ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのカンピロバクター関連情報
https://www.bfr.bund.de/


食肉、卵および生乳に存在する病原体の追跡調査
On the trail of pathogens in meat, eggs and raw milk
31.10.2019
https://www.bfr.bund.de/en/press_information/2019/41/on_the_trail_of_pathogens_in_meat__eggs_and_raw_milk-242962.html

(食品安全情報2020年5号(2020/03/04)収載)


 食品の安全性のさらなる向上を目指し、2019年11月4〜5日にベルリンMarienfeldeのドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)でシンポジウム「人獣共通感染症と食品安全(Zoonoses and Food Safety)」が開催され、研究機関、食品規制当局および食品業界から参加する専門家が現在の動向と戦略について議論する。食品中に存在する一部の微生物はヒトの健康問題の原因となる可能性があり、生乳中のカンピロバクター、卵中のサルモネラ、ready-to-eat(そのまま喫食可能な)食品中のリステリアなどは、しばしば大規模アウトブレイクの原因となっている。リステリア症では致死率が突出している。BfRは、疾患アウトブレイクの調査を支援するためのデジタルツールを開発した。BfRのHensel所長によると、ソフトウェア「FoodChain-Lab」(https://foodrisklabs.bfr.bund.de/foodchain-lab/)は、製造業者から患者の発生地点までの製品の追跡を可能にするもので、BfRは世界中に向けてこの革新的なソフトウェアを無料で提供している。このツールは、検査機関で検出された病原体の遺伝的プロファイルと当該食品の出荷日を照合することで汚染源を特定する。BfRは、この使いやすいソフトウェアの開発を継続し、行政機関等に使用方法を指導していくことで、情報の迅速性・信頼性を確保していく。

 家禽類でのサルモネラコントロールによって近年サルモネラ感染患者数は減少しているが、サルモネラは依然として重大な問題である。本シンポジウムでは、長期にわたり発生している食品由来サルモネラ症アウトブレイク事例の報告、および豚肉のサルモネラ汚染の低減戦略に関する議論が行われる予定である。

 このほか、ドイツではカンピロバクターが食品由来細菌感染症の最大の原因となっており、小児や若年成人を中心に毎年約70,000人の患者が発生していることから、カンピロバクターにも焦点が当てられる。近年ドイツでは、幼児や遠足で農場の自動販売機の生乳を喫飲した児童においてカンピロバクター症アウトブレイクが頻繁に発生している。ヒトへのカンピロバクター感染を低減させるため、「One healthアプローチ」によって動物・ヒト・環境の複合的な科学研究の観点から予防、管理および治療のための新たな戦略が導入される。

 さらに、ドイツでは近年E型肝炎患者数が著しく増加していることから、焦点は次第に食品中のウイルスへと移りつつある。これらの患者は主に、加熱不十分のレバーや生肉ソーセージなど、感染した豚やイノシシの肉・内臓およびそれらに由来する製品の喫食が原因で感染する。また、A型肝炎についても食品由来アウトブレイクの報告が行われる予定である。

 シカ、ノロジカ、イノシシなどの狩猟動物肉は多くの人がまれにしか喫食しないが、人気は徐々に高まっている。ドイツのブランデンブルク州における野生動物の寄生虫感染についてBfRが行った初期調査の結果は、野生動物のトキソプラズマ感染およびイノシシのアラリア属吸虫(Duncker’s muscle fluke)保有の可能性を示している。これらの調査結果は、ヒトへの健康リスクの可能性を想定するための根拠となる。

 シンポジウムの最後のプログラムは、その他の病原体に関する調査およびリスクの早期検出のための戦略的アプローチである。

 このシンポジウムは、ドイツ語圏地域の研究機関、食品安全検査機関、地域当局および食品業界の関係者を対象としたものである。英語による同時通訳の利用が可能である。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部