ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのノロウイルス関連情報
http://www.bfr.bund.de/


2011年にドイツで発生したアウトブレイクに関与した食品
Food involved in disease outbreaks in Germany in 2011
19 September 2012
http://www.bfr.bund.de/cm/349/food-involved-in-disease-outbreaks-in-germany-in-2011.pdf

(食品安全情報2012年22号(2012/10/31)収載)

 食品由来疾患の予防には、食品および食品の生産・加工環境に関する広範な情報が必要である。このため、ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は、食品由来疾患アウトブレイクに関連した食品のデータを2005年以降収集している。2人以上が同じ食品に関連して発症した場合、食品由来疾患アウトブレイクの発生が疑われる。連邦州およびドイツ連邦軍の食品検査当局は、食品由来疾患アウトブレイクについての一通りの調査が完了すると、BELA報告システム(アウトブレイク原因食品についての情報を収集する連邦のシステム)を介してBfRに原因食品の情報を送る。報告の手順は、食品供給チェーンにおける人獣共通感染症に関する一般管理規則(AVV:General Administrative Regulation)に依っている。

 2011年、BfRは14連邦州から食品由来疾患アウトブレイク90件に関する情報を受け取った。病因物質としてはサルモネラが最も多く(34件)、次いでノロウイルス(14件)、カンピロバクター(8件)であった。しかし、ブドウ球菌やセレウス菌などの細菌毒素およびヒスタミンによるアウトブレイクも発生していた(計12件)。

 この90件のアウトブレイクのうちの50件で、単一の原因食品を特定するのに十分な微生物学的・疫学的エビデンスが得られた。食品供給チェーンにおける人獣共通感染症に関するAVVと欧州委員会のガイドライン2003/99/ECの規定にしたがい、BfRは欧州食品安全機関(EFSA)にこれら50件のアウトブレイクに関する詳細な情報を送った。原因食品としては、「調理済み食品(Ready meals and other prepared dishes)」のカテゴリーに属する食品が最も多く(14件)、次いで「食肉製品およびソーセージ(Meat products and sausages)」が5件、「ベーカリー製品(Fine bakery products)」および「生鮮野菜」がそれぞれ4件であった。細菌、ウイルス、毒素またはヒスタミンに汚染された原因食品の多くは、レストラン(17件)および一般家庭(10件)で喫食されていた。50件の食品由来疾患アウトブレイクのうち5件は、小児施設(学校または幼稚園)で喫食された原因食品によるものであった。

 関係当局の情報によると、少なくとも11件の食品由来疾患アウトブレイクで感染者による食品の取り扱いがアウトブレイク発生に重要な役割を果たしていた。そのほかの重要な要因は、冷却不十分(9件)、交差汚染(7件)、殻付き卵の加工(5件)、未加工の汚染材料(4件)、一次生産品中の病因物質(2件)などであった。食品中での病原体の生残や増殖が可能となる不適切な温度での長時間の加熱(7件)も要因に挙げられていた。1件のアウトブレイクでは害虫の侵入が要因となっていた。危害分析重要管理点方式(HACCP)の概念は食品事業者の自己管理に重要な要素である。関係当局の情報によると、6件の食品由来疾患アウトブレイクでHACCPの実施が不十分であった。1件のカンピロバクター症アウトブレイクでは家庭での不適切なとさつによる生鮮豚肉の汚染が原因であった。また3件のカンピロバクター症アウトブレイクでは、農場から直接購入した生乳の加熱不十分または非加熱での喫飲が原因であった。

 全国的規模の食品由来疾患アウトブレイク3件の調査では、連邦政府の機関であるBfR、ロベルト・コッホ研究所(RKI)およびドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL)が地域当局に協力した。2011年初夏にはスプラウトに関連した腸管出血性大腸菌(EHEC)感染アウトブレイクが発生し、2011年末頃には緑豆モヤシもしくはスイカの喫食に関連したサルモネラ(Salmonella Newport)感染アウトブレイク2件が発生した。これらの食品は国際的に取引されていたため、複数の欧州連合(EU)加盟国で消費者が感染した。これら3件のアウトブレイクは、ドイツではこれまであまり注意が払われてこなかった植物由来食品を媒介とした人獣共通病原体の拡散を示している。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部