http://wwwnc.cdc.gov/eid/article/15/7/pdfs/09-0153.pdf(PDF)
(食品安全情報2009年15号(2009/07/15)収載)
2007〜2008年に日本の幼小児で発生したサポウイルス(SaV) による胃腸炎の調査を行い、SaV株の多様性を分析した。SaVは検便477検体のうち19検体(4%)で検出され、15株(79%)は遺伝子群間(intergenogroup)組換え(GII/GIV)のSaVであった。
検便477検体は、2007年7月〜2008年6月にかけて、日本の5地域(東京、札幌、佐賀、大阪、舞鶴)の小児科医院を受診した急性胃腸炎の外来小児患者から採集した。検体数の地域別内訳は、東京が14、札幌が30、佐賀が77、大阪が91、舞鶴が265であった。下痢の定義は、1日3回以上の無形便(軟便および水様性便)の排泄とした。急性胃腸炎は、下痢症状に加え嘔吐、発熱、腹痛などのその他の症状が認められる場合と定義した。調査対象の小児の年齢は1ヶ月〜14歳(中央値25ヶ月)であった。
下痢検体から分離されたウイルスとしては、A群ロタウイルス(20.5%)が最も多く、続いてノロウイルス(19.3%)、アデノウイルス(4.4%)、SaV(3.9%)、C群ロタウイルス(0.8%)そしてアストロウイルス(0.2%)の順であった。また検体の1.8%にウイルスの混合感染が認められた。
SaVは19検体(4%)で検出された。SaV患者が最も多かったのは1歳児グループで(9人、47%)、患者の大部分(13人、68%)は3歳未満であった。SaV患者数は12月から2月にかけてわずかに増加した(12人)。SaV 小児患者で多く認められた症状は、下痢(19人、100%)、38℃以上の発熱(5人、26%)および1日3回以上の嘔吐(3人、15%)であった。
19株のSaVのゲノム部分塩基配列を決定し、最近提唱されたキャプシド遺伝子領域の配列にもとづくSaV分類法によりグループ分けした。その結果、大多数(15株、79%)が遺伝子群(G)IVに属し、ついでGI/4(3株、16%)およびGI/1(1株、5%)であった。GI/4の3株は、相互のヌクレオチド配列同一性が98〜100%であり、GI/4に属すことが知られているKarachi/872/91/PK株およびOsaka/5836/JP株と同じグループに分類された。GI/1の1株はManchester株とヌクレオチド配列同一性が97%であり、これにより同群に分類した。
GIVに分類された15株は、検出された場所が互いに地理的に遠く離れているにもかかわらず、それらのヌクレオチド配列にほとんど相異が認められなかった(98〜100%の同一性)。従って、15株は同一の株(ここでは8208/Maizuru/08/JP株とする)と考えられた。8208/Maizuru/08/JP株のヌクレオチド配列は、Ehime1107株およびSW278株と97%の同一性を、またYak2株と96%の同一性をそれぞれ示した。これら3株は、GII由来のポリメラーゼ領域とGIV由来のキャプシド領域を持つ遺伝子群間組み換えSaVとして知られている。
本調査で検出されたGIV株は遺伝子群間組換えウイルスであると考えられる。この株は相互に遠隔の4地域で検出されており(舞鶴10例、札幌2例、佐賀2例、大阪1例)、日本全国に広く分布していることが示された。