(食品安全情報2017年3号(2017/02/01)収載)
欧州疾病予防管理センター(ECDC)の感染症年次報告書によると、欧州連合(EU)/ 欧州経済領域(EEA)内で2014年に最も多く報告された届出義務感染症は、クラミジア感染症、カンピロバクター症、サルモネラ症、淋病、および結核であった。これらの疾患による患者は85万人以上で、すべての感染症による患者110万人の75%を占めていた。結核、HIV/AIDS、侵襲性肺炎球菌疾患、レジオネラ症およびリステリア症により合計で6,700人以上の死亡者が報告された。多剤耐性、および、カルバペネムや欧州の一部地域でみられるポリミキシンなどの最終選択薬への耐性を含む抗菌剤耐性は、グラム陰性細菌で増加が続いている。
感染症年次報告書は、今回からウェブページとして発表されることになった。報告書は、ECDCのサーベイランスにもとづき疾患別およびテーマ別に章立てされており、ECDCの感染症サーベイランスアトラス(http://atlas.ecdc.europa.eu/public/index.aspx?Instance=GeneralAtlas)との併用により、各章から簡潔な疫学的概要およびダウンロード可能なマップ、表、グラフなどを得ることができる。
食品および水由来疾患
EU/EEA強化サーベイランス対象の主要な7種類の食品・水由来疾患のうち、カンピロバクター症とエルシニア症については2010〜2014年の報告率に明確な傾向はみられなかった。
より重症化する可能性があるリステリア症と志賀毒素産生性大腸菌(STEC)感染症は、報告件数に増加傾向がみられた。EU/EEAでのリステリア症サーベイランスは、高齢者でより頻度高くみられる重症患者に重点が置かれている。従って、リステリア症の報告件数の増加は、多くの加盟国で人口の高齢化が進んでいることを部分的に反映している可能性がある。STECサーベイランスでは、2011年に発生した大規模アウトブレイク(患者は主にドイツで発生)を受けて臨床機関および検査機関の認識が向上したこと、および、PCR法を用いた診断法の利用が増加したことが報告件数の増加に働いた可能性が高い。
EU/EEA強化サーベイランスが対象とする残りの3疾患は非チフス性サルモネラ症、腸チフス/パラチフス、赤痢で、これらの報告件数は減少傾向を示した。これは、家禽業界によるサルモネラコントロールプログラムの実施、個人の衛生管理の改善、さらに腸チフス/パラチフスおよび赤痢に関しては旅行パターンの変化による可能性が高い。
冷凍ミックスベリーの喫食に関連し、2013年に最初に発生して複数のEU/EEA加盟国から患者が報告されたA型肝炎の大規模アウトブレイクでは、2014年になっても患者の発生が続いた。またレジオネラ症は2011年以降、患者数の増加傾向が続いており、2014年には患者報告率が今までの最高を記録した。これはリスボン近郊で発生した大規模アウトブレイクにより部分的に説明可能である。