(食品安全情報2007年22号(2007/10/24)収載)
ロベルトコッホ研究所(RKI:Robert Koch Institute)は2001年、ドイツ国内の感染症アウトブレイクを調査する新しい電子サーベイランスシステム(SurvNet)を施行した。
2001年1月〜2005年12月にかけて、報告義務のある病原菌に関連するアウトブレイク30,578件がRKIに報告された。この間にRKIに報告された1,340,487人の患者のうち、253,720人(19%)がアウトブレイクの患者として報告され、残りは散発性の感染として報告された患者であった。報告されたアウトブレイクのうち、90%は腸管病原菌(Salmonella、ノロウイルス、ロタウイルス、A型肝炎、病原性大腸菌Escherichia coli、Campylobacter)によるもので、残りの10%(3,201件)はインフルエンザウイルス(713件)、結核菌(637件)、麻疹(501件)およびその他(1,350件うち47件は報告義務のある病原菌)によるものであった。
アウトブレイクの患者数の規模は2〜527人までの範囲であった。アウトブレイクの規模の拡大(つまり患者数の増加)に伴いアウトブレイクの継続期間が長期化していた。例えばサルモネラの場合、患者が5人までのアウトブレイクでは継続期間の中央値は2日であったが、50-99人では16日、100人以上の場合には22.5日であり、このような傾向はすべての病原菌で認められた。最も長い継続期間の中央値はA型肝炎(22日間)と結核(73日間)によるアウトブレイクで観察された。
2004および2005年に食品由来とされた2,554のアウトブレイクのうち、1,637件でその根拠となった情報が明らかになった。204件(12%)では統計学的に有意な関連性が認められたか、または食品中から原因菌が検出されたことにより食品由来であると考えられていた。
9,946件(33%)のアウトブレイクについて感染場所が報告された。全10,008施設のうち、一般家庭(5,262件、53%)、養護施設(1,218件、12%)、 病院(1,248件、12%)、幼稚園(783件、8%)の順で発生頻度が高かった。
SurvNetは地方衛生局の仕事量を最小限にし、原因病原菌が特定されていない段階でアウトブレイクを捕らえることができ、既知および新興の病原体によるアウトブレイクをカバーでき、さらにアウトブレイクに関する公衆衛生上重要な情報を提供する非常に有益なツールであるとしている。