http://www.hpa.org.uk/hpr/archives/2012/news1812.htm#efoss
(食品安全情報2012年10号(2012/05/16)収載)
2011年に英国健康保護庁(UK HPA)の「食品由来およびその他の胃腸炎アウトブレイクの電子サーベイランスシステム(eFOSS)」に報告されたイングランドおよびウェールズの食品由来感染症一般アウトブレイクの件数は83件であった。2010年は63件であった。
2011年の一般アウトブレイク発生件数の増加は、カンピロバクター属菌アウトブレイクの持続的な増加(2010年は18件、2011年は20件)およびサルモネラ属菌アウトブレイクの増加(2010年は8件、2011年は18件)が原因である可能性がある。
カンピロバクターアウトブレイクは2009年以降増加が続いており、カンピロバクターは現在、最も高頻度に報告される病因物質として全アウトブレイク件数の24%を占めている。それまでと同様2011年も、カンピロバクターアウトブレイクの大多数は食品提供業者が提供した加熱不十分な家禽レバー(パテ/パルフェ)の喫食に関連していた。サルモネラアウトブレイクは全アウトブレイクの22%(18件)を占め、大多数はPT 4以外のSalmonella Enteritidis(44%、8件)もしくはS. Typhimurium(33%、6件)によるものであった。カンピロバクター、サルモネラの次に多く特定された病因物質は、ノロウイルス(10%、8件)、ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)O157(10%、8件)、ウェルシュ菌(8%、7件)などであった。
83件の食品由来アウトブレイクによる患者数は合計2,133人で、このうち1,066人が検査機関確定患者であり、173人が入院し3人が死亡した。サルモネラおよびVTEC O157患者が患者全体に占める割合は高く(それぞれ595人[28%]、256人[12%])、また入院患者に占める割合も高かった(それぞれ75人[43%]、83人[48%])。カンピロバクター患者数は2008年の42人から2009年には6倍の著しい増加が見られて315人になり、2011年には、2010年の376人から37%増加して518人が報告された。
発生場所、原因食品および寄与因子についての内訳
2010年までと同様、ほとんどのアウトブレイク(80%、83件中66件)はレストラン、パブ、ホテル、イベント仕出し業などの食品提供業分野で発生していた。残りのアウトブレイクは、刑務所や介護施設などの公共施設や居住型施設(13%、11件)、広域地域社会(5%、4件)、もしくは小売店舗(2%、2件)のいずれかに関連していた。
アウトブレイクの84%(70件)で原因食品が指摘されており、1件のアウトブレイクで複数の原因食品が特定される場合もあった。最も高頻度で特定された原因食品は、家禽肉(30%、94件中28件)、複合/混合食品(18%、94件中17件)および赤身肉(12%、94件中11件)であった。家禽肉が関連したアウトブレイクの3分の2以上(69%、28件中16件)はカンピロバクターが病因物質で、その94%(15件)が家禽レバー(パルフェ/パテ)によるものであった。複合/混合食品によるアウトブレイクには、ウェルシュ菌(3件)、ノロウイルス(3件)、VTEC O157(2件)などの種々の病因物質が関連しており、赤身肉によるアウトブレイクにはS. Typhimurium(5件)、VTEC O157(2件)、ウェルシュ菌(2件)などが関連していた。原因食品を特定するエビデンスは、49%(83件中41件)のアウトブレイクで記述疫学、22%(18件)で分析疫学、8%(7件)で記述疫学と微生物学的分析、および5%(4件)で分析疫学と微生物学的分析によりそれぞれ得られた。
食品由来アウトブレイクに関連した主な寄与因子は、交差汚染(37%、83件中31件)および不適切な加熱処理/調理(35%、29件)であった。その他の寄与因子は、期限を過ぎた食品の保存(19%、16件)、不適切な冷却(14%、12件)、感染した食品取扱者(13%、11件)、手洗い設備の不備(13%、11件)などであった。
2011年のeFOSSのデータから、主に鶏レバー料理(パルフェ/パテ)を介したカンピロバクターが依然として食品由来アウトブレイクの最も多い病因物質であることが明らかになった。すべての食品由来アウトブレイクについて、その大多数が食品提供施設に関連し、食品の不適切な調理や調理場での交差汚染を寄与因子とするものであった。