Eurosurveillanceからのノロウイルス関連情報
http://www.eurosurveillance.org


  • ヨーロッパのクルーズ船における最近のノロウイルス感染アウトブレイク
    Recent norovirus outbreaks on river and seagoing cruise ships in Europe
    Eurosurveillance, volume 11 issue 6, 15 June 2006
    (食品安全情報2006年13号(2006/06/21)収載)

     最近、クルーズ船でのノロウイルス感染アウトブレイクが増えているため、ウイルス性腸内感染症予防のためのヨーロッパのネットワークであるDIVINE-NET(http://www.eufoodborneviruses.co.uk/DIVINEVENT/DIVIndex.asp)が、欧州疾病予防管理センター(ECDC)と協力して調査を開始した。
     2006 年4 月24 日から6 月9 日までの間に、クルーズ船4 隻から各1 件、3 隻から各2件の胃腸疾患アウトブレイクが報告され、そのうち2 隻でノロウイルス感染が確認された。6 月14 日までの調査では共通の要因はみられなかった。15 日、EC はEU 加盟国に警告を発した。
     クルーズ船上でのノロウイルス感染アウトブレイクが多いため、それぞれ船会社には衛生管理上のガイドラインがあり、消毒を行っているが、アウトブレイクが連続して発生する場合が多い。ノロウイルスは感染力が強く、ヒト−ヒト感染、食品、水、環境など様々な経路で拡散するため、船上はウイルスの急速な拡散に好都合な環境である。通常、現地の保健機関と船会社とが協力して調査を行うが、特に船が公海上にある場合には、誰が調査を担当すべきか、また保健機関が秘密情報をどの程度収集できるかが明確ではない。船は各国の複数の町を訪れるため、ある国においてとられた措置が他の国の保健機関に周知徹底されるか不明である。クルーズ船でのノロウイルス感染アウトブレイクは定期的に発生する。しかし、今回のように短期間における7 件の連続発生では各アウトブレイクが関連している可能性も考えられ、クルーズ船におけるアウトブレイク調査には国際的指針が必要であることが強調されている。6 月13 日までにDIVINE-NET が得た情報は次の通りである。

    船A(オランダ)
    航路:ジュトフェン(オランダ)−アントワープ(ベルギー)
    患者:4 月24 日に出港した日本の旅行会社のチャーター船で、4 月26 日に15 人が報告され、初発患者は4 月24 日であった。
    検体:ドアノブ、トイレ、受付カウンターからのスワブ検体がノロウイルス陽性で、GGII4であった。患者1 人からの検便検体はノロウイルス陰性であった。
    対策:徹底した洗浄などが行われ、新たな患者は発生していない。

    船B(オランダ)
    航路:キール(ドイツ)、ナイメーヘン(オランダ)、ウィーン(オーストリア)
    患者:5 月22 日にオランダ東部のナイメーヘンでノロウイルス感染患者数人、6 月9 日に新たな患者発生が船から報告された。
    検体:2 度目のアウトブレイク時に検体が採集され、ノロウイルス検査のために送付された。

    船C:ハリッジにて接岸中(イングランド)
    航路:ハリッジ(英国)、ベルゲン、Flam、Gudangan およびRosendal(ノルウェー)、ハリッジ
    患者:5 月29 日、乗客約70 人と乗組員15 人が胃腸疾患を発症した。ベルゲンを出港した時、乗客2 人が発症していた。6 月9 日、2 度目のアウトブレイクとしてさらに患者28 人が報告された。この際にベルゲンに立ち寄っていた。
    検体:最初のアウトブレイク時に、乗客の検便検体にノロウイルス検査が行われた。情報伝達のミスにより、2 度目のアウトブレイクでは検体は採集されなかった。
    食品:どちらの航行時にも含まれていた魚市場(場所未確認)へのツアーにおいて乗客が様々な魚や貝類を喫食しており、そこが感染源である可能性がある。

    船D:ナイメーヘン(オランダ)
    航路:キール(ドイツ)、ナイメーヘン(オランダ)、ウィーン(オーストリア)
    患者:5 月30 日に胃腸疾患患者61 人が報告され、初発患者は5 月20 日、最後の患者は5月30 日、ピークは5 月28 日の15 人であった。船D では、前回の航海時に少数の胃腸疾患患者が発生していた。乗客数人が乗船前に症状を呈していたという船長からの報告があるが、医師により確認されていない。船B とD は、同じ会社が所有しているが、両方に乗船した乗組員はいない。
    検体:患者6 人の検便検体が採集され、2 人がノロウイルス陽性であった。さらに4 人の糞便検体が検査中である。環境のふきとり検体が陽性で、患者便、ふき取り検体及び他のクルーズ船由来の他のウイルスとの比較が行われる予定である。
    食品:船B とD は、キールで同じ業者から食品を調達しており、この業者は他の船にも食料を供給している可能性がある。生鮮食品は現地で購入されたが、貝類や果実などハイリスクの食品が含まれていたか否かは不明である。

    船E:サウサンプトンにて接岸中(イングランド)
    航路:ビゴ(スペイン)、サウサンプトン(英国)
    5 月30 日に疾患が報告された。ビゴからサウサンプトンまでの間にどこかに寄港したか否かは不明である。

    船F:ダンディーにて接岸中(英国)
    航路:タリン(エストニア)、コペンハーゲン、ストックホルム、ヘルシンキ、サンクトペテルスブルク
    患者:5 月29 日にダンディーで最初のアウトブレイク、6 月9 日にハルで2 度目のアウトブレイクが報告された。アウトブレイクの一つでは乗客70 人と乗組員15 人が発症した。ウイルスを保有した乗客が乗船したのか、同じ船会社が所有する船C でのアウトブレイクと関連性があるか否かは不明である。船F はベルゲンには航海していない。

    船G:リースにて接岸中(スコットランド、英国)
    6 月12 日に患者116 人が報告されたが、それ以上の情報は報告されていない。この船は、異なる船会社が所有している。
    http://www.eurosurveillance.org/ew/2006/060615.asp#2


    国立医薬品食品衛生研究所安全情報部