欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
https://www.efsa.europa.eu/en


欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書(2017年)
The European Union summary report on trends and sources of zoonoses, zoonotic agents and food-borne outbreaks in 2017
12 December 2018
https://efsa.onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.2903/j.efsa.2018.5500 (報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/5500

(食品安全情報2019年2号(2019/01/23)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)による本報告書は、欧州の37カ国(欧州連合(EU)加盟28カ国および非加盟9カ国)により2017年に実施された人獣共通感染症モニタリングの結果を記載したものである。

 最も多く報告された人獣共通感染症はカンピロバクター症であったが、EUにおいて2008年以降にみられた確定患者数の増加傾向は2013〜2017年には顕著ではなかった。

 EUにおいてサルモネラ症確定患者数は2008年以降減少傾向にあったが、この傾向は2013〜2017年に終了した。また、サルモネラ症確定患者に占めるSalmonella Enteritidis感染患者の割合が上昇したが、これは主に加盟1カ国が血清型に関するデータの報告を開始したことによる。加盟16カ国が家禽類でのサルモネラ低減目標のすべてを達成したが、加盟12カ国は少なくとも1つの目標を達成できなかった。繁殖鶏、産卵鶏、ブロイラーおよび肥育七面鳥での標的サルモネラ血清型の群汚染率はEUレベルで2016年と比べ低下または安定的であったが、繁殖七面鳥ではやや上昇した。ブタとたいのサルモネラ汚染率および家禽類での標的サルモネラ血清型汚染率は、当局による結果の方が食品事業者による結果より概して高い傾向にあった。

 リステリアについては、そのまま喫食可能な(ready-to-eat)食品でEUの食品安全基準を超えることがほとんどなかったにもかかわらず、リステリア症患者の報告率は2017年にさらに上昇した。

 EUのエルシニア症確定患者数は2008年以降減少傾向にあったが、2013〜2017年はその傾向が顕著ではなかった。志賀毒素産生性大腸菌(STEC)感染確定患者数は前年と比べほぼ同レベルであった。

 食品由来(水由来を含む)アウトブレイクは計5,079件が報告された。病因物質としてはサルモネラが最も多く、アウトブレイク7件につき1件がS. Enteritidisによるものであり、以下、その他の細菌、細菌性毒素およびウイルスが続いた。全アウトブレイクのうち37.6%が病因物質不明であった。病因物質/食品の組み合わせでは、サルモネラと卵、サルモネラと食肉・食肉製品が最も高リスクであった。

 本報告書には、ウシ結核、ブルセラ症、トリヒナ症、エキノコックス症、トキソプラズマ症、狂犬病、Q熱、ウエストナイル熱、および野兎病についても患者発生の傾向と感染源の概要が記載されている。


2017年のEU域内の人獣共通感染症の概要

 本報告書に示された14種類の人獣共通感染症の確定患者数のデータが図1にまとめられている。2017年に報告された人獣共通感染症では、カンピロバクター症が全報告患者の約70%を占め、この傾向は2005年以降継続している。カンピロバクター症に続き、サルモネラ症、エルシニア症、STEC感染症などの細菌性疾患が高頻度に報告された。各疾患の重症度について、報告患者の入院率および転帰にもとづく分析が行われた(表1)。このデータによると、入院率および致死率の高さからリステリア症が最も重症度の高い人獣共通感染症で、ウエストナイル熱感染がこれに続いた。データが得られた両疾患の確定患者のほぼ全員が入院していた。当該情報が得られた確定患者のうち、リステリア症患者の7人に1人およびウエストナイル熱患者の9人に1人が死亡した。


図1:欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症の確定患者報告数および人口10万人あたりの報告率(2017年)

注)棒グラフ右端のカッコ内の数値が確定患者報告数
1 ウエストナイル熱は確定患者だけではなく全患者の報告数
2 先天性トキソプラズマ症の報告率は出生児10万人あたり


表1:人獣共通感染症確定患者の入院率および致死率(EU、2017年)

 a)ウエストナイル熱は確定患者だけではなく全患者の報告数
 b)すべてのEU加盟国が表中のすべての人獣共通感染症の入院患者数、死亡者数を報告したわけではない。
 c)NAは当該の情報が収集されなかったことを示す。


(関連記事)
人獣共通感染症:改善傾向が停滞
Zoonotic diseases: progress has stalled
12 December 2018
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/181212 (EFSAサイト)
https://www.ecdc.europa.eu/en/news-events/zoonotic-diseases-progress-has-stalled (ECDCサイト)



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部