カナダ食品検査庁(CFIA)からのノロウイルス関連情報
http://www.inspection.gc.ca/


トマト検体で細菌汚染は不検出
No contamination detected in tomato tests
September 7, 2012
http://www.inspection.gc.ca/about-the-cfia/newsroom/news-releases/2012-09-07/eng/1346773596043/1346773627783

(報告書要旨)
カナダ市場のトマトでの病原細菌および糞便系大腸菌群(E. coli)の汚染状況(2009〜2010年)
2009-2010 - Bacterial Pathogens and Generic E. coli in Tomatoes in the Canadian Market
http://www.inspection.gc.ca/english/fssa/microchem/resid/2009-2010/cantomae.shtml

(食品安全情報2012年21号(2012/10/17)収載)

 カナダ食品検査庁(CFIA)は、様々な食品に対する通常検査の一環として実施したトマト検体の検査の結果を発表し、それらについては100%がサルモネラ菌、赤痢菌、大腸菌O157:H7/NMおよび糞便系大腸菌群(E. coli)に汚染されておらず、ヒトの喫食用として安全であることが明らかになった。追加調査の必要はなかった。

 この10年で、疾患と関連する食品として生鮮果物や生鮮野菜の報告件数が増加しており、トマトは生鮮野菜が関連するアウトブレイクにおいて2番目に多く報告される原因食品である。生鮮野菜によるアウトブレイクは今まで主に米国で発生しているが、トマトについては供給元がカナダと米国とで共通であることが多いことから、カナダにおけるトマトの微生物学的汚染状況が懸念される。カナダや米国では秋から冬、春にかけてトマトは主にメキシコからの輸入により補充されており、カナダの輸入トマトの25%は米国産である。

 トマトに関連したアウトブレイクでは病因物質としては今までサルモネラが最も多く、次いでノロウイルス、A型肝炎ウイルスであった。米国では、赤痢およびカンピロバクター症のアウトブレイク各1件が汚染トマトに関連していた。過去10年間で有機栽培トマトの市場シェアが急激に拡大した。農産物の有機栽培には堆肥を使用するので、大腸菌O157:H7などの腸管病原体による汚染の可能性が上昇する懸念が生じている。病原性株とは対照的に、E. coliには無害の株が多数存在する。これらの無害の菌株はヒトや動物の大腸に生息しており、糞便として環境中に排出される。病原微生物が共在していると、それらも無害のE. coliとともに排出される。したがって、E. coliは農産物の糞便汚染の最も有効な指標菌と考えられ、その汚染レベルは適正農業/農場管理規範(GAP/GFP)の遵守の尺度として用いられている。トマトで高レベルのE. coli汚染があった場合、それは生産・包装・貯蔵における不適切な農業/農場管理規範および清潔性や適切な衛生状態の欠如を示している可能性がある。

 以上のすべての要因を考慮し、食品安全行動計画(FSAP: Food Safety Action Plan)に基づく強化サーベイランスの対象としてトマトが選択された。全体としての目的は、カナダの小売り段階で入手可能なトマトについて、病原菌および指標菌(E. coli)の汚染に関するベースラインデータを収集することであった。この対象を限定した調査では、以下に挙げるいくつかの懸念すべき病原細菌について、それらの汚染の有無および分布のデータを収集することを目的とした。

 i. トマトでのサルモネラ属菌および赤痢菌(Shigella spp.)
 ii. 有機栽培トマトでの大腸菌O157:H7および大腸菌O157:NM
 iii. トマトでの指標菌E. coli

 本調査では小売りの生鮮トマト計1,414検体が検査対象とされ、このうち輸入品は701検体、国産品は713検体であり、従来型栽培品が1,211検体、有機栽培品が203検体であった。これらの検体について検査対象病原菌(サルモネラ属菌、赤痢菌)および指標菌(E. coli)の汚染が検査された。加えて、すべての有機栽培の検体(輸入101検体、国産102検体)および一部の国産の従来型栽培の検体(103検体)については大腸菌O157:H7および同O157:NMの汚染も検査された。検査検体のすべてでいずれの対象病原菌および指標菌も検出されなかったことから、包装、輸送および貯蔵の際のGAPの遵守および適切な衛生状態が示唆された。

 トマトに関する種々のモニタリングプログラムの最新の結果も、今回の調査結果と類似したものである。これらの知見および食品由来疾患とトマトの喫食とを関連付ける疫学的エビデンスを併せ考えると、トマトの病原体汚染は散発的なものであることが示唆される。今回の調査でのサンプルサイズ(1,414検体)から、本調査時の小売りトマトにおける対象細菌の汚染率は0.2%未満であったと結論できる。トマトの「真の」病原体汚染率をより正確に推定するためには、さらに多くの検体の検査が必要となる。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部