オランダ国立公衆衛生環境研究所(RIVM)からのカンピロバクター関連情報
https://www.rivm.nl


オランダにおける人獣共通感染症の発生状況(2017年)
State of Zoonotic Diseases 2017
2018-12-11
http://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/2018-0112.pdf(報告書PDF、オランダ語)
https://www.rivm.nl/bibliotheek/rapporten/2018-0112.html

(食品安全情報2019年4号(2019/02/20)収載)


 人獣共通感染症とは動物とヒトとの間で伝播し得る感染症のことである。本報告書は、オランダで発生した人獣共通感染症に関する2017年の年次報告書である。本報告書には、届け出義務がある人獣共通感染症の発生動向、注目すべき調査および症例研究などが収載されている。また、この報告書は人獣共通感染症に関連する特定のテーマにも焦点を当てており、2017年のテーマはOne Healthの理念にもとづく協調についてである。

 2017年は2016年までと同様、届け出義務がある人獣共通感染症のほとんどについて特記すべき変化は観察されなかった。人獣共通感染症全体に占める割合が最も高かったのは、2017年も引き続き食品由来細菌(カンピロバクター、リステリア(Listeria monocytogenes)、サルモネラ、志賀毒素産生性大腸菌(STEC))であった。レプトスピラ症患者数は、2016年の減少傾向が継続したものの2017年も依然として多く、ハンタウイルス感染患者数は2017年にさらに増加した。2016年に、オランダでは初めてイヌからブルセラ菌(Brucella canis)が検出されたが、2017年も輸入のイヌ数頭からB. canisが検出された。

 人獣共通感染性クラミジアとしては、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)の他に数種が存在する。2013年以降オランダで計6人がC. caviaeによる肺炎と診断され、また、2017年には1人がC. felisによる結膜炎と診断された。抗生物質耐性に関する調査プロジェクト(ESBLAT:ESBL-Attribution-analysis)により、ESBL(基質特異性拡張型βラクタマーゼ)遺伝子の伝播はほとんどが動物−ヒト間ではなくヒト−ヒト間で起こることが明らかになった。ESBL遺伝子を有する細菌は抗生物質の作用を阻害する酵素を産生できるため、抗生物質耐性となる。耐性遺伝子は他の細菌に伝達されることがあるため、抗生物質耐性が蔓延する。

 本報告書の2017年のテーマは「人獣共通感染症への統合的アプローチ:One Healthの理念にもとづく協調の課題と適用(Integrated approach of zoonoses; challenges and applications of One Health collaboration)」である。人獣共通感染症の徴候の発信、評価および制御には、One Healthの原則にもとづく様々な分野間での協力が強く求められる。One Healthの中核となる理念は、ヒト・動物・環境は相互に関連し、影響しあっているという考えである。本報告書では、One Healthの原則がどのように発展してきたかについて記載されている。また、最近発生した2件の人獣共通感染症アウトブレイク(ラットでのソウルウイルス感染、イヌでのBrucella canis感染)は、オランダでOne Healthにもとづく協力関係がどのように築かれているかを示している。

(関連記事)
オランダにおける人獣共通感染症の発生状況報告書(2017年)の最重要ワードは分野間協力
Collaboration is key to 2017 State of Zoonotic Diseases report
12/20/2018
https://www.rivm.nl/en/news/collaboration-is-key-to-2017-state-of-zoonotic-diseases-report



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部