米国疾病予防管理センター(US CDC)からのノロウイルス関連情報
http://www.cdc.gov/


米国における食品由来疾患アウトブレイクのサーベイランス(2007年)
Surveillance for Foodborne Disease Outbreaks --- United States, 2007
Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)
August 13, 2010 / 59(31);973-979
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm5931a1.htm?s_cid=mm5931a1_w
http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/wk/mm5931.pdf(PDF)

(食品安全情報2010年18号(2010/08/25)収載)

 米国では、食品由来病因物質により年間7,600万人の患者が発生していると推定される。アウトブレイクのサーベイランスは、食品由来疾患の原因、関連した食品の種類、および食品由来感染の発生場所を把握する手がかりとなり、その情報は食品由来疾患を予防・管理する食品安全対策に活用可能である。米国疾病予防管理センター(US CDC)は、全米の各州および海外保有地から提出される食品由来疾患アウトブレイクに関するデータを収集しており、本報は2007年に発生したアウトブレイクの疫学データをまとめたものである。

 CDCでは疾患関連食品を魚(finfish)、甲殻類(crustaceans)、軟体動物(mollusks)、乳製品、卵、牛肉、狩猟動物肉、豚肉、家禽肉、穀類・豆類、油・糖類、果実・ナッツ類、キノコ類、葉物野菜、根菜、発芽野菜、つる・茎野菜の17品目に分類している。原因食品がこれら17品目のうち1品目のみを原材料として含むアウトブレイクは、当該品目を原因食品とするアウトブレイクに分類される。一方、原因食品が上記のうち2品目以上を原材料として含むアウトブレイク、原因食品が17品目のどれにも分類できないアウトブレイク(コーヒー、アルコールなど)、もしくは原因食品の品目分類に必要な情報が不十分であるアウトブレイクについては、上記17品目のどれかにあてはめることはない。

 2007年には、1,097件の食品由来疾患アウトブレイクが報告され、それらの患者は21,244人、死亡者は18人であった。検査機関で単一の病因物質が確認された食品由来疾患アウトブレイクは497件で、病因物質として最も多かったのはノロウイルス、次いでサルモネラであった。死亡者18人のうち、11人は細菌(サルモネラ5人、リステリア(Listeria monocytogenes)3人、大腸菌O157:H7 2人、ボツリヌス菌1人)、2人はウイルス(ノロウイルス)、1人は化学物質(キノコ毒)によるものであった。残り4人は病因物質が不明のアウトブレイクにおける死亡者であった。単一の品目のみを含む原因食品により発生したアウトブレイクは235件で、最も多かった品目は家禽肉(17%)、牛肉(16%)および葉物野菜(14%)であった。

 米国48州、プエルトリコおよびワシントンD.C.の公衆衛生当局から、計1,097件の食品由来疾患アウトブレイクが報告され、追加の2州(モンタナ、ネバダ)を含む複数の州で発生したアウトブレイクが間接的に報告された。2007年にCDCに報告された食品由来疾患アウトブレイクの件数(1,097件)は、2002〜2006年の平均年間報告件数(1,193件)より8%少なく、関連患者数(21,244人)は同平均年間患者数(25,079人)に比べ15%少なかった。州または海外保有地ごとの2007年のアウトブレイク報告件数は0から149件までさまざまであった(人口10万人当たりの報告件数の中央値:0.30 件、範囲:0.03〜1.90件)。単一の病因物質が確定または推定されたアウトブレイクは698件(64%)で(確定497件、推定201件)、患者数は15,477人(73%)であった(表1)。病因物質が不明のアウトブレイク363件(患者5,122人)のうち、257件(71%)(患者3,904人、76%)については、原因食品も不明であった。患者数が少ないアウトブレイクについては、病因物質が不明である傾向が強かった。病因物質が確定も推定もできなかったアウトブレイクの割合は、患者2人のアウトブレイク146件では51%、患者が3〜7人のアウトブレイク346件では40%、患者が8〜9人の89件では30%で、患者が10人以上の519件では24%であった。病因物質または原因食品が特定されなかった理由として最も多く報告されたのは、1)公衆衛生当局への疾患報告の遅延、2)患者の喫食品目が多岐にわたり感染源として単一食品の特定が困難、3)検体が得られない、もしくは検体が対象病原体検査で陰性であった等の理由により、ヒトまたは食品についての検体検査の結果が利用不可能であった。

 単一の病因物質が確定されたアウトブレイク497件(患者12,767人)のうち、病因物質が細菌であったのは259件(52%)(患者6,441人、50%)、ウイルスは199件(40%)(患者6,120人、48%)、化学物質は34件(7%)(患者141人、1%)、寄生虫は5件(1%)(患者65人、1%)であった。ノロウイルスが病因物質として最も多く、単一の病因物質が確定されたアウトブレイクの39%(193件)、またウイルスによるアウトブレイクの97%を占めていた。次いで多かったのはサルモネラで27%(136件)を占め、細菌によるアウトブレイクの53%を占めていた。特定されたサルモネラの血清型としてはEnteritidisが最多で、28件(患者555人)を占めた。志賀毒素産生性大腸菌(STEC)は40件のアウトブレイクの病因物質であり(細菌によるアウトブレイクの15%)、そのうち39件が血清型O157によるものであった。

表1. 病因物質ごとの食品由来疾患アウトブレイク件数(割合)およびアウトブレイク関連患者数(割合)(米国、2007年の報告数および2002〜2006年の平均年間報告数)

 複数州にわたる食品由来疾患アウトブレイク(単一または複数の病因物質への暴露が複数の州において発生するアウトブレイク)18件のうち、10件がサルモネラ、6件が大腸菌O157:H7、1件がボツリヌス菌、および1件がノロウイルスによるものであった。複数州で発生したサルモネラアウトブレイクに関連した食品には、冷凍ポットパイ(患者401人、死亡者3人)、野菜スナック(患者87人)、卵(患者81人)、ほうれん草/レタス(患者76人)、ビーフステーキトマト(患者65人)、生のマグロ(患者44人)、牛ひき肉(患者43人)、チーズ(患者20人)、アルファルファ(患者15人)、生鮮バジル(患者11人)などがあった。大腸菌O157:H7による複数州にまたがるアウトブレイク6件のうち、5件(患者117人)の原因食品は牛ひき肉で、1件(27人)は冷凍ペパロニピザによるものであった。ボツリヌス菌(毒素)によるアウトブレイク(患者8人)の原因食品は市販のホットドッグ用チリソースの缶詰であった。ノロウイルスによる複数州のアウトブレイク1件は生のカキと関連していた(患者40人)。

 470件(43%)のアウトブレイク(患者9,818人)で原因食品が特定され、このうち235件(50%)(患者4,119人、42%)では、上述の17品目中の1品目のみを原材料として含有する単一の原因食品に関連していた(表2)。アウトブレイクに最も多く関連していた品目は、魚(41件)、家禽肉(40件)、および牛肉(33件)で、患者数が最も多かった品目は、家禽肉(691人)、牛肉(667人)、および葉物野菜(590人)であった。患者が最も多かった病因物質と品目の組み合わせは、ノロウイルスと葉物野菜(315人)、大腸菌O157:H7と牛肉(298人)、およびウェルシュ菌と家禽肉(281人)であった。

 2007年に報告された最大規模のアウトブレイク3件のうち、2件はサルモネラが病因物質であった。それぞれの原因食品はヒヨコ豆のペースト(hummus)(患者802人)および冷凍ポットパイ(患者401人、死亡者3人)であった。2007年に2番目に規模が大きかったアウトブレイクはノロウイルスが原因でホテルの会議場で発生しており(患者526人)、共通して喫食された数種の食品が原因食品と推定された。単一の品目に帰属されたアウトブレイクで1件あたりの患者数が多かったのは、鶏肉料理によるウェルシュ菌アウトブレイク(患者132人)、葉物野菜サラダによるノロウイルスアウトブレイク(128人)、チリビーンズによるウェルシュ菌アウトブレイク(125人)、および牛肉による大腸菌O157:H7アウトブレイク(124人)であった。

表2. 病因物質ごと、および原因食品への帰属の状況ごとの食品由来疾患アウトブレイク件数およびアウトブレイク関連患者数(米国、2007年)


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部