(食品安全情報2007年16号(2007/08/01)収載)
ヒトのノロウイルスは食品由来疾患の大きな原因である。動物に特異的なノロウイルスも存在するが、ヒトの疾患への関与は不明である。この研究ではウシ、ブタの糞便検体および市販食肉を検査し、GIII(ウシ), GII.18(ブタ)およびGII.4(ヒト)のノロウイルスの配列を決定したところ、ウシ、ブタおよび市販食肉からGII.4様株を初めて検出した。
ウシおよびブタの糞便から検出されたGII.4配列はすべて、家畜の囲い内で採集した直後の糞便検体から検出されたものであり、ヒトの排泄物由来である可能性は考えられなかった。様々な農場から様々な日に糞尿を採集し、検査を行った結果、ヒトのノロウイルスが検出された。
実験により子ブタがGII.4に感染することは過去に示されていたが、ブタで感染が自然発生する可能性があることが今回初めて明らかにされた。
ウシの糞便検体からも今回、初めてGII.4のゲノム配列の一部を決定した。
市販の食肉検体からも今回GII.4様RNAが検出された。この所見は、ノロウイルスが動物経路でヒトに伝播する可能性があるとした以前の指摘を裏付けている。
また、ブタ/ヒトまたはウシ/ヒトのノロウイルス間で遺伝子組換えが起こり、親和性や病原性が変化したノロウイルスが出現する可能性も考えられた。遺伝子組換えノロウイルスがブタまたはウシからヒトに伝播する影響を低減させるため、既存および新しいノロウイルス株のモニタリングが重要であるとしている。