欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
https://www.efsa.europa.eu/en


ブロイラーの一次生産段階におけるカンピロバクター管理対策に関する科学的意見の更新および見直し
Update and review of control options for Campylobacter in broilers at primary production
30 April 2020
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2020.6090(報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6090

(食品安全情報2020年16号(2020/08/05)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)は、ブロイラーのカンピロバクター汚染対策について2011年に発表した科学的意見に関し、より新しい科学的データを踏まえて見直しを行った。欧州連合(EU)域内においてブロイラー肉が原因で発生するヒトのカンピロバクター症の相対リスク低下を推定するにあたり、農場での各種の管理対策について、ブロイラー群のカンピロバクター保菌率の低減対策をPAF(Population Attributable Fraction:集団寄与割合)で評価し、また盲腸便のカンピロバクター汚染濃度の低減対策の評価に用いるモデルを更新し、科学論文の文献調査を行った。6項目の管理対策について算出されたPAFの分析にもとづくと、これらの6つの管理対策がそれぞれ個別に適用された場合に得られる相対リスク低下の平均値はかなり大きいと推定されるが、いずれの管理対策の信頼区間(CI, confidence interval)にも幅があることから、個別のリスク低下の可能性には高い不確実性が存在することが示されている。見直しが行われた今回のモデルでは、2011年の科学的意見で使用されたモデルに比べて効果の推定値が低い結果となった。ブロイラーの盲腸便のカンピロバクター汚染濃度が3-log10低下することにより、EU域内でのブロイラー肉によるヒトのカンピロバクター症の相対リスクが58%低下すると今回推定されたが、2011年の意見では90%超低下すると推定されていた。管理対策の順位付けを行うにあたり、多岐にわたるエビデンスを重み付け・統合し、不確実性を評価するために「専門家への意見聴取(Expert Knowledge Elicitation)」の手法が使用された。選択された管理対策による各相対リスク低下の中央値は、確率区間(PI, probability interval)の大部分が重複しているため、以下の管理対策の順位付けについては不確かであった:「ワクチン接種(27%、90% PI [4〜74%])」、「飼料・動物飲用水添加物(24%、90% PI [4〜60%])」、「中抜きの廃止(18%、90% PI [5〜65%])」、「少数の熟練した従業員の雇用(16%、90% PI [5〜45%])」、「溜り水にならない給水器の使用(15%、90% PI [4〜53%])」、「飲用水への消毒剤の添加(14%、90% PI [3〜36%])」、「入室準備室の衛生管理(12%、90% PI [3〜50%])」、「鶏舎ごとに専用の器具・用具を使用(7%、90% PI [1〜18%])」。これらのエビデンスにもとづく推定は相互依存的であり、それぞれに高い不確実性が伴うため、複合的な対策活動の効果を定量化することは不可能である。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部