デンマーク国立血清学研究所(SSI)からのカンピロバクター関連情報
https://www.ssi.dk


2018〜2019年のデンマークのカンピロバクター感染症
Campylobacter infections, 2018-2019
12 February 2020
https://en.ssi.dk/surveillance-and-preparedness/surveillance-in-denmark/annual-reports-on-disease-incidence/campylobacter-infections-2018-2019

(食品安全情報2020年20号(2020/09/30)収載)


 デンマークにおける2018〜2019年のカンピロバクター感染症について年次報告が発表された。2018年にはカンピロバクター感染症患者が計4,547人(人口10万人あたり79人)登録され、2017年より7%増加した。2019年は患者が更に増加して計5,389人(人口10万人あたり93人)となり、記録史上で最多となった。2012年以降、患者数は概して増加傾向が続いている(図1)。

図1:2012〜2019年にデンマークで登録されたカンピロバクター感染症患者数


感染症患者の年齢層別、性別および地域別の分布

 2018〜2019年のデンマークにおけるカンピロバクター感染症患者の罹患率において、年齢層別分布には従来の典型的パターンがみられ、20代の若年成人の罹患率が高い(図2)。しかし、これまでに比べ、罹患率は85歳以上の高齢者層で上昇しており(特に男性)、幼児(0〜4歳)では明らかに低下していた。このような傾向は2018年および2019年の両方にみられた。ただし、2019年の15〜24歳および85歳以上の年齢層での罹患率(人口10万人あたりそれぞれ122および176)は、ともに2018年(人口10万人あたりそれぞれ105および127)より高かった。カンピロバクター感染症において一般的にみられるように、2018〜2019年の報告患者でも男性が占める割合がやや高く、2018年が53%、2019年が54%であった。

図2:2018〜2019年のデンマークにおけるカンピロバクター感染症患者の性別・年齢層別の罹患率(縦軸は人口10万人あたりの患者数)


 2018〜2019年の行政区ごとの罹患率は様々であり、デンマーク全域での分布は均等ではなかった(図3)。小規模な行政区であるChristiansø、FanøおよびÆrøを除くと、LemvigおよびOdsherredの罹患率が最低で人口10万人あたりそれぞれ31および37であった。一方、罹患率が最高の行政区はTårnbyおよびBornholmで、人口10万人あたりそれぞれ222および200であった。

図3:2018〜2019年のデンマークにおけるカンピロバクター感染症患者の行政区別の罹患率


国外旅行

 2018年は計3,249人(71%)の患者について旅行に関する情報が得られた。2018年の全登録患者のうち1,514人(33%)が国外感染として登録された。2019年は計3,451人(64%)の患者について旅行に関する情報が得られた。2019年の全登録患者のうち1,928人(36%)が国外感染として登録された。感染した国が報告されなかった患者を除外すると、国外感染の割合は2018年が47%、2019年が56%で、過去に記録された割合を上回っていることが明らかである。しかしながら、2018年以降はデンマーク臨床微生物データベース(MiBa)からデータが直接収集されており、上記の数値は登録方法変更の影響を受けている可能性がある。それ以前のデータは聞き取り調査の結果および患者由来検体の検査結果にもとづいたものであり、これによると全患者の約3分の1が国外感染で、こちらの方がより正確な推定値であると現在も考えられている。

 2019年、最も多くの患者が感染した国はトルコ(192人)で、続いてスペイン(191)、タイ(90)、インドネシア(85)、インド(60)、フランス(50)およびモロッコ(49)の順であった。これらの国々はカンピロバクター感染症の報告が非常に高頻度な国としてこれまでにも挙げられてきたが、旅行先として訪れるデンマーク人が多い国々でもあることに注意すべきである。


疾患アウトブレイク

 2018〜2019年には、大規模なカンピロバクター感染アウトブレイク4件が食品および水由来アウトブレイクデータベース(FUD)に登録された。このうち2件はBornholm島で発生し(1件目は2018年2〜3月、2件目は2019年11月)、症例対照研究により2件目のアウトブレイクでは可能性が高い感染源として乳が特定されたが、確定には至らなかった。3件目は、2018年9月に農場見学の際に供された生乳(未殺菌乳)を喫飲した生徒の間で発生した。カンピロバクター感染症患者由来分離株の遺伝的モニタリングによると、小規模なアウトブレイクが多数発生している可能性が高いことが示されている。4件目として、2019年に、分離株のWGS(全ゲノムシークエンシング)解析の結果から非常に大規模なアウトブレイクが探知された(EPI-NEWS 6/20)。このアウトブレイクで登録された確定患者は88人であったが、実際には同じ遺伝子型のカンピロバクターによる患者が数百人いたと推定された。また、国内モニタリングでもアウトブレイクの拡大範囲が示され、2019年の登録患者は2018年と比較して800人以上増加した。このアウトブレイクは、デンマーク国内産の鶏肉が感染源であった。本年次報告はEPI-NEWS 6/20にも掲載されている。


(関連記事) デンマーク国立血清学研究所(SSI)
1. Campylobacter, climate and climate change
EPI NEWS, No 6 - 2020
12 February 2020
https://en.ssi.dk/news/epi-news/2020/no-6---2020

2. More Campylobacter outbreaks than expected - and more people fall ill when it rains
12 February 2020
https://en.ssi.dk/news/news/2020/more-campylobacter-outbreaks-than-expected



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部