Eurosurveillanceのノロウイルス関連情報
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2007年9月にスペインのバルセロナの病院スタッフで発生したノロウイルス胃腸炎のアウトブレイク
Outbreak of norovirus gastroenteritis among staff at a hospital in Barcelona, Spain, September 2007
Eurosurveillance, Volume 12, Issue 47
22 November 2007
http://www.eurosurveillance.org/ew/2007/071122.asp#5

(食品安全情報2007年25号(2007/12/05)収載)

 2007年9月14日、スペインのバルセロナの病院に勤務する医療職員(HCW:health care workers)の間で、急性胃腸炎のアウトブレイクが発生した。

 合計38人の感染が確認され、そのうち31人に対して聞き取り調査を実施した。残りの7人は、調査の初期段階で連絡が取れなかったか、もしくは質問票への回答を拒否した。対照群として、同じ診療科に所属し、かつ定期的に病院の食堂で食事を摂っているマッチさせていない31人の別のスタッフに対し聞き取り調査を行った。患者および対照群の年齢幅は、それぞれ29〜59歳および24〜63歳であった。

 報告された症状は腹痛(27人、87%)、悪心(25人、81%)、水様性下痢(24人、77%)、嘔吐(22人、71%)、頭痛(11人、35%)および微熱(4人、13%)であった。ほとんどの患者の症状は軽度であり、医療機関の受診者は4人のみ、入院患者はいなかった。症状持続時間は4〜72時間であった。

 アウトブレイク患者の多く(23人)は9月13〜14日に発症しており、9月16日以降に発症した者はいなかった(流行曲線参照)。初発患者は9月8日に発症していた(流行曲線には示さず)。

図:バルセロナの病院におけるノロウイルスに関連した胃腸炎アウトブレイク患者の流行曲線、スペイン、2007年9月(n=29)

 カクテルソース付ライスサラダを喫食したHCWは、喫食しなかったHCWと比較して発症率が高かった(オッズ比OR=4.11、95%CI[1.14〜14.72]、p=0.03)。水由来の感染の可能性は除外された(OR=0.675、95%CI[0.237〜1.924])。統計解析により、9月12日(カクテルソース付ライスサラダが提供された日)がアウトブレイク発生日である可能性が最も高いことが示された(9月12日のOR=3.37 (p=0.07)対9月10日のOR=0.56 (p=0.32))。

 検査が可能であった糞便検体4検体のうち、2検体からノロウイルスが検出された。これら4検体のうち1検体は病院の食堂の従業員から採集したものであったが、検査結果は陰性であった。全食品の細菌検査の結果は陰性であったが、バルセロナでは食品に対するノロウイルスの検査は通常行われていないため、この事例でもノロウイルスの分析は行われなかった。

 疫学調査の結果および患者から採集した糞便2検体からノロウイルスが特定されたことによって、アウトブレイクは食品由来であるという仮説が確認され、カクテルソース付ライスサラダのノロウイルス汚染がアウトブレイクの原因であると考えられた。


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部