National Outbreak Reporting System)を通じて2009〜2012年に報告された疑い/確定ノロウイルスアウトブレイクに関するデータを分析した。

結果

 2009〜2012年はNORSに計4,318件のノロウイルスアウトブレイクが報告され、それらの患者数は161,253人、入院患者数は2,512人、死亡者数は304人であった。これらのノロウイルスアウトブレイクのうち1,008件(23%)では主たる伝播様式が食品由来であり、これは、当該4年間に報告され、疑いまたは確定病因物質が単一であったすべての食品由来アウトブレイク2,098件の48%に相当した。4,318件のノロウイルスアウトブレイクについて報告された主たる伝播様式は、食品由来以外に、ヒト−ヒト(2,976件、69%)、環境由来(15件、0.35%)、水由来(11件、0.26%)、および伝播様式不明(308件、7%)からなっていた。食品由来ノロウイルスアウトブレイクのうちの158件(16%)では、食品由来以外の上記のいずれかの伝播様式が従たる伝播様式として報告された。ノロウイルスアウトブレイクは冬季に最も多くみられ、12月〜2月の発生件数は計2,394件(55%)であった(図1)。食品由来ノロウイルスアウトブレイクでは398件(39%)が12月〜2月に発生したが、非食品由来ノロウイルスアウトブレイクの場合は1,996件(60%)が12月〜2月に発生した。


図1:全米アウトブレイク報告システム(NORS)に報告されたノロウイルスアウトブレイクの主たる伝播様式および発症月ごとの件数(米国、2009〜2012年)

*ヒト−ヒト、水由来、環境由来および伝播様式不明が含まれる。


 報告された4,318件のノロウイルスアウトブレイクのうち、2,961件(69%)は検査機関で確定したが、残りの1,357件(31%)は臨床的および疫学的な知見からノロウイルスが病因物質であると疑われた。2,961件のノロウイルス確定アウトブレイクのうち、2,729件(92%)についてウイルスの遺伝子群が特定され、2,341件(86%)がGII、374件(14%)がGI、13件(0.5%)がGI/GIIの混合、1件(0.04%)がGIVであった。検査機関確定アウトブレイクのうち707件(24%)で特定のノロウイルス遺伝子型が報告され、内訳はGII.4(465件、66%)、GII.1(58件、8%)およびGI.6(56件、8%)の順であった。食品由来アウトブレイクの方が非食品由来アウトブレイクよりGII.4以外の遺伝子型のウイルスを原因とする頻度が高かった(48%対31%、p<0.001)。

 食品由来ノロウイルスアウトブレイクは計43州から報告され(図2)、各州の報告件数の範囲は1〜117件(中央値は9件)であった。州ごとの人口100万人・年あたりのアウトブレイク件数の中央値は0.6件(範囲は0.05〜5.5件)であった。食品由来ノロウイルスアウトブレイク1,008件のうち、904件(90%)について食品の調理場所が報告され、レストラン(574件、64%)および仕出し/宴会施設(151件、17%)が最も多かった(表1)。一方、非食品由来ノロウイルスアウトブレイクはほとんど(80%)が老人ホームなどの長期介護施設で発生していた。


図2:全米アウトブレイク報告システム(NORS)に報告された食品由来ノロウイルスアウトブレイクの州ごとの発生件数および人口100万人・年あたりの発生率(米国、2009〜2012年)


* Legend indicates rate ranges divided by quartile.


表1:全米アウトブレイク報告システム(NORS)に報告された食品由来および非食品由来ノロウイルスアウトブレイクの発生場所*別の発生件数および百分率分布(米国、2009〜2012年)


*発生場所は食品由来ノロウイルスアウトブレイク1,008件のうち904件(90%)、非食品由来ノロウイルスアウトブレイク3,310件のうち2,590件(78%)で報告された。
†ヒト−ヒト、水由来、環境由来および伝播様式不明が含まれる。


 ノロウイルスアウトブレイク患者の人口統計学的特徴および転帰はアウトブレイクの発生場所の違いを反映していた(表2)。食品由来アウトブレイクでは、男性(44%)および75歳未満(95%)の患者の割合が非食品由来アウトブレイクの場合(それぞれ30%および50%)より高かった(いずれもp<0.001)。一方、入院率および致死率は、食品由来アウトブレイク(それぞれ1%、0.01%)の方が非食品由来アウトブレイク(それぞれ2%、0.3%)より低かった(いずれもp<0.001)。しかし、患者の救急外来の受診率は食品由来アウトブレイク(4%)の方が非食品由来アウトブレイク(2%)より高く(p<0.001)、アウトブレイク1件あたりの報告患者数は食品由来アウトブレイク(中央値12人)の方が非食品由来アウトブレイク(中央値30人)より有意に少なかった(p<0.001)。


表2:全米アウトブレイク報告システム(NORS)に報告された食品由来および非食品由来ノロウイルスアウトブレイクにおける人口統計学的特徴および転帰別の患者数と百分率(米国、2009〜2012年)


*ヒト−ヒト、水由来、環境由来および伝播様式不明が含まれる。
†年齢層別および性別の患者数は全患者数についての外挿値である。
§百分率は各転帰に関して報告を行った患者数にもとづいており、各百分率は異なる分母を用いて算出された。


 食品由来ノロウイルスアウトブレイク1,008件のうち520件(52%)について食品汚染の寄与因子が報告され、このうち364件(70%)でノロウイルス感染の食品取扱者が食品汚染源として関与していた。これらのアウトブレイクのうちの196件(54%)において、そのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品への素手による接触が明確に特定された。

 食品由来ノロウイルスアウトブレイク1,008件のうち324件(32%)で、少なくとも1品目の食品が原因食品として特定された。これらのアウトブレイクでは、原因食品の92%が調理中に汚染されており、75%が生(非加熱)で喫食されていた。原因食品が単一のカテゴリーの食品であったのは67 件(21%)においてのみであり、原因食品として多かったカテゴリーは生鮮野菜(レタスなどの葉物野菜)(20件、30%)、果物(15件、21%)および二枚貝(13件、19%)であった。


(関連記事1)
CDC Press Release
Norovirus is the leading cause of disease outbreaks from contaminated food in the U.S.
June 3, 2014
http://www.cdc.gov/media/releases/2014/p0603-norovirus.html

(関連記事2)
ミネソタ大学感染症研究センター(CIDRAP)
CDC: Norovirus leads list of food outbreak culprits
Jun 03, 2014
http://www.cidrap.umn.edu/news-perspective/2014/06/cdc-norovirus-leads-list-food-outbreak-culprits



国立医薬品食品衛生研究所安全情報部