(食品安全情報2011年3号(2011/02/09)収載)
英国食品基準庁(UK FSA)は、生カキの喫食によりノロウイルスに感染するリスクについて国民に注意喚起している。ノロウイルスは、冬季に流行する嘔吐症状の原因となる病原体である。
貝類は栄養分の摂取時に有害な細菌やウイルスも体内に取り込んでいる可能性があるため、生カキの喫食は食中毒のリスクを伴う。カキは大量の海水を濾過することで餌を獲得しており、海水中に存在する細菌やウイルスがカキの体内に蓄積されている可能性がある。
採捕前後の対策は有害細菌からのカキの保護には有効であるが、生きた貝類からのウイルス除去は困難である。十分に加熱すればウイルスは死滅するが、貝類は生のままか軽い加熱調理だけで喫食されることが多いため、喫食時にウイルスが生残している可能性がある。FSAと貝類を出荷している業界は、生きた貝からウイルスを除去する方法の改善に協力して取り組んでいる。
ノロウイルスに関連した感染症は冬季に多く発生する傾向がある。昨年(2010年)の今頃も英国で生カキの喫食に関連したノロウイルス感染症の患者数増加が観察された。FSAはその際に、カキを提供する食品業界およびカキの処理工場がある地方自治体に対し、ノロウイルスによるリスクを最小限に抑えるための追加対策を行うよう書面で勧告した。
今回、これを再勧告するとともに、消費者に対しても生カキの喫食に関連するノロウイルス感染症のリスクについて注意を促している。