英国食品基準庁(UK FSA)からのカンピロバクター関連情報
https://www.food.gov.uk


英国産市販冷蔵丸鶏から検出されるカンピロバクター(Campylobacter jejuniおよびC. coli)の抗菌剤耐性
Antimicrobial resistance in Campylobacter jejuni and Campylobacter coli from retail chilled chicken in the UK
18 February 2020
https://www.food.gov.uk/sites/default/files/media/document/antimicrobial-resistance-in-campylobacter-jejuni-and-campylobacter-coli-from-retail-chilled-chicken-in-the-uk-year-4-2017-18.pdf(報告書PDF)
https://www.food.gov.uk/print/pdf/node/1571(PDF版)
https://www.food.gov.uk/research/research-projects/antimicrobial-resistance-in-campylobacter-jejuni-and-campylobacter-coli-from-retail-chilled-chicken-in-the-uk-0

(食品安全情報2020年10号(2020/05/13)収載)


背景

 英国食品基準庁(UK FSA)は、英国産の冷蔵生鮮丸鶏の小売レベルでのカンピロバクター汚染について微生物学的調査を実施しており、今回、2015〜2018年の調査結果、および調査の一環として収集されたカンピロバクター分離株のサブセットにおける抗菌剤耐性データに関する報告書を発表した。公衆衛生リスクを評価し、また食品チェーンにおける抗菌剤耐性の低減促進状況をモニターするためのベースラインを提供するため、市販鶏肉およびその他の食品における抗菌剤耐性細菌の汚染率および種類のモニタリングが引き続き必要である。


方法

 2017年8月〜2018年7月にカンピロバクター検査が行われた英国産の生鮮丸鶏検体は計1,769検体であった。検体採取は英国全域で年間を通して均等に行われ、放し飼い飼育、有機飼育および標準的な条件下での飼育の割合を考慮して小売店から検体が採取された。

 市販の鶏肉392検体(計1,114検体のカンピロバクター陽性検体から選択)から分離されたカンピロバクターのサブセット393株について抗菌剤耐性検査が実施された。陽性検体のうち4検体ごとに1検体(またはその次に使用可能な検体)が選択されたが、これら鶏肉検体の選択に際しては、サンプリングの代表として適切な鶏肉製造施設および小売店舗が確保されるように市場シェアのデータから推定して調整された。カンピロバクター株のサブセット393株には、回収可能であったすべての有機飼育鶏肉由来株および大多数の放し飼い飼育鶏肉由来株が含まれている。


結果

 採取された市販鶏肉392検体から328株のCampylobacter jejuniおよび65株のC. coli(計393株)が分離され、様々な抗菌剤への耐性が検査された。その結果、C. jejuni株の52%(171/328株)、およびC. coli株の48%(31/65株)でシプロフロキサシン耐性が認められた。また、C. jejuni株の1%(2株)およびC. coli株の3%(2株)でエリスロマイシン耐性が、C. jejuni株の52% (171/328株)およびC. coli株の60%(39/65株)でテトラサイクリン耐性が認められた。C. jejuni株およびC. coli株においてゲンタマイシン耐性が認められた株はなかったが、C. jejuni株の2%(5/328株)およびC. coli株の9%(6/65株)でストレプトマイシン耐性が認められた。多剤耐性(3種類以上の異なるクラスの抗菌剤に耐性)はC. coli株の9%(6/65株)およびC. jejuni株の2%(5/328株)で認められた。

 シプロフロキサシンおよびテトラサイクリンへの耐性について、標準的な条件下で飼育された鶏と放し飼い飼育の鶏との間での耐性レベルの違いが調査された。その結果、C. coli株間およびC. jejuni株間を比較した場合の耐性レベルに違いはなかった。標準的な条件下で飼育された鶏と有機飼育の鶏との間でも上記と同じ比較が行われた。その結果、有意な違いは見られなかったが、有機飼育鶏のサンプルサイズが小さいこと、および放し飼い飼育鶏のサンプルサイズも比較的小さいことにより、存在したはずの重要な違いを検出する能力が制限された可能性がある。

 全体として、今回の調査の抗菌剤耐性株の割合は前年次調査(2016年8月〜2017年7月)で報告された結果と類似していた。多剤耐性レベルも前年次調査の結果と類似していた。フルオロキノロン系抗菌剤耐性株の割合も前年次調査の結果と類似していたが、2007/2008年次のFSAの調査および2004〜2006年の「病原体に関する地方自治体統合定点サーベイランス(CLASSP:Coordinated Local Authority Sentinel Surveillance of Pathogens)」の結果と比べると高かった。この結果は、検査された分離株のサンプル内での偏りや検査法の違いに関連している可能性があることから、慎重に解釈される必要がある。

 この調査の結果は、欧州食品安全機関(EFSA)の最近のデータ(EFSAおよび欧州疾病予防管理センター(ECDC)による合同調査、2018年)と一致しており、鶏肉から分離されたカンピロバクター株ではキノロン系抗菌剤(シプロフロキサシン、ナリジクス酸)およびテトラサイクリンへの耐性が頻繁にみられることが明らかになった。一方、エリスロマイシン、ストレプトマイシンおよびゲンタマイシンへの耐性は、検査されたカンピロバクター属菌では極めてまれにしかみられなかった。

 この調査結果は、英国で市販されている生鮮丸鶏検体から抗菌剤耐性カンピロバクター株が検出されることを示すエビデンスとなっている。したがって、公衆衛生リスクを低減するためには鶏肉を清潔に取り扱い十分に加熱することが重要である。

 「英国の市販冷蔵鶏肉から検出されたカンピロバクター(Campylobacter jejuniおよびC. coli)の抗菌剤耐性(第4年次調査:2017〜2018年)(Antimicrobial resistance in Campylobacter jejuni and Campylobacter coli from retail chilled chicken in the UK (Year 4: 2017-18))」(PDF版)およびその生データ(Microsoft Excel版)が以下のWebページから入手可能である。
https://www.food.gov.uk/sites/default/files/media/document/antimicrobial-resistance-in-campylobacter-jejuni-and-campylobacter-coli-from-retail-chilled-chicken-in-the-uk-year-4-2017-18.pdf(PDF版)
http://www.food.gov.uk/sites/default/files/media/document/year-4-raw-data.xlsx(Microsoft Excel版)


(関連ニュース記事)
UK FSA
英国の市販鶏肉の抗菌剤耐性菌汚染レベルに関する最新の調査結果を発表
Latest levels of AMR bacteria in chicken published
18 February 2020
https://www.food.gov.uk/news-alerts/news/latest-levels-of-amr-bacteria-in-chicken-published



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部