デンマーク国立血清学研究所(SSI)からのカンピロバクター関連情報
https://www.ssi.dk


デンマーク抗微生物剤耐性モニタリングおよびリサーチプログラム(DANMAP)の2017年次報告書
DANMAP 2017
Updated 21 November 2018
https://www.danmap.org/-/media/arkiv/projekt-sites/danmap/danmap-reports/danmap-2017/danmap2017.pdf?la=en(報告書全文)
https://www.danmap.org/downloads/reports

(食品安全情報2019年7号(2019/04/03)収載)


 デンマーク抗微生物剤耐性モニタリングおよびリサーチプログラム(DANMAP: Danish Integrated Antimicrobial Resistance Monitoring and Research Program)は、1996年以降、デンマークにおける動物・食品・ヒト由来の人獣共通感染症細菌、指標細菌、および病原細菌の抗微生物剤耐性獲得状況に関する年次報告書を発行している。これまでに発行されたすべての年次報告書がPDF形式でダウンロード可能である。

 直近の2017年次報告書から、概要の一部を以下に紹介する。


動物への抗微生物剤の使用状況

 動物への抗微生物剤の総使用量は4年連続で減少し、2013年以降では16トン以上減少した。2017年は2016年から約3%の減少であった。

 この減少は、ブタでの抗微生物剤の使用量が2016年より約4%(活性化合物として3.4トン)減少し、計74.8トンとなったことによるものである。2017年は、デンマークでのブタの総生産頭数は2016年とほぼ同程度であったが、離乳したブタの輸出量の増加が続いた。2009年以降、ブタへのテトラサイクリンの使用量はほぼ一貫して有意な減少が続いている。2017年は、イエローカード制度の見直しによりテトラサイクリンの使用量係数が1.5に改定され、テトラサイクリンの使用量は2016年と比べてさらに約3分の1(7.2トン)減少した。また、同制度の改定によって、2017年第2四半期以降、コリスチンの使用量はほぼゼロにまで減少した。テトラサイクリンおよびコリスチンの使用量は減少しているが、一方、マクロライド系、プレウロムチリン系およびアミノグリコシド系薬剤の使用量は小幅ではあるが明確な増加傾向にある。

 処方パターンや生産頭数の変動、さらに月齢グループによる使用量の違いを考慮に入れるため、ブタでの抗微生物剤の使用状況は治療頻度(DAPD: Defined animal daily dose (DADD) per 1,000 animals per day [動物1,000頭・1日あたりに使用される薬剤の量を規定1日投与量を単位として数値化したもの])ベースでも算出された。その結果、2017年の任意の1日に、雌ブタ・子ブタの約2%、肥育ブタの約1〜2%、および離乳したブタの約10%が抗微生物剤治療を受けていた。ブタの輸出量で補正すると、ブタでの2017年の抗微生物剤使用量は、DAPDベースでも2016年と比べて4%、また2009年と比べると29%減少した。

 家禽・水産養殖の両業界とも、2016年から2017年にかけて抗微生物剤の使用量はさらに減少した。家禽業界では抗微生物剤の使用量が2016年の1,560 kgから2017年は1,488 kgへと減少した。水産養殖業界での2017年の抗微生物剤使用量は、VetStatデータベースにおいて過去最低の1,697 kgを記録した(2016年は2,303 kg)。水産養殖業界におけるこの減少傾向は、気象の好条件(夏季の低温)とワクチンプログラムの実施とが複合的にもたらした可能性が高い。

 毛皮動物業界では抗微生物剤の使用量の増加が続いており、2017年の総使用量は2016年と比べて15%増加し6,134 kgとなった。しかし、2017年にこのような使用量の増加を説明する診察件数の明確な増加は認められなかった。

 ペット動物への抗微生物剤の推定使用量は、2017年は1,296 kgであった。その他の動物種と比べてペット動物では、極めて重要な抗微生物剤の使用量が依然として多い。動物に使用されたフルオロキノロン系薬剤の87%(13 kg相当)およびセファロスポリン系薬剤の62%(111 kg相当)はイヌまたはネコに処方されたものである。イヌ・ネコ向けの抗微生物剤の使用量は2015年に比べ2016年は微増したが、2011年以降の全体的な傾向としては減少している。使用薬剤の種類の変動は2017年も続き、セファロスポリン系薬剤の使用量の顕著な減少およびアミノペニシリン系の使用量の増加が認められた。


人獣共通感染症細菌および指標細菌における抗微生物剤耐性

〇サルモネラ

 DANMAP 2017の対象にはデンマーク産のブタおよびデンマーク産の豚肉に由来するサルモネラ分離株が含まれており、血清型としてはSalmonella Typhimuriumが依然として最も検出頻度の高い血清型であった。S. Typhimuriumの耐性プロファイルは、デンマーク産のブタおよびデンマーク産の豚肉に由来するサルモネラ分離株において高い割合を占めるS. Typhimurium単相変異株の影響を受け、テトラサイクリン、アンピシリンおよびスルホンアミドへの耐性を示した。これら3種類の薬剤への耐性率は徐々に上昇しており、2010年以降2017年までに約30%上昇した。この一定した上昇は国内感染患者由来株でもみられる。シプロフロキサシン耐性および第三世代セファロスポリン系耐性がヒト由来株で低レベルで認められたが、ブタ由来株およびデンマーク産豚肉由来株では認められなかった。

〇カンピロバクター

 ヒト患者(国内感染)、ブロイラーおよびウシ由来のカンピロバクター分離株は、相互に類似の耐性パターンを示した。キノロン系薬剤の動物への使用は極めて限定的であるにもかかわらず、シプロフロキサシン耐性が最も高頻度でみられた。これら3種類の分離株群においてテトラサイクリン耐性も相互に類似の頻度でみられた。国外旅行関連のヒト患者由来株は、国内感染患者由来株に比べ耐性率が大幅に高い傾向を示した。

〇腸球菌

 2017年は、デンマーク産ブタ由来腸球菌(Enterococcus faecalis)分離株の55%でエリスロマイシン耐性、78%でテトラサイクリン耐性が観察された。少数のゲンタマイシン耐性株(高レベル耐性株ではない)も検出されたが、ヒトの医療に重要なその他の抗微生物剤への耐性は検出されなかった。

〇指標大腸菌

 完全な感受性を示す指標大腸菌の割合は、2016年と比べて2017年は家禽およびブタ由来株でわずかに上昇、ウシ由来株ではわずかに低下した。家禽・ブタ・ウシ由来指標大腸菌の耐性パターンおよび耐性レベルは全体として2016年までと同様で、コリスチン、メロペネム、およびチゲサイクリンへの耐性は検出されなかった。

〇基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)およびAmpC型βラクタマーゼ産生大腸菌

 基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)およびAmpC型βラクタマーゼ産生大腸菌は、デンマーク産のブタに由来するセフォタキシム(Cefotaxime)耐性大腸菌検体の25%およびウシ由来同検体の7%、国産豚肉由来同検体の1%および国産牛肉由来同検体の4%、ならびに輸入豚肉由来同検体の14%および輸入牛肉由来同検体の3%から分離された。各種動物/食肉から分離された大腸菌について2017年に観察されたESBL/AmpC出現率は、2015年のレベルと同程度であった。食肉由来分離株についてESBL/AmpCの遺伝子型が特定され、国産豚肉および輸入豚肉・牛肉由来の大腸菌株において最も多くみられたESBLはCTX-M-1であった。国産牛肉由来株ではCTX-M-14、CTX-M-15およびCTX-M-1が同レベルでみられた。豚肉・牛肉由来株では、CMYなどのプラスミド性AmpCは検出されなかった。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部