Morbidity and Mortality Weekly Report(CDC MMWR)からのカンピロバクター関連情報
https://www.cdc.gov/mmwr/


主に食品を介して伝播する病原体による感染症の暫定罹患率と動向 − 食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)の米国内10カ所のサイトでのデータ(2015〜2018年)
Preliminary Incidence and Trends of Infections with Pathogens Transmitted Commonly Through Food - Foodborne Diseases Active Surveillance Network, 10 U.S. Sites, 2015-2018
Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR)
Weekly / April 26, 2019 / 68(16); 369-373
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/68/wr/pdfs/mm6816a2-H.pdf(PDF版)
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/68/wr/mm6820a5.htm?s_cid=mm6820a5_w(訂正ページ)

(食品安全情報2019年17号(2019/08/21)収載)


 食品由来疾患は米国において主要な健康問題となっている。米国疾病予防管理センター(US CDC)の新興感染症プログラム(EIP:Emerging Infections Program)による食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)は、主に食品を介して伝播する8種類の病原体の検査機関確定感染症例数を米国内10カ所のサイトにおいて監視している。今回の報告書は、2018年の暫定データおよび2015年以降の変動をまとめたものである。2018年にFoodNetは、感染患者25,606人、入院患者5,893人および死亡者120人を確認した。2018年は、カンピロバクターやサルモネラを始めとするほとんどの病原体による感染症の罹患率が上昇しており、これは培養非依存的診断検査(CIDT)法の使用の増加が一因である可能性がある。2018年はまた、サイクロスポラ感染の罹患率が2015〜2017年と比べて著しく上昇しており、これは、農産物により発生した複数の大規模アウトブレイクに一部関連している。食品の安全性を高め、ヒトの疾患を減少させるためには、農産物農場、食糧生産動物農場および食肉・家禽肉加工施設において、対象を限定した予防対策が今後も必要である。


感染患者数、罹患率およびその動向

 2018年にFoodNetは、感染患者25,606人、入院患者5,893人および死亡者120人を確認した。人口10万人あたりの罹患率が最も高かった病原体はカンピロバクター(19.5)およびサルモネラ(18.3)で、次いで志賀毒素産生性大腸菌(STEC、5.9)、赤痢菌(4.9)、ビブリオ(1.1)、エルシニア(0.9)、サイクロスポラ(0.7)およびリステリア(0.3)の順であった(表)。2015〜2017年と比較して2018年に罹患率が有意に上昇した病原体(変動%)は、サイクロスポラ(399%)、ビブリオ(109%)、エルシニア(58%)、STEC(26%)、カンピロバクター(12%)およびサルモネラ(9%)であった。2018年にCIDT法により、追加培養(reflex culture)の有無にかかわらず陽性と診断された細菌感染患者数は、2015〜2017年の平均と比較して全体で65%増加し、病原体別ではSTECの29%増からビブリオの311%増まで幅があった。2018年の感染患者でDNA情報をもとにしたパネル検査(DNA-based syndrome panel)により陽性と診断された患者の割合は、エルシニア(68%)とサイクロスポラ(67%)で最も高く、次いでSTEC(55%)、ビブリオ(53%)、赤痢菌(48%)、カンピロバクター(43%)およびサルモネラ(33%)の順で、リステリア(2%)が最も低かった。2018年は、CIDT陽性検体の75%について追加培養が試みられ、病原体別ではカンピロバクターの64%からリステリアの100%まで幅があった。追加培養が実施された検体の占める割合は、2018年は2015〜2017年と比べて14%上昇し、病原体別では、STECでの7%低下から赤痢菌での55%上昇までさまざまであった。2018年に追加培養で陽性結果を示した検体の割合は、リステリア(100%)とサルモネラ(86%)で最も高く、次いでSTEC(64%)、カンピロバクター(59%)、赤痢菌(56%)、エルシニア(50%)、ビブリオ(37%)の順であった。

 2018年は、サルモネラ分離株のうち7,013株(87%)について血清型に関する詳細な情報が得られ、最も頻繁に見られた血清型はEnteritidis(人口10万人あたりの罹患率は2.6)、Newport(1.6)、およびTyphimurium(1.5)の3種類で、2015〜2017年の血清型分布と類似していた。2018年に血清群の検査が行われたSTEC分離株1,570株のうち、440株(28%)がO157血清群と特定された。O157以外の血清群が特定されたSTEC分離株(non-O157 STEC)662株では、O103(31%)、O26(28%)、およびO111(24%)が最も多く見られた。2018年は、O157およびnon-O157のどちらも2015〜2017年と比較して罹患率に変化は見られなかった。

 FoodNetは、2017年の下痢症後の溶血性尿毒症症候群(HUS)小児患者として54人(人口10万人あたりの罹患率は0.49)を特定し、このうちの36人(67%)が5歳未満であった(人口10万人あたりの罹患率は1.22)。2017年の罹患率は、2014〜2016年と比較して、小児全体および5歳未満の双方において有意な差は見られなかった。

表:細菌・寄生虫感染の患者数、入院患者数、死亡者数、罹患率、および2015〜2017年の平均と比較した時の罹患率の変動%(病原体別、CDC FoodNet米国内10カ所のサイト*、2018年

* 3州(カリフォルニア、コロラド、ニューヨーク)の一部の郡と7州(コネティカット、ジョージア、メリーランド、ミネソタ、ニューメキシコ、オレゴン、テネシー)の計10カ所
暫定データ
§ 人口10万人あたりの罹患率
** 培養非依存的診断検査(CIDT)では血清群の特定はできないためすべての血清群が含まれる。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部