(食品安全情報2017年9号(2017/04/26)収載)
英国のサーベイランス機関による最新データは、2016年にカンピロバクター症検査機関報告患者数が17%減少したことを示している。
英国食品基準庁(UK FSA)は、鶏肉のカンピロバクター汚染を減らす努力によってカンピロバクター症患者数がどの程度減少するかを推定するために、検査機関報告患者数とその他の因子とを併せて使用している。当該モデルにもとづくと、カンピロバクター症患者数は全体で100,000人減少したと推定される。この数値は、FSA理事会が承認した患者数減少目標を満たしている。この減少目標の達成は、経済的な観点では、病欠日数の減少や国営医療サービス(NHS)の費用抑制に関連して1,300万ポンド以上の節約に繋がると推定される。
小売店で購入した生鮮丸鶏のカンピロバクター汚染に関する3年目の調査の最初の結果に示されるように、鶏肉のカンピロバクター汚染レベルは引き続き低下している(下記URL参照)。
https://admin.food.gov.uk/sites/default/files/campy-survey-report-aug-dec-2016.pdf
3年目の小売店調査の最初の5カ月間(2016年8〜12月)の結果から以下のことが明らかになった。
大きな市場シェアを持つ小売チェーン上位9社(合計すると鶏肉の売り上げの80%以上を占める)のそれぞれの結果は、下表に示した通りである(小規模小売業者を含む“Others”カテゴリーの結果も示す)。9社全体では、最高レベルのカンピロバクターに汚染された鶏肉検体の割合は5%であった。主要な小売チェーンに鶏肉を供給している比較的大規模な鶏肉加工施設において、食鳥処理時に最も重度に汚染された鶏肉が10%を超えないという業界の目標に沿った改善がみられる。しかしながら、業界全体ではまだこの目標を達成していない。その理由の1つとして、小規模な個人経営の施設(小規模の小売業者に製品を供給する傾向がある)では同様の改善がまだみられていないことがあげられる。
菌数レベルを問わずカンピロバクター陽性であった鶏肉検体の割合は56%で、2015年の66%および2014年の78%より低下した。この数値には、病気を引き起こさない程度の非常に少量のカンピロバクターが検出された検体も含まれている。
FSAは、食鳥処理場で鶏肉検体のカンピロバクター汚染をモニターする際に使用する方法を現行の方法から変更する予定である。この変更により小売店調査が影響を受けることはない。小売店調査の結果は今後も公表され、これにより大規模加工施設や小売チェーンが評価される予定である。顕著な改善が見られていない鶏肉加工施設(多くは中小規模の家禽加工施設)に焦点を当てるために、FSAは特定の施設に絞って立ち入り検査を行うなどの計画を立案中である。
下図は、2014年から2016年にわたり、最高レベル(>1,000 cfu/g)のカンピロバクターに汚染された鶏肉検体の割合の低下に一致してカンピロバクター症検査機関報告患者数が減少していることを示している。
小売店調査:小売チェーン別の結果の概要(下表)
FSAは、小売チェーン別のデータは慎重に解釈しなくてはならないと助言している。各小売チェーンおよび「その他(Others)」のカテゴリーについて信頼区間がカッコ内に示されている。信頼区間は、採取された検体数に応じて、可能性のある真の陽性率の値の範囲を示している。95%信頼区間とは、真の陽性率の値が95%の確率で信頼限界の上限と下限の間に収まることが期待できることを意味する。
* : 「その他(Others)」のカテゴリーには、Kantar社による2015年2月1日までの52週間のデータから市場シェアが小さいと判断されたスーパーマーケットなどが含まれる。たとえば、Iceland社、コンビニエンスストア、個人商店、食肉店など。
(食品安全情報(微生物)No.18 / 2016 (2016.08.31) UK FSA記事参照)