(食品安全情報2010年27号(2010/12/27)収載)
米国疾病予防管理センター(US CDC)の新しい推定によると、米国では毎年約4,800万人(米国民の6人に1人)が食品由来疾患に罹患しており、約128,000人が入院し、約3,000人が死亡している。これらの値は、信頼性のあるデータと改良された方法を用いて算出したため、これまでで最も正確な値である。これらの推定値は、CDCが発行する論文誌“Emerging Infectious Diseases”の2つの論文に発表された。
CDCによる新しい推定値は、1999年の論文での推定値より低めである。この違いは、主に、用いたデータの質と量の向上、および推定に使用した新しい方法の結果である。例えば、現在では、ノロウイルスの伝播は多くの場合、食品を介していないということが明らかになっており、これによって食品由来ノロウイルス感染患者数の推定値が年間約920万人から550万人に減少した。データの取り方および推定方法が異なるため、傾向分析のために1999年と今回の推定値を比較することはできない。
一般的な食品由来病原体の動向を追跡しているCDCの FoodNetサーベイランスシステムの結果では、これらの病原体が原因で発生した疾患の患者数が過去10年間で20%減少したことが明らかになった。しかし、FoodNetが調査対象としている病原体による患者数は、今回の新しい患者数推定値のごくわずかな割合しか占めていない。
CDCによると、毎年発生する約4,800万人の食品由来疾患患者のうちの約940万人については、31種類の既知の食品由来病原体が病因物質であると推定される。残りの3,800万人については病因物質が不明であり、これにはデータ不足により推定が不可能な既知の病因物質、食品由来疾患の病因として認識されていない既知の病因物質、未知の病因物質などが含まれる。1999年と今回のどちらの推定においても、およそ80%の推定患者で病因物質が不明であった。
以下は、原因病原体が特定された食品由来疾患に関する新たな知見のいくつかである:
・ サルモネラは推定入院患者数および推定死亡者数に第一位の寄与をなし、病因物質が特定された食品由来疾患による推定死亡者数の約28%、推定入院患者数の約35%を占める。
・ 病因物質が特定された食品由来疾患の推定患者、推定入院患者、および推定死亡者の約90%は、7種類の病原体(サルモネラ、ノロウイルス、カンピロバクター、トキソプラズマ、大腸菌O157、リステリア、ウェルシュ菌)を原因とする。
・ 病因物質が特定された食品由来疾患の推定患者のほぼ60%はノロウイルスが原因であったが、重症患者ではノロウイルスの割合はかなり少なかった。
CDCは、消費者に対し、食品の安全な取扱いや調理のヒントに従うことで食品由来感染症の予防に積極的に取り組むよう継続して訴えていく。食品調理時には食肉と生鮮農産物を分けて置く、食肉・家禽肉を適切な温度まで加熱する、食べ残しはすみやかに冷蔵する、また未殺菌乳・チーズおよび生カキの喫食を避けることを推奨する。
論文の全文は“Emerging Infectious Diseases” のWebサイトから(本号CDC記事参照)、食品由来疾患患者の推定値および推定方法に関するより詳細な情報はhttp://www.cdc.gov/foodborneburden/から入手可能。また、食品由来疾患の傾向分析についてはFoodNetのサイトhttp://www.cdc.gov/FoodNet/から、食品由来疾患を予防するための方法についてはhttp://www.foodsafety.gov/から情報を入手可能。