米国食品医薬品局(US FDA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.fda.gov/


米国食品医薬品局(US FDA)が2015年の全米抗菌剤耐性モニタリングシステム(NARMS)総合報告書を発表 − 公衆衛生保護のため米国疾病予防管理センター(US CDC)および米国農務省(USDA)と協力し抗菌剤耐性パターンを監視
FDA Releases 2015 NARMS Integrated Report
Partnership with CDC and USDA tracks antimicrobial resistance patterns to protect public health
October 23, 2017
https://www.fda.gov/AnimalVeterinary/NewsEvents/CVMUpdates/ucm581433.htm

2015年度NARMS総合報告書(2015 NARMS Integrated Report)
https://www.fda.gov/downloads/AnimalVeterinary/SafetyHealth/AntimicrobialResistance/NationalAntimicrobialResistanceMonitoringSystem/UCM581468.pdf (報告書PDF)
https://www.fda.gov/AnimalVeterinary/SafetyHealth/AntimicrobialResistance/NationalAntimicrobialResistanceMonitoringSystem/ucm059103.htm

(食品安全情報2017年24号(2017/11/22)収載)


 米国食品医薬品局(US FDA)は、全米抗菌剤耐性モニタリングシステム(NARMS)の協力機関である米国疾病予防管理センター(US CDC)および米国農務省食品安全検査局(USDA FSIS)と共同で、2015年のNARMS総合報告書を発表した。この年次報告書は、ヒト(CDCが担当)、小売生肉(FDAが担当)、および家畜とたい(USDAが担当)から分離された細菌株の抗菌剤耐性パターンに焦点を当てている。また、すべてのサルモネラ分離株および一部のカンピロバクター分離株について耐性遺伝子の全ゲノムシークエンシング(WGS)に由来する情報も提供している。本報告書には、抗生物質耐性およびそれに関連する遺伝子の動向を調べることができる対話型データツール「NARMS Now」が付属している。大多数のヒト由来株では全体的に耐性レベルが低く保たれており、一部の重要な領域においては耐性レベルの目に見える改善が示されているが、NARMSはいくつかの懸念すべき領域について注意深い監視を続けている。

 NARMSは、ヒトおよび動物用抗生物質の有効性維持に向けて公衆衛生当局がデータにもとづく決定を行う際にこれを支援するため、食品由来細菌の抗生物質耐性をモニターしている。支援の例として、NARMSのデータは動物用の安全かつ有効な新しい抗菌剤をFDAが認可する際に参考となり、また、食品由来疾患アウトブレイクのCDCおよびUSDAによる調査に役立っている。NARMSのデータはまた、FDAによる業界向けガイダンス#213(Guidance for Industry #213)、および対抗生物質耐性菌全米行動計画(National Action Plan for Combating Antibiotic-Resistant Bacteria、下記サイト)での農業目標の有効性評価において極めて重要である。
https://www.cdc.gov/drugresistance/pdf/national_action_plan_for_combating_antibotic-resistant_bacteria.pdf

 消費者は、食品安全のための基本4項目である、「清潔を保つ」、「食品を分ける」、「加熱する」、「冷やす」に従うことにより、抗生物質耐性菌などの食品由来細菌から身を守ることができる(詳細情報はhttp://www.foodsafety.gov/keep/basics/から入手可能)。


得られた主な知見

 2015年NARMS総合報告書に示された主な知見は以下の通りである。

  1. ヒト由来サルモネラ分離株の76%は試験した14種類の抗菌剤のいずれにも耐性を示さなかった。
  2. ヒト由来サルモネラ分離株の多剤耐性率(MDR)は9%から12%に上昇した。これは主に、血清型がI 4,[5],12:i:-のサルモネラでアンピシリン、ストレプトマイシン、スルホンアミドおよびテトラサイクリンに同時に耐性を示す株の増加によるものである。
  3. セフトリアキソン耐性率は、危害分析重要管理点方式(HACCP)プログラムで採取された七面鳥肉由来検体を除くすべての起源の非チフス性サルモネラ株において、低下傾向または低レベルが持続した。この七面鳥肉由来検体の2015年の耐性率は15.7%で2010年と同レベルであった。
  4. サルモネラ分離株でアジスロマイシン耐性が稀に見られ、一部の株ではその他の抗生物質への同時耐性が認められた。
  5. カンピロバクター(Campylobacter coli)分離株でのエリスロマイシン耐性率は2011〜2015年に、ヒト由来株で2.7%から12.7%へ、鶏とたい由来株で3.4%から12.8%へと上昇した。
  6. サルモネラでの伝達性キノロン耐性が今後増加する可能性がある。潜在的な耐性形質が可動性遺伝因子に担われており、このため、単独でまたはその他の耐性遺伝子とともにサルモネラの感受性株に共有される可能性がある。
  7. 小売七面鳥ひき肉由来サルモネラ分離株における1種類以上の抗菌剤への耐性率は、2014年から2015年に73%から57%に低下した。過去のデータでは、七面鳥肉由来分離株の大多数が1種類以上の抗菌剤に耐性を示している。


国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部