米国の食品由来疾患のリスクアナリシスにおいて、食品由来疾患の発生と、食品由来病原体への曝露との関連性に関する情報が重要である。本研究では、食品安全分野の専門家42人から意見を聴取し、FoodNetの対象である病原体9種類 、Toxoplasma gondii及びノロウイルスの合計11種類の病原体による食品由来疾患と、11カテゴリーの食品 の喫食との関連性を解析した。各病原体について、各カテゴリーの食品による食品由来疾患が起こりうるか、その割合はどのくらいであるかの最良推定値と、各推定値の90%の信頼区間を算出した。Paul Mead氏らの研究 に基づき、食品由来病原体毎に、食品が原因となる比率、患者数、入院患者数及び死亡者数を推定した。患者数、入院患者数及び死亡者数の多かった食品/病原体の組み合わせ上位5位は、順に次の通りであった。
・患者数 − 生鮮野菜/ノロウイルス、水産食品/ノロウイルス、鶏肉/Campylobacter、ランチョンミートなど食肉製品/ノロウイルス、パンや菓子/ノロウイルス
・入院患者数 − 鶏肉/Campylobacter、生鮮野菜/ノロウイルス、水産食品/ノロウイルス、鶏肉/非チフス性Salmonella、卵/非チフス性Salmonella
・死亡者数 − ランチョンミートなど食肉製品/Listeria monocytogenes、鶏肉/非チフス性Salmonella、豚肉/Toxoplasma gondii、卵/非チフス性Salmonella、乳製品/ Listeria monocytogenes
最も注目される知見は、一部の病原体と食品が原因の大部分を占めていたことであった。上位3位の食品が患者の60% 、入院患者の59%5、死亡者の46% を占めていた。生鮮野菜と鶏肉は、全疾患で原因食品の3位以内に入っていた。
食品と病原体の組み合わせは、少数の組み合わせが食品由来疾患の大半を占めていた。食品/病原体の組み合わせ121組(11病原体x11カテゴリー)のうち15組が患者の90%、25組が入院患者の90%、21組が死亡者の90%を占めた。この組み合わせには、食品と病原体を個別にみた場合には上位に入らない多くの食品と病原体が含まれており、こうしたアプローチの有効性を示していた。
一つの組み合わせが、患者、入院患者、死亡者のいずれでも同じような順位になるとは限らず、たとえば、生鮮野菜/ノロウイルスと水産食品/ノロウイルスは、患者数と入院患者数では上位5位に入ったが、死亡者では10位以内に入らなかった。
また、多くの食品で問題となる病原体もあれば、少数の食品に限られる病原体もある。たとえば、Yersinia enterocoliticaは豚肉、Cyclosporaは生鮮野菜、Vibrioは水産食品による感染が主である。しかし、ノロウイルスは全カテゴリーの食品、Campylobacter、非チフス性Salmonellaは多くのカテゴリーの食品において患者数が多かった。
本研究の結果は、食品/病原体の組み合わせに関する情報が有用であることを示している。上位3位の病原体と食品が、食品由来病原体による患者の69%、入院患者の55%、死亡者の36%を占めており、上位9位の食品/病原体の組み合わせが、患者の83%、入院患者の66%、死亡者の66%を占めていた。このように、新しい対策を決定できるよう、最大の問題点がどこにあるかを明らかにすることが重要であるとしている。
[The Journal of Food Protection のご厚意により、要約翻訳を掲載します。]