欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
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欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2017/2018年)
The European Union Summary Report on Antimicrobial Resistance in zoonotic and indicator bacteria from humans, animals and food in 2017/2018
3 Mar 2020
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/EU-summary-report-antimicrobial-resistance-zoonotic-bacteria-humans-animals-2018.pdf(ECDC報告書PDF)
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications/EU-summary-report-antimicrobial-resistance-zoonoses-2017-2018(ECDCサイト)
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2020.6007(EFSA報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/6007(EFSAサイト)

(食品安全情報2020年10号(2020/05/13)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する2017/2018年次要約報告書を発表した。この中から概要部分を以下に紹介する。

 ヒト、動物および食品から得られた最新のデータは、分離されたサルモネラ株のほとんどが多剤耐性(3種類以上の抗菌剤に耐性)であることを示した。ヒト由来株では、特に一部のサルモネラ血清型でシプロフロキサシン耐性が多く見られ、高濃度のシプロフロキサシンへの耐性率が2016年の1.7%から2018年は4.6%へと上昇した。カンピロバクターのシプロフロキサシン耐性率については、19カ国中16カ国が「非常に高い」または「極めて高い」と報告した。

 シプロフロキサシンへの高い耐性率は、家禽由来のサルモネラ株および大腸菌株でも報告されている。シプロフロキサシンは、ヒト治療用として「極めて高度に重要」なランクに分類されるフルオロキノロン系抗菌剤である。フルオロキノロン系抗菌剤の有効性が失われた場合、ヒトの健康に重大な被害が生じる可能性がある。

 しかしながら、「極めて高度に重要」な2種類の抗菌剤への複合耐性率に関しては、サルモネラでのフルオロキノロン系抗菌剤と第三世代セファロスポリン系抗菌剤、およびカンピロバクターでのフルオロキノロン系抗菌剤とマクロライド系抗菌剤が依然として低レベルである。

 2018年分の報告書には、最終選択薬の抗菌剤であるカルバペネム系抗菌剤への耐性を示すサルモネラ感染のヒト散発事例が紹介されている。

 本報告書は、EU加盟各国が抗菌剤の使用量の削減および抗菌剤耐性への取り組みにおける進捗状況を評価するための重要な成果指標も収載している。食料生産動物由来大腸菌株では、2014〜2018年に加盟6カ国(全加盟国の25%未満)においてすべての抗菌剤への感受性の総合指標が上昇した。この結果は、これらの国では抗菌剤を必要とする治療で効果が得られる可能性が高いことを意味しており、有望な傾向が示されている。基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)/AmpC型βラクタマーゼ(AmpC)産生性大腸菌の出現については、2015〜2018年に加盟11カ国(全加盟国の約40%)で減少傾向が見られた。ESBL/AmpC産生大腸菌はヒトの重篤な感染症の原因となるため、この結果もまた重要である。

 最終選択薬とされている抗菌剤については、コリスチン耐性のサルモネラおよび大腸菌は多くは検出されず、カルバペネマーゼ産生性大腸菌はブロイラー、七面鳥およびブロイラー肉では検出されなかった。

 ヒト由来Salmonella Typhimurium分離株では、2013〜2018年に多くの加盟国でアンピシリン耐性率およびテトラサイクリン耐性率の低下が認められ、これもまた有望な傾向となっている。

 このEU要約報告書は、ヒト、動物および食品から検出される細菌の抗菌剤耐性の状況を調査し、ECDCとEFSAが合同で発行する年次報告書である。


(関連ニュース記事)
欧州連合(EU)域内の抗菌剤耐性:食品由来細菌感染症は治療がより困難になりつつある
Antimicrobial resistance in the EU: infections with foodborne bacteria becoming harder to treat
3 Mar 2020
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/antimicrobial-resistance-eu-infections-foodborne-bacteria-becoming-harder-treat



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部