欧州食品安全機関(EFSA)からのA型肝炎ウイルス(HAV)感染アウトブレイクに関する食品関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


欧州で複数国にわたり発生しているA型肝炎アウトブレイクの原因食品の追跡調査
Tracing of food items in connection to the multinational hepatitis A virus outbreak in Europe
EFSA Journal 2014;12(9):3821
8 September 2014
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/140908.htm(関連ニュース記事)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/doc/3821.pdf(報告書全文PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/3821.htm

(食品安全情報2014年19号(2014/09/17)収載)

欧州食品安全機関(EFSA)は、欧州の複数国にわたり発生しているA型肝炎アウトブレイクの原因食品の追跡調査に関して欧州諸国の協調と調整の役割を担ってきた。2013年1月以降、欧州12カ国で1,440人以上のA型肝炎患者が報告されており、遺伝子型の決定により331人のアウトブレイク株への感染が確定している(表)。

表:国別の高度疑い患者数および確定患者数(2013〜2014欧州A型肝炎ウイルス感染アウトブレイク、2014年6月30日現在)

 2013年5月、国外旅行歴のあるA型肝炎ウイルス(HAV)遺伝子型IA感染患者がドイツから報告され、イタリアからはHAV患者数の全国的な増加とアウトブレイクの発生が報告された。アウトブレイク株(KF182323)感染の確定患者が、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、アイルランド、イタリア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、スウェーデンおよび英国の計11カ国(計331人)から報告されている。

 イタリア、フランスおよびノルウェーで、冷凍ミックスベリー(14ロット)およびミックスベリーケーキ/ペストリー(2ロット)からHAVが検出されている。アイルランド、オランダおよびスウェーデンでは、食品喫食歴と聞き取り調査の結果の分析により、確定患者が喫食した可能性があるベリー類・ベリー製品が特定された。

 イタリア、アイルランドおよびオランダで計38ロット/ケースの当該製品を対象に追跡調査が開始され、2014年春にはフランス、ノルウェーおよびスウェーデンで計5ロット/ケースの調査が開始された。各国の追跡調査のデータは「食品および飼料に関する早期警告システム(Rapid Alert System for Food and Feed: RASFF)」を介して交換された。最終データセットは食品業者1,974社による計6,227件の取引記録を含んでいた。

 追跡対象のロット/ケースに最も高頻度に含まれていた原材料はブルガリア産のブラックベリーおよびポーランド産のレッドカラントであった。ポーランドは欧州最大のレッドカラント生産国であり、ブルガリアは冷凍ブラックベリーの主要輸出国として知られる。

 全43ロット/ケースに関連した単一の汚染源は特定できなかったが、5カ国のHAV汚染製品ロット/ケースは、ポーランドの冷凍加工業者7社、およびブルガリアの冷凍ベリー納入業者5社と関連付けられることが明らかになった。これにより、HAV汚染はベリー類の冷凍加工または一次生産の段階で発生した可能性があることが示され、冷凍用のベリー類の生産国に適正衛生規範(Good Hygiene Practice)、適正製造規範(Good Manufacturing Practice)および適正農業規範(Good Agricultural Practice)の遵守が推奨される。

 本アウトブレイクに関連した汚染製品がフードチェーンにまだ流通している可能性があるため、公衆衛生を目的とした強化サーベイランス、リスクコミュニケーション、ワクチン接種および詳細な調査研究が推奨される。

(食品安全情報(微生物)No. 19 / 2014 (2014.09.17) FSAI、No. 9 / 2014 (2014.04.30)、No. 23 / 2013 (2013.11.13) EFSA、No. 15 / 2013(2013.07.24)、No. 12 / 2013(2013.06.12) ECDC記事参照)


国立医薬品食品衛生研究所安全情報部