(食品安全情報2020年2号(2020/01/22)収載)
米国疾病予防管理センター(US CDC)および複数州の公衆衛生当局は、ペット店の子犬との接触に関連して複数州にわたり発生している多剤耐性カンピロバクター(Campylobacter jejuni)感染アウトブレイクを調査している。
本アウトブレイクの公衆衛生調査では、アウトブレイク患者を特定するためにPulseNet(食品由来疾患サーベイランスのための分子生物学的サブタイピングネットワーク)のシステムを利用している。PulseNetは、公衆衛生当局および食品規制当局の検査機関による分子生物学的サブタイピング結果をCDCが統括する全米ネットワークシステムである。患者から分離されたカンピロバクター株には、標準化された検査・データ解析法であるWGS(全ゲノムシークエンシング)法によりDNAフィンガープリンティングが行われる。CDCのPulseNet部門は、アウトブレイクの可能性を特定するため、このようなDNAフィンガープリントの国内データベースを管理している。WGS法による解析結果は疾患の原因菌について詳細な情報をもたらす。本アウトブレイク調査では、WGS解析により患者由来カンピロバクター分離株が遺伝学的に相互に近縁であることが示されている。この遺伝学的近縁関係は、本アウトブレイクの患者の感染源が共通である可能性が高いことを意味している。WGS解析の結果はまた、本アウトブレイクの患者由来株が、ペット店の子犬に関連して2016〜2018年に発生した多剤耐性カンピロバクター感染アウトブレイク(下記Webページ参照)の患者由来株と遺伝学的に関連することも示している。
https://www.cdc.gov/campylobacter/outbreaks/puppies-9-17/index.html
2019年12月17日時点で、カンピロバクターアウトブレイク株感染患者が13州から計30人報告されている(図)。
図:カンピロバクターアウトブレイク株感染患者(2019年12月11日までに報告された居住州別患者数、n=30)
患者の発症日は2019年1月6日〜11月10日である。患者の年齢範囲は8カ月〜70歳、年齢中央値は34歳で、52%が女性である。情報が得られた患者26人のうち4人が入院した。死亡者は報告されていない。
WGS解析により、患者由来のカンピロバクター分離株計26株について抗生物質耐性が検査され、テトラサイクリン(26株)、シプロフロキサシン(25)、ナリジクス酸(25)、アジスロマイシン(23)、エリスロマイシン(23)、クリンダマイシン(23)、テリスロマイシン(23)およびゲンタマイシン(18)への耐性が予測された。これらの結果は、CDCの全米抗菌剤耐性モニタリングシステム(NARMS)検査部門が標準的な抗生物質感受性試験法を用いてアウトブレイク株1株について行った検査の結果により確認された。
アウトブレイク調査
疫学調査および検査機関での検査から得られたエビデンスは、ペット店で販売された子犬が本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことを示している。患者の多くが、子犬との接触歴があるかPetlandを含むペット店の従業員である。
CDCは、以下の患者を本アウトブレイクの患者として分類している。
調査では、Petlandで子犬と接触した患者が他にも8人報告され、診断検査によりカンピロバクターへの感染が確認された。しかし、これらの患者についてはWGS解析のためのカンピロバクター検体が入手できなかったため、CDCは本アウトブレイクの患者に含めていない。複数州にわたるアウトブレイクの公衆衛生調査では、アウトブレイク患者を特定するためWGS解析が利用されている。
現時点で、子犬に共通する単一の供給業者は特定されていない。本アウトブレイク調査は継続しており、CDCは更新情報を提供していく予定である。