http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4042.htm
(食品安全情報2015年7号(2015/04/01)収載)
欧州食品安全機関(EFSA)は、ヒトのザイール株エボラウイルス(ZEBOV)感染アウトブレイクがこれまでに発生したことがあるアフリカ諸国から輸入された生の食品の喫食によって欧州連合(EU)域内でヒトがエボラウイルスに感染するリスクについて、科学的ならびに技術的な助言を行うよう欧州委員会(EC)から要請された。評価の対象は食品一般であったが、特に植物・果物・野菜およびそれら由来の製品に重点を置く必要があった。違法に輸入された野生動物の肉(bushmeat)についてはすでに評価が行われているため(食品安全情報(微生物)2014年No.23(2014.11.12)EFSA記事参照)、今回の検討の対象には含まれなかった。
1976年〜2015年3月11日に、アフリカ9カ国(コンゴ民主共和国、コンゴ共和国、ガボン、ギニア、リベリア、マリ、ナイジェリア、シエラレオネ、セネガル)からヒトのZEBOV感染アウトブレイクが報告されている。EUにはこれら9カ国から様々な食品が輸入されている。輸入量が最も多い食品カテゴリーは「コーヒー、茶、ココア、スパイスおよびそれらの製品」で、次いで「野菜、果物」、「魚、甲殻類、軟体動物、水生無脊椎動物およびそれらの製品」の順である。
今回の評価では、「トップダウンアプローチ」(すなわちサーベイランスにもとづく方法)と「ボトムアップアプローチ」(ヒトへの相対的な健康リスクを予測するためにフードチェーンに沿って病因物質を追跡する標準的な微生物学的リスク評価の枠組みを用いる方法)の両者が併用された。
トップダウンアプローチにより、これまでに報告されたZEBOV感染アウトブレイクで、患者に関連した食品としてbushmeat以外の食品が特定されたことはないという結論に至った。EU域内でZEBOVが食品を介してヒトに伝播したことを示すエビデンスはない。
ボトムアップアプローチでは、リスクの発生に必要な一連の事象には以下のような多くのハードルが含まれると結論付けられた。すなわち、1)輸出される生の食品が原産地でZEBOVに汚染される、2)EU諸国に到着した輸入食品がその中に増殖能のあるウイルスを含んでいる、3)汚染された食品の取扱いと調理(どちらも喫食直前に台所や厨房で消費者または従業員が行う)および喫食を介してヒトがウイルスに曝露する、4)曝露したヒトがウイルスに感染する、である。患者が発生するためには以上の各段階が必要であり、そのいずれも実際に起きたという記録はない。データや知見が不足していることによる不確実性が非常に高く、これらの輸入食品の喫食によるZEBOVの感染リスクを定量的に評価することや、そもそも食品由来の伝播が起こり得るかどうかを明らかにすることは不可能である。
トップダウンおよびボトムアップの両方のアプローチによる全体的な結論は一致しており、bushmeat以外のEUへの輸入食品を介したZEBOV感染のリスクは依然として理論的な可能性に過ぎず、実際には示されていないとしている。しかし、データ不足のため、今回の評価は不確実性が高いと考えられる。
(EFSAニュース記事)
エボラ出血熱:食品を介した感染のリスク
An update on the risk of transmission of Ebola virus (EBOV) via the food chain
Ebola: risk of transmission through food
18 March 2015
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/150318.htm
(日本語要約)
http://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/microbial/ebola/ebolaefsa2.html