Eurosurveillanceからのノロウイルス関連情報
http://www.eurosurveillance.org


  • クルーズ船上でのノロウイルス感染アウトブレイクの予防と対策に関する欧州の協調的活動
    Coordinated European actions to prevent and control norovirus outbreaks on cruise ships
    Eurosurveillance, Volume 11 / Issue 10, July 2006
    (食品安全情報2006年22号(2006/10/25)収載)

     2006年1月1日から7月5日までに、ノロウイルスが原因であると確認、もしくは疑われる計42件の胃腸炎アウトブレイクが、ヨーロッパの海域を渡航中のクルーズ船13隻で発生し、乗客・乗員合わせて約1500人の胃腸炎患者が報告されたが、共通感染源は特定されていない。2つの新種ノロウイルスが患者及び環境サンプルの微生物学的検査により確認された。欧州疾病予防管理センター(ECDC)の専門家パネルは前年までの経験に基づき、新種のノロウイルス分離株の出現により欧州各国でのアウトブレイク報告が増加している可能性が高いと考えた。アウトブレイクの調査は、EUが資金提供したサーベイランスネットワークである DIVINE-NET(http://www.eufoodborneviruses.co.uk/DIVINEVENT/DIVIndex.asp)によって調整された各国の当局により、ECDCとの協力で実施された。
     国境を越えて移動するクルーズ船、列車、航空機など比較的閉鎖的な環境で発生する国際的規模のアウトブレイクの調査は、その責任の所在が現時点では曖昧であり、最近のこれらのアウトブレイクにより欧州レベルでの連携の必要性が明らかになった。ノロウイルスの疫学的・微生物学的分野の知識を持つECDC専門家パネルのメンバーは、CDC船舶衛生プログラム(VSP:Vessel Sanitation Programme)のメンバーと、次の目的により会合をもった。

    ・欧州で流行中のノロウイルスの疫学をレビューし、今後のクルーズ船上のアウトブレイクを予防・管理するために必要なアクションを評価する。
    ・クルーズ船及びその他の公共の場における予防・管理措置のための現行のガイドラインをレビューする

    ガイダンスと法的枠組みの必要性
     現行のノロウイルス予防・管理戦略に関して次のような取り組みが決定された。

    ・比較できるデータ収集、汚染源の特定、感染の拡散を止めるための適時なアクションをとるためには、船上のアウトブレイクの確認及び調査に関しては共通のアプローチが必要である。またアウトブレイクの定義も合意すべきである。
    ・洗浄殺菌、及び食品安全性に関する実践ガイドラインはノロウイルスその他の病原菌感染の予防・管理に有用であるが、ノロウイルスは特に耐性が強いため、特別な管理対策が必要である。
    ・HACCPのコンセプトに基づいた標準衛生検査手順が必要である。
    ・関連する団体を考慮の上、アウトブレイク調査及び対応に関連する欧州各国及び業界の法的責任者を明確に分類しなければならない。

    活動内容
     予防・管理措置実施のための実用的かつ標準化されたガイドラインは、過去の経験から最善と認定された対策に基づいて作成されるべきである。ノロウイルスのアウトブレイクを封じ込めることは船舶業界の利益と密接に結びついているため、行政と船舶業界の両者の間で密接かつ相互協力が不可欠となる。ECDC専門家パネルと大手船舶会社の医療責任者との準備会議がECDCにより組織される予定である。会議の勧告のフォローアップメンバーは、SHIPSAN、米国CDCのVSP、DIVINE-NET、欧州委員会、及び船舶所有会社である。
    2006年9月12日に行われたECDC専門家パネル会議の報告書全文及び詳細情報は次のサイトから入手可能。
    http://ec.europa.eu/health/ph_projects/2005/action2/action2_2005_full_en.htm#5

    http://www.eurosurveillance.org/ew/2006/061018.asp#2


    国立医薬品食品衛生研究所安全情報部