欧州疾病予防管理センター(ECDC)・欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
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欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書(2015年)
The European Union summary report on trends and sources of zoonoses, zoonotic agents and food-borne outbreaks in 2015
EFSA Journal 2016;14(12):4634
Published: 16 December 2016
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.2903/j.efsa.2016.4634/epdf (報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4634
http://ecdc.europa.eu/en/publications/Publications/EU-summary-report-trends-sources-zoonoses-2015.pdf (ECDCサイト:報告書PDF)
http://ecdc.europa.eu/en/publications/_layouts/forms/Publication_DispForm.aspx?List=4f55ad51-4aed-4d32-b960-af70113dbb90&ID=1615 (ECDCサイト)

(食品安全情報2017年4号(2017/02/15)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)による本報告書は、欧州の32カ国(欧州連合(EU)加盟28国および非加盟4カ国)が2015年に実施した人獣共通感染症モニタリングの結果を記載したものである。

 EU域内で最も多く報告された人獣共通感染症はカンピロバクター症で(図1および表)、2008年以降、確定患者数の増加傾向が続いている。食品では依然としてブロイラー肉でカンピロバクター汚染率が高かった。サルモネラ症はEU域内で確定患者数が2008年以降減少しているが、血清型別ではSalmonella Enteritidisの感染患者の割合が上昇している。ほとんどの加盟国が家禽類でのサルモネラ汚染低減目標を達成した。家禽ではS. Enteritidis分離株の報告数が増えたが、最も多く検出された血清型はS. Infantisであった。食品では、家禽肉のひき肉・加工製品のサルモネラ基準違反例はEU全体で低レベルであった。リステリア症患者数は2008年以降大幅に増加しているが、2015年はあまり変化がなかった。そのまま喫食可能な(RTE)食品で、EUの食品安全基準を超えたリステリア(Listeria monocytogenes)汚染はほとんどみられなかった。エルシニア症の確定患者数はEU全体での2008年以降の減少傾向が継続した。エルシニア検査陽性結果は主に豚肉・豚肉製品で報告された。志賀毒素産生性大腸菌(STEC)感染確定患者数は2014年と同程度であった。食品では、STECは反芻動物の食肉から最も多く報告された。

 食品由来(水由来を含む)アウトブレイクとして計4,362件が報告された。病因物質としては細菌が最も多く、次いで細菌性毒素、ウイルス、その他の病因物質、寄生虫であった(図2)。全アウトブレイクの33.5%については病因物質が不明であった。2014年までと同様、病因物質/食品の組み合わせでは、サルモネラと卵の組み合わせが最も高リスクであった。

 本報告書はさらに、ウシ結核菌による結核、ブルセラ症、トリヒナ症、エキノコックス症、トキソプラズマ症、狂犬病、Q熱(Coxiella burnetii)、ウエストナイル熱および野兎病の発生の動向と感染源についてまとめている。


図1:欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症の確定患者報告数および人口10万人あたりの報告率(2015年)

(各感染症のグラフの右側カッコ内に示されている数値がそれぞれの確定患者報告数である。但し、ウエストナイル熱については全患者報告数が示されている。)


表:人獣共通感染症確定患者の入院率および致死率(EU、2015年)

 a)ウエストナイル熱の場合は確定患者数ではなく全患者数が示されている。
 b)すべての国がすべての人獣共通感染症について調査しているわけではない。
 c)NAは当該の情報が収集されなかったことを示す。


食品由来アウトブレイク

 2015年はEU加盟26カ国が食品由来(水由来を含む)アウトブレイク計4,362件を報告した。これらのアウトブレイクで報告された患者数は45,874人(2014年より209人増加)、入院患者数は3,892人(2014年より2,546人減少)、死亡者数は17人(2014年より10人減少)であった。また、EU非加盟の2カ国が食品由来アウトブレイク計50件と、これに関連する患者1,853人および入院患者7人を報告した。EU域内の食品由来アウトブレイク報告率は人口100,000人あたり0.95件で、2014年に比べてわずかに低下した。

 2015年に報告されたアウトブレイクの病因物質としては細菌が最も多く(全アウトブレイクの33.7%)、特にサルモネラ(21.8%)およびカンピロバクター(8.9%)が多かったが、これらを病因物質とするアウトブレイクの報告件数はここ数年減少している。病因物質の第2位は細菌性毒素で全アウトブレイクの19.5%を占め、一方、2014年に病因物質として最も多く報告されたウイルスは2015年は9.2%のアウトブレイクで報告された。寄生虫および「その他の病因物質(ヒスタミンを含む)」は、それぞれ3%未満のアウトブレイクで報告された。細菌性毒素および「その他の病因物質」によるアウトブレイクの大部分(それぞれ87.2%、81.1%)は1加盟国からの報告であることに注意する必要がある。このためこれらのデータはEUを代表するものとは考えられず、各データの解釈は慎重に行うべきである。また、報告されたアウトブレイクの約1/3(34%)は病因物質が不明である。2015年にEU加盟国により報告された食品および水由来アウトブレイクの病因物質別の分布が図2に示されている。

 2015年に報告された食品由来アウトブレイクのうち、422件(9.7%)については疑いのある原因食品との関連が強いエビデンスにより支持されていた。原因食品はほとんどが動物由来で、特に卵・卵製品と豚肉(それぞれ、強いエビデンスがあるアウトブレイクの10%を占める)が多く、次いでブロイラー肉(9%)、チーズ(8%)、魚・魚製品(7%)、乳・乳製品(5%)、牛肉(4%)および甲殻類(3%)であった。サルモネラに汚染された卵が依然として公衆衛生上の問題であることが示された。2015年の食品由来アウトブレイクを食品と病因物質の組み合わせ別でみると、卵とサルモネラの組み合わせが最も多くの件数のアウトブレイクに関連しており、延べ患者数および入院患者数でも上位5位に入った。しかし、卵・卵製品の喫食に関連したサルモネラ感染アウトブレイクの件数は、過去5年間に減少している。

 2015年は、強いエビデンスがあるアウトブレイク409件について曝露場所に関する情報が加盟国から得られた。曝露場所としては家庭が圧倒的に多かった。強いエビデンスがある食品由来アウトブレイクの場合、家庭ではサルモネラが病因物質として最も多かったが、公共の場所(学生食堂、社員食堂、レストラン、パブなど)ではボツリヌス毒素以外の細菌性毒素、カリシウイルス、その他の病因物質が多かった。


図2:病因物質別の食品および水由来アウトブレイク件数(EU加盟国、2015年)

(図2の説明:その他の細菌には野兎病菌、赤痢菌、志賀毒素産生性大腸菌以外の病原性大腸菌などが含まれる。ボツリヌス毒素以外の細菌性毒素には、バチルス属、ボツリヌス菌以外のクロストリジウム属、ブドウ球菌属などの細菌が産生する毒素が含まれる。カリシウイルスおよびA型肝炎ウイルス以外のウイルスには、アデノウイルス、フラビウイルス、ロタウイルスなどが含まれる。「その他の病因物質」には、化学物質、ヒスタミン、海産毒、キノコ毒およびスコンブロトキシンが含まれる。トリヒナ、クリプトスポリジウムおよびアニサキス以外の寄生虫には、ジアルジアなどの寄生虫が含まれる。)


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国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部