2005 年3 月23 日、フランス中央部Haute-Loire にある中学校で胃腸疾患のアウトブレイクが起こった。教師30 人、生徒334 人のうち298 人が学校の食堂で昼食をとり、調査を行なった教師と生徒270 人のうち、75 人(28%)が患者と定義された。75 人のうち、69 人(92%)が腹痛、59 人(79%)が嘔吐、53 人(71%)が悪心、38 人(51%)が下痢および15 人(20%)が発熱の症状を呈した。入院した者はおらず、全員が回復した。症状が続いていた期間は1 日未満から2 日間、潜伏期間は12 時間から56 時間で、平均36 時間、中央値37 時間であった。
3 月21 日の昼食時に出されたフロマージュ・ブラン(チーズの1 種)ラズベリー添えに有意な関連性が認められ(相対リスク(PR) 3.3; 95% 信頼区間(CI) 1.5-7.5)、患者74 人(93%)のうち69 人がこれを摂食していた。フロマージュ・ブランのみでは関連性がみられなかった(PR 1.8; 95% CI 0.4-9.0)。生徒の6 検便検体のうち5 検体がノロウイルス遺伝子グループI 遺伝子型5 (フランスでこれまでに確認されたことのない遺伝子型Musgrove virus)陽性であった。食品サンプルの微生物培養は、E. coli, Staphylococcus aureus, Clostridium8属菌, Bacillus cereus, Salmonella 属菌すべて陰性であった。未開封のラズベリーは、1 度目の分析ではノロウイルス陰性で、さらに分析が行なわれている。
4月25 日、ヨーロッパ早期警告システム(European Early Warning and Response System, EWRS)を通じて警告が発せられた。最近のフランスでは、ラズベリーによるアウトブレイクはなかった。ウイルスは、冷凍のベリーの中で長期間生存することができ、ベリーによるA 型肝炎が報告されている。ラズベリーによるノロウイルス感染のアウトブレイクは、1997 年のカナダ、2002 年と2003 年のフィンランドで記録されている。
調査では、ラズベリーを感染源とするノロウイルス感染である可能性が高いことが示されている。アウトブレイク前に食堂のスタッフの疾患がみられないこと、他の食品と疾患との間に関連性がないことから、ラズベリーは調理前に汚染されたと考えられる。しかし、調理中に汚染されたという仮説も否定できない。ラズベリーは輸入品であり、冷凍や包装前に汚染されていたとすれば、他国でもアウトブレイクが起こる可能性がある。ラズベリーのノロウイルス汚染が確認されるか、他からもアウトブレイクが報告された場合、食品と飼料に関する早期警告システム(RASFF, http://europa.eu.int/comm/food/food/rapidalert/index_en.htm)を通じて供給業者や原産国が明らかにされる。ラズベリーによる他のアウトブレイクに関する情報はフランスのInstitut de Veille Sanitaire のEmmanuelle Espie (e.espie@invs.sante.fr)に報告されている。
http://www.eurosurveillance.org/ew/2005/050428.asp#1