欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
https://www.ecdc.europa.eu/en
https://www.efsa.europa.eu/en


欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症に関してOne Healthの観点からの報告書(2018年)
The European Union One Health 2018 Zoonoses Report
12 December 2019
https://www.ecdc.europa.eu/sites/default/files/documents/zoonoses--EU-One-Health-2018-Zoonoses-Report.pdf(報告書PDF、ECDCサイト)
https://www.ecdc.europa.eu/en/publications-data/european-union-one-health-2018-zoonoses-report(ECDCサイト)
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2019.5926(報告書PDF、EFSAサイト)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5926(EFSAサイト)

(食品安全情報2020年2号(2020/01/22)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)による本報告書は、欧州の36カ国(欧州連合(EU)加盟28カ国、非加盟8カ国)により2018年に実施された人獣共通感染症モニタリングの結果を記載したものである。

 報告患者数が最も多かった人獣共通感染症はカンピロバクター症で、次がサルモネラ症であった。EUにおいてこれら2つの疾患の確定患者数は、2014〜2018年の期間に大きな変動はみられなかった。2018年、サルモネラ症患者に占めるSalmonella Enteritidis感染患者の割合は2017年と同レベルであった。報告を行った加盟27カ国のうち、16カ国が指定されたすべての家禽類でのサルモネラ汚染率低減目標を達成していたが、11カ国は少なくとも1つの家禽類で目標を達成できていなかった。繁殖鶏、産卵鶏、ブロイラーおよび肥育七面鳥での標的サルモネラ血清型の群汚染率はEUレベルでここ数年低下しているが、繁殖七面鳥では停滞している。ブタとたいおよび家禽のサルモネラ汚染について、各国当局が国内管理プログラムにより行った検査の結果は、食品事業者による検査結果より陽性率が高い傾向にあった。志賀毒素産生性大腸菌(STEC)は患者数がEU域内で3番目に多く、2014年から2018年にかけて増加した。エルシニア症患者数は4番目に多く、2014〜2018年の間大きく変動していない。リステリアについては、そのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品でEUの食品安全基準を超えることがほとんどなかったにもかかわらず、確定患者数は2018年にさらに増加した。食品・水由来アウトブレイクは計5,146件が報告された。病因物質としてはサルモネラが最も多く、アウトブレイク5件につき1件がS. Enteritidisによるものであった。病因物質と食品の組み合わせでは、サルモネラと卵・卵製品が最も高リスクであった。2018年、ウエストナイル熱の患者数が大幅に増加した。本報告書には、ウシ結核、ブルセラ症、トリヒナ症、エキノコックス症、トキソプラズマ症、狂犬病、Q熱、および野兎病についても最新情報が記載されている。


2018年の人獣共通感染症の概要

 本報告書に示された13種類の人獣共通感染症の確定患者数のデータが図1にまとめられている。2018年に報告された人獣共通感染症では、カンピロバクター症が最も多く報告され、全報告患者の約70%を占めていた。2005年以降、カンピロバクター症は毎年最も多く報告されている人獣共通感染症である。カンピロバクター症に続き、サルモネラ症、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)感染症、エルシニア症などの細菌性疾患が高頻度に報告された。各疾患の重症度について、報告患者の入院率および転帰にもとづく分析が行われた(表1)。この分析結果によると、入院率および致死率の高さからリステリア症が最も重症度の高い人獣共通感染症で、ウエストナイル熱感染がこれに続いた。入院の有無に関する情報が得られた両疾患の確定患者のほぼ全員が入院していた。当該情報が得られた確定患者のうち、リステリア症患者の6人に1人およびウエストナイル熱患者の10人に1人が死亡した。

図1:欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症の確定患者報告数および人口10万人あたりの報告率(2018年)

注)各棒グラフ右端のカッコ内の数値は確定患者報告数
1ウエストナイル熱については確定患者ではなく全患者の報告数


表1:人獣共通感染症確定患者の入院率および致死率(EU、2018年)

a)ウエストナイル熱については確定患者ではなく全患者の報告数
b)すべてのEU加盟国が表中のすべての人獣共通感染症の入院患者数、死亡者数を報告したわけではない
c)NAは当該の情報が収集されなかったことを示す



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部