米国の食品由来胃腸疾患患者の大部分はノロウイルスが原因である。本報告は、2005年5月3〜9日に同じ店のサンドイッチによって発生したミシガン州のノロウイルス感染アウトブレイク3件及び全米展開しているサブマリンレストランチェーンが関連したコミュニティでの患者集団についての要約である。調査の結果、ノロウイルスの症状が出てから数時間で職場に復帰した食品取り扱い従事者(糞便からはウイルスを排泄中)が汚染源の可能性があると特定された。
アウトブレイク1
5月3日の学校職員の昼食会で発生した、サンドイッチによる胃腸疾患アウトブレイクが報告された。職員29人のうち23人(80%)が症例定義を満たしていた。このうち、87%が下痢、74%が嘔吐を呈し、検便検体6検体すべてがノロウイルス陽性であった。23人中22人がレタスを喫食していたが、特定の食品と疾患との間に有意な関連性は認められなかった。
アウトブレイク2
5月5日の出版会社職員の昼食会で、アウトブレイク1と同じ店のサンドイッチが供され、サンドイッチを喫食した95人のうち、55人(58%)が胃腸疾患を発症した。94%が下痢、83%が嘔吐を呈した。患者54人のうち53人がレタスを喫食し、レタスと疾患との間に有意な関連性が認められた(OR=11.24; 95%信頼区間[1.30?95.2])。他に有意な関連性が認められたのは、ハラペーニョ(OR=3.45;[1.04?11.40])と玉ねぎ(OR=3.09;[1.27?7.80])であり、52人中15人がハラペーニョを、50人中21人が玉ねぎを喫食していた。検便検体2検体のうち1検体がノロウイルス陽性であった。
アウトブレイク3
5月4日のサービス会社の昼食会で、同じ店のサンドイッチを喫食後、18人のうち9人(50%)が胃腸疾患を発症した。嘔吐と下痢を呈した者はそれぞれ78%であった。特定の食品と疾患との間に有意な関連性は認められなかった。検便検体2検体からノロウイルスが検出された。
コミュニティの患者
5月4〜9日に胃腸疾患を発症した者が28人おり、このうち25人(90%)が同じ店のサンドイッチを喫食していた。92%が下痢、80%が嘔吐を呈した。特定の食品と疾患との間に関連性は認められなかった。検便検体3検体がノロウイルス陽性であった。
以上の患者は、すべて同じ店のサンドイッチと関連性があり、検便検体21検体の配列解析では100%の相同性が認められた。5月10日に新たな患者報告があり、州保健部は同レストランに自主休業を勧告し、レストランも指導に従った。同レストランの従業員1人が5月2日に嘔吐と下痢を起こし、3日の早朝に嘔吐が治まって仕事に復帰したが、10日に採取された検便検体で陽性結果が出た。この従業員が手を洗うのと同じシンクでレタスが洗われ、この従業員が毎朝レタスを切り、またシンクはレタスの洗浄前後に消毒されていなかった。
今回のアウトブレイクではノロウイルスに関する指導不足が示され、現在、ケント郡の公衆衛生担当者により、レストランのマネージャー及び従事者に対するオンライン研修プログラムが作成されている。2005年のFDAのFood Code(飲食店等に対するモデル食品衛生法)では、嘔吐または下痢症状があったり、ノロウイルス感染が疑われた従業員は、24時間無症状になるまで就業しないことを義務付けるよう勧告が出された。ミシガン州の新しいガイドラインは、ノロウイルス感染が疑われた場合には無症状になって48〜72時間経過するまでは就業しないよう勧告している。食品取扱者にはノロウイルスに関する指導が必要であるとされ、洗浄と消毒に関する推奨事項も含まれている。
http://www.cdc.gov/mmwr/PDF/wk/mm5514.pdf