欧州疾病予防管理センター(ECDC)からのカンピロバクター関連情報
https://www.ecdc.europa.eu/en


カンピロバクター症 − 2016年次疫学報告書
Campylobacteriosis - Annual Epidemiological Report for 2016
19 Dec 2018
https://ecdc.europa.eu/sites/portal/files/documents/AER_for_2016-campylobacteriosis.pdf(報告書PDF)
https://ecdc.europa.eu/en/publications-data/campylobacteriosis-annual-epidemiological-report-2016

(食品安全情報2019年5号(2019/03/06)収載)


 欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、「カンピロバクター症 − 2016年次疫学報告書」を発表した。

重要事項

  • カンピロバクター症は、欧州連合/欧州経済領域(EU/EEA)において非常に多く発生する胃腸疾患である。

  • 2016年はEU/EEA加盟29カ国がカンピロバクター症確定患者を計248,752人報告した。

  • 2016年のEU/EEA全体での人口10万人あたりの報告率は66.0であった。

  • カンピロバクター症患者は、5歳未満の小児で他の年齢グループと比較してより高頻度に発生していた。

  • カンピロバクター症には明確な季節性があり、患者数に関して、夏季に大きなピーク、1月に小さなピークがみられる。

方法

 本報告書は、2018年3月15日に欧州サーベイランスシステム(TESSy)を検索して得られた2016年のデータにもとづいている。TESSyは、感染症に関するデータの収集、分析および発信を行うためのシステムである。

 本報告書の作成に用いられた方法の詳細、各国のサーベイランスシステムの概要および本報告書に使用されたデータのサブセットについては、下記の各URLから入手可能。
https://ecdc.europa.eu/en/annual-epidemiological-reports/methods(方法の詳細)
https://ecdc.europa.eu/en/publications-data/surveillance-systems-overview-2016(各国のサーベイランスシステムの概要)
(使用されたデータのサブセット)(使用されたデータのサブセット)

 2016年はEU/EEA加盟29カ国がカンピロバクター症に関するデータを報告した。このうち24カ国は、EUの2012年の症例定義を用いてカンピロバクター症患者を報告した。デンマーク、フランス、ドイツおよびイタリアは「その他(other)」に分類される症例定義を使用し、フィンランドは使用した症例定義が不明であった。

 23カ国が義務的報告のシステムを有しており、ベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルクおよびオランダは任意報告システムで、英国は自国のサーベイランスシステムを「その他」としている。

 25カ国が包括的サーベイランスで、イタリアおよびオランダは定点サーベイランスであり、ベルギーおよびスペインはサーベイランスの対象範囲設定を「その他」と報告した。


疫学的状況

 2016年はEU/EEA加盟29カ国がカンピロバクター症確定患者を計248,752人報告した(表)。2012年から2016年まで、チェコ、ドイツおよび英国の3カ国が最も多い年間患者数を報告した。2016年には、チェコ、ドイツ、スペインおよび英国の確定患者数の合計が全確定患者数の69.8%を占めた。EU/EEA全体での人口10万人あたりの報告率は66.0(範囲は2.0〜228.2)で、それまでの年と同程度であり、2015年より5.3%上昇した(表)。2012年から2016年にかけてドイツの報告率は15%上昇し、英国では21%低下した。2016年に報告率が最も高かった国はチェコ、スロバキアおよびスウェーデンであった(表、図1)。逆に最も低かった国はブルガリア、キプロス、ラトビア、ポーランド、ポルトガルおよびルーマニアであった。2015年と比較すると、報告率は20カ国で上昇、7カ国で低下した。

 転帰については、確定患者の75.9%で報告された。2016年、カンピロバクター症による死亡者は62人報告され、2015年の60人と同程度であった。確定患者の死亡者のうち、76.4%が65歳以上であった。

表:カンピロバクター症確定患者数の国別分布(EU/EEA、2012〜2016年)

情報源:各国の報告書
ASR:年齢標準化報告率
・:データの報告なし
−:報告率未計算


図1:カンピロバクター症確定患者の人口10万人あたり報告率の国別分布(EU/EEA、2016年)

(情報源:オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スウェーデン、英国)


 報告されたカンピロバクター症確定患者数には前年までと同様に明確な季節性がみられ、大多数の患者が6〜8月に報告された(図3)。2012〜2016年には1月にも小さなピークがみられた(図2)。2012年から2016年の間、年間患者数の傾向分析により統計学的に有意な増加および減少は認められなかった。

図2:カンピロバクター症確定患者数の月別分布(EU/EEA、2012〜2016年)

(情報源:オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、英国)


図3:カンピロバクター症確定患者数の月別分布(EU/EEA、2012〜2015年の平均および2016年)

(情報源:オーストリア、ベルギー、ブルガリア、クロアチア、キプロス、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、イタリア、ラトビア、リトアニア、ルクセンブルク、マルタ、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、英国)


 2016年、年齢情報が得られた確定患者248,382人において、5歳未満の小児が13.4%を占めた。この年齢グループの人口10万人あたりの報告率は144.4であった(国別では12.7〜1,091.3)。6つの年齢グループのうち5グループにおいて男性の報告率が女性より高かった(図4)。全体での男女比は1.2:1であった。

図4:カンピロバクター症確定患者の人口10万人あたり報告率の年齢グループ別・性別分布(EU/EEA、2016年)


アウトブレイクおよびその他の脅威

 2016年にはカンピロバクター症に関連する脅威は報告されなかった。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部