オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)からのカンピロバクター関連情報
https://www.rivm.nl


食品関連病原体による疾患の実被害(オランダ、2018年)
Disease burden of food-related pathogens in the Netherlands, 2018
2019-07-04
https://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/2019-0086.pdf (報告書PDF)
https://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/2019-0086.html

(食品安全情報2019年17号(2019/08/21)収載)


 オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)は、オランダ保健・福祉・スポーツ省(VWS)の要請により、14種類の腸管病原体による疾患の罹患数、疾患実被害および疾病費用(COI:cost-of-illness)について2018年の更新データを発表した。これらの病原体は、食品、環境、動物およびヒトを介して伝播する。本報告書において疾患実被害は、罹患数と死亡数を1つの単位に統合した障害調整生存年(DALY:Disability Adjusted Life Year)により表されている。また、14種類の食品関連病原体によるCOIが推定され、結果はユーロで示されている。COI推定値には、医療費、患者とその家族が負担する経費(交通費など)、労働力の減少により生じる費用などが含まれている。

 14種類の病原体による2018年の疾患実被害の合計は2017年と同程度であった(11,000 DALYs)。食品由来感染による実被害が全体に占める割合は前年までと同程度で、2018年の推定値は4,300 DALYsであった(2017年は4,200 DALYs)。14種類の病原体によるCOIは、2017年の3億9,700万ユーロから2018年は4億2,600万ユーロへと若干増加した。食品由来感染によるCOIも2017年(1億6,300万ユーロ)から若干増加し、2018年は1億7,100万ユーロとなった。DALY値およびCOI推定値の2017年と2018年の違いは、病原体ごとの感染患者数、それらによる疾患実被害、および感染症ごとの疾病費用の変動を主に反映している。

 本報告書に記載された研究により、食品由来疾患の罹患数および関連する疾患実被害とCOIに関する理解が深まり、研究者および政策立案者がこれら14種類の病原体の動向を監視することが可能となる。

○ 各種疾患の2018年の動向の概要

  • カンピロバクター症(検査機関確定患者)の人口10万人あたりの罹患率は、2017年の33から2018年は35に上昇した。しかし、2010〜2016年と比べると低くなっている。

  • サルモネラ症(検査機関確定患者)の人口10万人あたりの罹患率は、2018年は9で、2013〜2017年(9〜11)と同程度である。

  • クリプトスポリジウム症(検査機関確定患者)の人口10万人あたりの罹患率は、2017年の8から2018年は10に上昇したが、2013〜2016年の罹患率の範囲内に収まっている。

  • ロタウイルスによる胃腸炎(検査機関確定患者)の人口10万人あたりの罹患率は、2018年は17で、2017年の16と同程度である。2014〜2017年に罹患率の低い年と高い年が交互にみられたが、2018年にそのパターンは続かなかった。

  • ノロウイルスによる胃腸炎(検査機関確定患者)の人口10万人あたりの罹患率は、2018年は27で、2017年の23より高かったが、2012〜2016年の罹患率(25〜33)の範囲内である。

  • 後天性リステリア症の患者数(検査機関確定患者、アクティブサーベイランス)は、2017年の112人から2018年は71人に減少した。この値は、2013〜2016年のほとんどの年と比べても若干少ない。報告された死亡者数は4人で、前年までと比べて少なかった(2017年は10人、2016年は8人)。

  • 2018年の周産期関連リステリア症の患者数(検査機関確定患者、アクティブサーベイランス)は7人、死亡者数は2人で、2017年の患者数3人、死亡者数2人に比べ増加した。この変動は2015〜2016年に見られたパターンに似ている。

  • 2018年の志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157感染症の患者数(検査機関確定患者、アクティブサーベイランス)は59人で、このうち23人が入院した。患者数は2017年(58人)と同程度であるが、2014年および2015年と比べると少ない。溶血性尿毒症症候群(HUS)の2018年の患者数は5人で、2014〜2017年の年間患者数2〜3人より若干多い。

  • A型肝炎については患者188人および入院患者57人が報告され(アクティブサーベイランス)、患者数は2015年および2016年(両年とも約80人)よりかなり多かったが、2017年(374人)と比べると少なかった。2017年および2018年に患者が多かったのは、男性同性愛者間で国際的アウトブレイクが発生したためで、その患者数は2017年にピークに達し、2018年に減少した。

  • E型肝炎(検査機関確定患者)の人口10万人あたりの罹患率は2で、2016年および2015年(両年とも3)より低かったが、2017年(2)と同程度である。

  • 胃腸炎による入院患者数は2018年は21,800人と推定され、2017年(21,400人)と同程度で、2016年(20,800人)より若干多い。2016年に入院患者数が少なかったのは、この年にロタウイルス感染患者が少なかったことが主な原因である。


国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部