(食品安全情報2017年21号(2017/10/11)収載)
オハイオ州をはじめとする複数州の保健局、米国疾病予防管理センター(US CDC)および米国農務省動植物衛生検査局(USDA APHIS)は、全国的なペット店チェーンであるペットランド(Petland)で販売された子犬に関連して複数州にわたり発生しているカンピロバクター感染アウトブレイクを調査している。
2017年9月11日以降、新たにアウトブレイク患者16人が報告された。直近の患者の発症日は9月12日である。
10月3日までに、本アウトブレイクに関連して、検査機関確定患者およびカンピロバクター症に一致する症状を呈した患者が12州(フロリダ、カンザス、メリーランド、ミズーリ、ニューハンプシャー、ニューヨーク、オハイオ、ペンシルバニア、テネシー、ユタ、ウィスコンシン、ワイオミング)から計55人報告されている(図)。詳細は以下の通りである。
患者の年齢範囲は1歳未満〜86歳、年齢中央値は23歳で、38人(69%)が女性である。13人(24%)が入院した。死亡者は報告されていない。
疫学調査および検査機関での検査結果は、ペットランドの店舗で販売された子犬が本アウトブレイクの感染源である可能性が高いことを示している。ペットランドは、本アウトブレイクに対処するため公衆衛生および動物衛生当局に協力している。
全ゲノムシークエンシング(WGS)解析の結果は、ペットランドから購入した子犬の便検体と複数州の患者の便検体に由来するカンピロバクター分離株が相互に近縁であることを示している。
本アウトブレイクの患者および感染した子犬由来の臨床分離株は、通常推奨される第一選択の抗生物質に耐性であると考えられる。すなわち、本アウトブレイク株の感染患者は、カンピロバクター症の治療に通常処方される経口抗生物質から十分な効果を得られない可能性がある。CDCの全米抗菌剤耐性モニタリングシステム(NARMS)チームは、抗生物質耐性関連の遺伝子を探索するため、本アウトブレイク患者7人および感染した子犬6匹の便検体から分離されたカンピロバクター株のWGSデータを解析した。13株すべてが、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ナリジクス酸およびテリスロマイシンに耐性で9株がゲンタマイシンに耐性、12株がテトラサイクリンに耐性であると考えられる。WGSデータによって予測される抗生物質耐性は、カンピロバクターに対する従来の方法による抗生物質耐性試験の結果と概して一致することが知られている。NARMSは、患者1人から分離された1株について従来法による抗生物質耐性試験を行った。その結果は、WGS解析による予測と同じで、アジスロマイシン、シプロフロキサシン、クリンダマイシン、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ナリジクス酸、テリスロマイシンおよびテトラサイクリンに耐性であった。
カンピロバクターは、犬の糞との接触により伝播し得る。通常、ヒト−ヒト感染は起こらないが、感染者のおむつの交換、または感染者との性的接触などの行為によって感染することがある。
由来に関係なく、子犬および成犬はカンピロバクターを保有している可能性がある。感染予防のための助言が以下から入手可能である。
ペット所有者への助言
https://www.cdc.gov/campylobacter/outbreaks/puppies-9-17/index.html#petowners
ペット店従業員への助言
https://www.cdc.gov/campylobacter/outbreaks/puppies-9-17/index.html#petstore
本調査は継続中である。