ドイツとハンガリーのノロウイルス感染アウトブレイクの大幅な増加が報告されたため(それぞれ2006年11月24日と12月4日に発生)、Foodborne Viruses in Europe network (FBVE, http://www.eufoodborneviruses.co.uk/DIVINEVENT/DIVIndex.asp)が参加国にノロウイルス感染に関する情報提供を要請した。FBVEには13カ国が参加しており、回答が得られた11カ国のうち9カ国で2006年10月と11月の患者が2004年と2005年の同時期より増加していたが、フランスとスペインでは増加していなかった。また2006年夏季にハンガリー、オランダ、デンマーク、アイルランド、フィンランド及びノルウェーから患者の増加が報告された。
2006年10月と11月のアウトブレイク108件の原因であったノロウイルスの遺伝子型は87件(81%)が近年優勢であるGII.4であり、残りはその他複数の型であった。GII.4の87件のうち51件(47%)が2006aの新しい変異型、24件(22%)が2006bの変異型であり、12件(11%)は変異型ではなかった。
下表は2004/2005年、2005/2006年のシーズンにFBVEのデータベースに報告された全アウトブレイクの分離株と、現在のシーズンにこれまで報告された分離株を示したものである。GII.4 2006の新しい変異型は2005/2006年に初めて出現し、2006年夏季に優勢となった。2006aの変異型は2005年のイングランドの患者から、2006bの変異型は2005年12月のスペインのアウトブレイク後に初めて報告された。2006年春、この変異型が蔓延し、ヨーロッパのクルーズ船上でのアウトブレイクの少なくとも45件の原因となった。2006aと2006bという変異型の出現とクルーズ船上でのアウトブレイクが増加したことは、感染増加の前触れと考えられる。この予測は、GII.4の新しい変異型の出現と世界中でのアウトブレイク増加が同時に発生した1996年、2002年及び2004年の事例に基づいたものである。
報告によると、ノロウイルス流行の季節はほとんどの地域で既に始まっている。2006/2007年は、感染が急増し、GII.4 2006の新しい変異型が優勢なものになる可能性が高い。このため、病院や看護施設はアウトブレイクが疑われる場合の報告、情報提供、アウトブレイク対策の協議と実施、予防策の強化が重要である。
FBVEにはウェブベースのデータベースがあり、13カ国からアウトブレイク、疫学データ及び検査データが報告される。アウトブレイクが始まってからFBVEのデータベースに報告されるまでには、これまで長時間を要している。たとえば2006年7月から9月までの3カ月に報告されたアウトブレイクでは平均111日間で、範囲は23日(スウェーデン)から436日(イタリア)であった。また、現在のフォームでは、ドイツとハンガリーからの報告とヨーロッパ他国の状況との比較にEBVEのデータベースを用いることができない。さらに、ノロウイルスの株のタイピングには時間を要するため、蔓延している時点で得られる情報は限られ、完全な比較ができるのはこの冬の終わり頃である。
Table. Emailによるサーベイによるヨーロッパにおけるノロウイルス患者及びアウトブレイクの報告(左側)及びFBVE database への報告(右)。
国名 | email ネットワークによるデータ | FBVE データベース | |||||||||
NoV の活動は10-11月(または第40-48週)に活発になったか? | Emailでデータをリクエストした後に10-11月に報告されたアウトブレイク数/ 患者数 | 情報源 | 10-11月のFBVE データベースのアウトブレイク数 | 遺伝情報解析データベースの最も直近の遺伝子情報 | 10-11月に検出された遺伝子型/変異型 | ||||||
2006 | 2005 | 2004 | 全国的なラボのデータベース | 全国的なサーベイランスのデータベース | 2006 | 2005 | 2004 | ||||
ドイツ | Yes | 604 アウトブレイク | 184 アウトブレイク | 514 アウトブレイク | No | Yes | 134 | 139 | 0 | 2006年 11月 | 4 G II.4 うち1つはvariant 2006 b 及び 3 variant 2006a, 及び 4つの他の遺伝子型 |
デンマーク | Yes | 249 ラボの検体数 | 38 ラボの検体数 | 222 ラボの検体数 | Yes | No | 0 | 2 | 2 | 2006年9月 | 2 II.4, ともに variant 2006a11 |
スペイン2 | No | 2 アウトブレイク | 6 アウトブレイク | 12 アウトブレイク | 1 | 3 | 4 | 2006年10月 | 1 II.4, variant 2006a | ||
フィンランド | Yes | 患者数~ 120 | 者患者数~ 10 | 者患者数~ 10 | Yes | No | 0 | 2 | 0 | 2006年9月 | |
フランス | No | 3 アウトブレイク | 1 アウトブレイク | 2 アウトブレイク | Yes | No | 7 | 1 | 2 | 2006年10月 | 2 II.4, variant 2006a , 1は他の遺伝子型 |
イギリスとウェールズ3 | Yes | 768 アウトブレイク 及びおよそ 756 ラボの検体数 | 83 アウトブレイク及びおよそ281 ラボの検体数 | 374 アウトブレイク 及び682 ラボの検体数 | Yes | Yes | 11 | 54 | 69 | 2006年5月 | 43 G II.4 うち20は 2006a, 11 2006b 及び 12 non a or b 15 non G II.41(G II.42より12/15に訂正) 15 non G II.41* |
ハンガリー | Yes | 81 アウトブレイク | 17 アウトブレイク | 24 アウトブレイク | Yes | 21 | 3 | 14 | 2006年11月 | 7 G II.4 うち5つは variant 2006b 及び 2 2006a | |
アイルランド | Yes | 7 アウトブレイク | 0 アウトブレイク | 22 アウトブレイク | No | Yes | 11 | 5 | 40 | 2006年10月 | 1 G II.4 variant 2006a, 1他の遺伝子型 |
イタリア** | No | 1 | 0 | 2 | Yes | No | 1 | 0 | 2 | 2006年8月 | |
オランダ | Yes | 36 アウトブレイク | 5 アウトブレイク | 68 アウトブレイク | Yes | 36 | 3 | 54 | 2006年11月 | 26 G II.4 、うち19は 2006a 及び 7 2006b | |
ノルウェー | Yes | 患者数~160 | 患者数~65 | 患者数~35 | Yes | No | 1 | 7 | 0 | none | |
スウェーデン | Yes | 患者数~400 | 患者数~50 | 患者数~350 | Yes | No | 1 | 2 | 0 | 2006年10月 | 1 G II.4, variant 2006a |
スロヴェニア | Yes | 7 アウトブレイク | 6 アウトブレイク | 5 アウトブレイク | Yes | No | 0 | 5 | 1 | 2006年9月 |
http://www.eurosurveillance.org/ew/2006/061214.asp#1