オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)からのノロウイルス関連情報
http://www.rivm.nl/


食品関連の病原体による疾患の実被害(オランダ、2010年)
Disease burden of food-related pathogens in the Netherlands, 2010
19 September 2012
http://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/330331004.html

http://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/330331004.pdf(報告書PDF)

(食品安全情報2012年22号(2012/10/31)収載)

 オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は、14種類の腸管病原体による疾患の症例数、実被害およびその被害金額の推定値を2008年から定期的にWebサイトで公表しており、今回、2010年のデータを発表した。2010年版への更新には、疫学サーベイランスデータおよび人口統計学的情報についての傾向分析の結果が利用された。2009年と比較して、カンピロバクター症患者数は14%、サルモネラ症患者数は19%それぞれ増加した。またロタウイルスによる胃腸炎疾患の患者数は14%、ノロウイルスの患者数は25%増加した(ウイルス性胃腸炎による入院患者数のデータにもとづく)。周産期および後天性(acquired)リステリア症の患者数は4人および73人で、2009年と同程度であった。後天性リステリア症による死亡者は13人で、2009年より大幅に増加した。志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157感染症の患者数は2009年と同程度であったが、A型肝炎の患者数は49%増加した。クリプトスポリジウム症およびジアルジア症に関しては、2007年までのサーベイランスデータを外挿して求めた傾向情報を用いた。細菌性毒素型食中毒およびトキソプラズマ症については利用できる傾向情報がなかった。

 患者数が増加したことにより、カンピロバクター症、サルモネラ症、ノロウイルスおよびロタウイルス感染症で実被害(推定値)が増加した。リステリア症でも死亡例の増加により実被害が大幅に増加した。周産期リステリア症が全ての病原体の中で症例あたりの実被害が最も大きかった。14種類の腸管病原体による総実被害は、障害調整生存年数(DALY)で表して13,500から14,900に10%増加した。このうち食品由来の疾患による実被害は6,020 から6,440 DALYに7%増加した。特に大幅な増加を示したのはヒト−ヒト感染による疾患の実被害で、2,370 から2,800 DALYへ18%の増加であった(ウイルス性疾患の患者数の大幅な増加に関連している)。食品由来のうちで疾患の実被害が大きかったのは家禽肉、牛肉/マトン、もしくはヒトまたは動物(主に既感染の食品取扱者)を介した場合であった。動物性食品は、食品を感染経路とする患者の50%で原因食品とされたが、それらの疾患の実被害についてはその72%を説明した。これは、動物性食品に関連する病原体は他の食品の場合に比べより重篤な症状を引き起こす傾向があることを示している。

 個々の病原体による疾患の発生動向に関する利用可能な情報には限りがあるため、本報告書に記載された症例数および実被害の変化の解釈には注意が必要である。過去数年間に比べ約25%増加したカンピロバクター症を除いて、いくつかの疾患の患者数の2009年からの増加は当該疾患の患者数の過去10年間の変動範囲内に収まっている。カンピロバクター症の患者数の大幅な増加の理由は明らかではない。

 本調査研究により、食品由来疾患の真の症例数およびそれによる実被害について、より多くの知見が得られた。オランダ食品消費者製品安全庁(NVWA)および地域の保健所がオランダ国内の食品由来疾患アウトブレイクの登録と調査を行っている。しかし、食品由来疾患症例の大部分はこれらの機関に報告されていない。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部