(食品安全情報2012年21号(2012/10/17)収載)
ロベルト・コッホ研究所(RKI)、およびドイツ連邦消費者保護・食品安全庁(BVL: Federal Office of Consumer Protection and Food Safety)を拠点とする連邦政府と複数州によるタスクフォースが実施した調査により、ドイツ東部の5州(ベルリン、ブランデンブルク、チューリンゲン、ザクセン、ザクセン・アンハルト)で発生したドイツ史上最大規模の食品由来胃腸炎アウトブレイクの原因は、1バッチの冷凍イチゴである可能性が高いという結論が下された。
ロベルト・コッホ研究所(RKI)による調査
RKIは本アウトブレイクの検知と同時に、原因食品を特定するための疫学調査を開始した。調査はその後、地域および連邦の関連機関と協力して行われた。この調査(症例対照研究)では、嘔吐および下痢がみられた者とこれらの症状がない者、患者が発生した施設と発生していない施設のそれぞれに対し食品の喫食歴の聞き取りが行われた。調査では、患者の発症日までに回答者が喫食した食品および施設が提供した食品を特定することに重点が置かれた。2012年10月1〜4日に計4件の調査が実施された。RKIの調査担当者はザクセン州およびチューリンゲン州の各1校の高校の生徒に聞き取りを行った。この期間休みであったベルリンの1校の生徒には電子メールで質問票を送付した。また、ベルリンの小児施設からは電話で情報を収集し、全部で30カ所の小児施設から情報が集められた。
これらの調査の結果、特定バッチの冷凍イチゴを使用したイチゴ料理の喫食と嘔吐・下痢の発症との間に統計的に有意な強い関連が示された。その後、多くの患者からノロウイルスが検出された。これにより、ノロウイルスがアウトブレイクの原因病原体であった可能性が高くなっている。しかし、現時点ではまだその他の病原体や細菌性毒素などが原因であった可能性を完全に排除することはできない。
食品管理当局の対応
現在得られている知見にもとづくと、本アウトブレイクに関連した上記5州の学校・小児施設には、1食品提供業者が各地に所有している10カ所以上の調理施設から食品が提供されていた。
各連邦州における追跡調査から、関連した全ての調理施設がザクセン州の1供給業者から冷凍イチゴを仕入れていたことが明らかになった。当該のイチゴは、小売市場に流通した記録はなく、大規模な調理施設にのみ出荷されていた。管轄する食品安全当局の勧告により、供給業者は当該汚染製品の使用禁止と回収を発表した。ザクセン州当局は当該製品の全ての供給業者のリストを作成し、まだ倉庫に保管されている可能性があるすべての当該製品の返品を監視している。
しかし、当該バッチの冷凍イチゴを仕入れていたにもかかわらず本アウトブレイクと全く関連がない調理施設がドイツ東部に複数存在している。その他とは異なり、これらの調理施設では多くの場合イチゴをシロップ煮(コンポート)に使用するため加熱していた。ザクセン・アンハルト州とザクセン州の数カ所の食品提供施設も患者の発生に関与したが、これらの施設では別の供給業者2社から汚染の疑いのあるバッチの冷凍イチゴを仕入れて加工・提供を行っていた。これらの情報から、アウトブレイクの原因となった冷凍イチゴはおそらく1バッチのみで、十分な加熱処理が感染予防に重要な役割を果たしたことが確認された。
食品および環境検体の分析ではこれまでのところノロウイルスは検出されていない。しかし、ザクセン州を拠点とする加工業者および食品提供業者の施設でみつかった汚染バッチの留保品検体の一部について、調査が継続している。