フィンランド食品局(FFA)からのカンピロバクター関連情報
https://www.ruokavirasto.fi/en/


食料生産動物への抗菌剤使用量は減少しているが抗菌剤耐性菌対策にはさらなる取り組みが必要
The use of antimicrobials in food-producing animals is decreasing, but additional investments are needed in the control of antimicrobial resistance
November 18/2019
https://www.ruokavirasto.fi/en/farmers/animal-husbandry/animal-medication/ajankohtaista-elainten-laakitsemisesta/news-about-animal-medication/the-use-of-antimicrobials-in-food-producing-animals-is-decreasing/

(食品安全情報2020年2号(2020/01/22)収載)


 フィンランド食品局(FFA)、フィンランド医薬品庁(FIMEA:Finnish Medicines Agency)およびヘルシンキ大学が、フィンランドにおける動物用抗菌剤の使用量および動物由来分離株の抗菌剤耐性モニタリングの結果について共同で発表した報告書「FINRES-Vet 2018」によると、フィンランドにおける食料生産動物用の抗菌剤の販売量は近年減少している。動物のみまたは動物・ヒトの両方に病原性を示す細菌の抗菌剤耐性率は比較的良好な状況が続いているが、その一方で、一部の抗菌剤耐性率の上昇もまた観察されている。

 食料生産動物用抗菌剤の販売量は2014年から2018年にかけて18%減少した。販売量は、個体ごとに使用される注射用抗菌剤、および経口投与用抗菌剤のいずれでも減少している。第三世代セファロスポリン系抗菌剤やフルオロキノロン系抗菌剤など、ヒトおよび動物の治療に最優先される極めて重要な抗菌剤の販売量は非常に少ない。


○ フィンランドにおける食料生産動物への抗菌剤使用量は欧州全体と比較して常に中程度

 2018年のフィンランドにおける食料生産動物用抗菌剤の総販売量は、動物の飼育頭数等を考慮の上で比較すると記録史上最少であった。

 フィンランドでは、食料生産動物への医薬品投与は主に個体ごとに行われている。これは、抗菌剤の多くが飼料や飲料水に混ぜて動物集団に投与される他の多くの欧州国とは異なる点である。フィンランドにおいて抗菌剤が対象を絞って適切に使用され、疾患予防への取り組みが行われていることが、食料生産動物由来分離株の抗菌剤耐性率の状況が良好であることに反映されている。

 動物病原性細菌の中から、多剤耐性(3種類以上の異なるクラスの抗菌剤に耐性)株が複数検出された。例えば、ブタの腸炎の原因である大腸菌では、治療に使用される複数の抗菌剤への耐性率が非常に高い。反対に、呼吸器病のウシから分離された3種の原因菌における抗菌剤耐性率はいずれも大腸菌より明らかに低いが、ウシ呼吸器病で2番目に多い原因菌Mannheimia haemolyticaのペニシリン耐性率は近年上昇している。


○ 動物−ヒト間で伝播する細菌の抗菌剤耐性レベルは比較的低い

 カンピロバクターやサルモネラなど人獣共通感染症を引き起こす細菌は動物およびヒトの両方に感染する。しかしながら、これらの細菌の抗菌剤耐性率は低レベルに留まっている。2010年代、フィンランドの食料生産動物から分離されるカンピロバクターのフルオロキノロン系抗菌剤耐性およびテトラサイクリン耐性の割合に上昇が見られ、これは欧州の他地域でも同様である。2018年にフィンランドのブロイラーから分離されたCampylobacter jejuni株の約25%がフルオロキノロン系抗菌剤に耐性であった。

 以前に欧州の複数国で見つかっていた多剤耐性Salmonella Kentucky ST198が2018年にフィンランドでも初めて検出され、サルモネラに関しても2018年は特別な年となった。


○ 伴侶動物(Companion Animal)への抗菌剤の使用量も減少

 伴侶動物への動物用抗菌剤(錠剤)の使用量は2010年代にかなり減少した。特に、第一世代セファロスポリン系抗菌剤の販売量の減少、また近年はアミノペニシリン類の販売量の減少が顕著である。



国立医薬品食品衛生研究所安全情報部