(食品安全情報2010年17号(2010/08/11)収載)
フランスでは毎年冬期に急性胃腸炎(AGE:acute gastroenteritis)の流行のピークが観察され、医師の診察を受ける患者数は毎冬70万〜370万人と推定されている。本記事は、2006〜2007、2007〜2008および2008〜2009年の各冬期にフランス本土で発生したAGE流行の調査結果とその比較である。
フランスのAGEサーベイランスは、次に挙げるいくつかの相補的なシステムを通じて実施されている:“定点医療機関(Sentinelles)”としての一般開業医のネットワークによる診療報告、AGE関連の救急診療および入院報告、院内感染のアウトブレイク報告、食品由来アウトブレイクの義務的な報告、国立腸内ウイルスリファレンスセンター(National Reference Centre for enteric viruses)からのウイルスデータの報告、およびAGEアウトブレイクの地域当局からの自発的な報告。
“定点医療機関”ネットワークによると、2006/2007期に中程度の流行が見られ、2007/2008期は流行の開始が最も早く、2008/2009期は流行曲線が特異な形状で発生が長期間にわたっていた。AGE関連の救急診療および入院は、2007/2008期および2008/2009期で増加していた。3期合計で491件のアウトブレイクがInVSに報告され、発生数は冬期毎に増加していた。全アウトブレイクのおよそ60%が高齢者の自宅または長期滞在介護施設からの報告であった。ウイルス学的な確認ができたアウトブレイクは311件で、そのほとんどがノロウイルスG II.4が原因ウイルスであった。最も多く検出された遺伝子型は、2006/2007期ではBristol、続く2期では2006bおよび2006aであった。冬期毎の報告数増加は、ノロウイルスの新種の変異株の出現と同時にサーベイランスの向上による可能性も考えられる。