(食品安全情報2008年13号(2008/06/18)収載)
2007年の報告義務疾患の概要
Summary of notifiable diseases surveillance for 2007
ニュージーランドでは2007年に、報告義務疾患の国家データベース(National Notifiable Disease database)であるEpiSurvを通じ、19,383人の報告義務疾患の届け出があった。この報告数は、過去7年間のデータと比較して最も少ない数字となった(2006年:23,219人、2005:22,553、2004:22,340、2003:22,759、2002:21,586、2001:20,357、2000:20,003)。
2007年も引き続き、全報告疾患のうち胃腸疾患が圧倒的多数を占めていた。特に、カンピロバクター症は12,776人の患者報告があり、全疾患報告数の65.9%であった。2006年と比較して、カンピロバクター症および胃腸炎の発生率には、統計学的に有意な減少が見られた(10万人当たりそれぞれ379.3人から302.2人および22.4人から14.7人)。一方、クリプトスポリジウム症およびジアルジア症では、統計学的に有意な増加が認められた(10万人当たりそれぞれ17.6人から21.9人および29.0人から33.1人)。
2007年に報告されたアウトブレイクは492件であり、患者数は7,988人であった。2006年の報告数(アウトブレイク495件、患者数6,302人)と比較すると、アウトブレイクの発生数自体はわずかに減少したが患者数は増加した。最も多く見られた原因病原体は、ノロウイルス、続いてクリプトスポリジウム属原虫で、報告されたアウトブレイク数/患者数はそれぞれ206件/5,902人、29件/102人であった。アウトブレイクの発生場所で最も多かったのは老人ホーム(130件/3,695人)で、続いて家庭(96件/541人)であった。
報告義務疾患サーベイランス
以下に、胃腸感染症の1)2008年1月〜3月四半期の疾患報告数および2)2007年4月〜2008年3月の12ヶ月間の累積報告数/発生率に関するデータを紹介する。比較のため、前年度同期の報告数・発生率を( )内に示した。データは、ニュージーランド公衆衛生局が運営するEpiSurvに2008年4月9日までに報告された情報にもとづくものであり、更新される可能性があるため、暫定的なものである。
○カンピロバクター症
1)2008年1月〜3月四半期の報告数:1,762人(2007年度同期:4,644人)
2)2007年4月〜2008年3月の報告数/10万人当りの患者数:9,896人/234.0人(2006年4月〜2007年3月:16,159人/386.2人)
・コメント:前四半期(3,056人)および前年度同四半期(4,644人)と比較し統計学的に有意な減少が認められた。
○胃腸炎
1)176人(2007年度同期:172人)
2)625人/14.8人(2006年4月〜2007年3月:784人/18.7人)
・コメント:統計学的に有意に減少。本報告書における“胃腸炎”は共通の感染源の疑いがある疾患、またはハイリスクの職業に従事する者を除いて報告義務がある疾患ではなく、“胃腸炎”には原因病原体が不明である一般市民からの直接報告も含めた公衆衛生部を通じて届く報告義務のない胃腸疾患や症例報告なども包んでいる点に注意が必要である。
○リステリア症
1)9人(2007年度同期:4人)
2)31人/0.7人(2006年4月〜2007年3月:16人/0.4人)
・コメント:1歳未満の患者の報告はなかった。
○サルモネラ症
1)495人(2007年度同期:374人)
2)1,395人/33.0人(2006年4月〜2007年3月:1,259人/30.1人)
・コメント:前の四半期(349人)および前年度同四半期(374人)と比較し統計学的に有意な増加が認められた。
○赤痢
1)25人(2007年度同期:26人)
2)125人/3.0人(2006年4月〜2007年3月:87人/2.1人)
・統計学的に有意な増加が見られた。
○腸チフス
1)8人(2007年度同期:23人)
2)33人/0.8人(2006年4月〜2007年3月:57人/1.4人)
・コメント:前年度同四半期(23人)と比較し統計学的に有意な減少が認められた。
○ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC:verotoxin-producing Escherichia coli)感染
1)51人(2007年度同期:31人)
2)120人/2.8人(2006年4月〜2007年3月:83人/2.0人)
・コメント:前四半期(24人)および前年度同四半期(31人)と比較し統計学的に有意な増加が認められた。