(食品安全情報2016年5号(2016/03/02)収載)
最近発表された欧州の人獣共通感染症細菌における抗菌剤耐性に関する報告書によると、ヒト・食品・動物由来の細菌は、広範に使用されている多くの抗菌剤への耐性を引き続き示すことが明らかになった。科学者は、ヒトの感染症治療に極めて重要な抗菌剤であるシプロフロキサシンへの耐性率がカンピロバクターで非常に高いことから、重症の食品由来感染症の効果的な治療法の選択肢が狭められると警告している。多剤耐性サルモネラ菌も欧州全域に拡大し続けている。
欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)が発表したこの欧州連合(EU)2014年次報告書の結果から、抗菌剤耐性はヒトおよび動物の健康に重大なリスクをもたらしていることが再び強調された。このリスクは、欧州委員会(EC)によって食品安全に関する政策課題の主要な優先事項とされている。
得られた重要な知見
○カンピロバクター
カンピロバクター症はEU域内で最も多く報告される食品由来疾患である。
ヒトおよび家禽由来のカンピロバクターにおいて、シプロフロキサシンなどの広範に使用される抗菌剤に対する耐性が高頻度に検出された。シプロフロキサシン耐性率はブロイラー由来では高レベル〜極めて高レベル(69.8%)であり、ヒト由来でも同様(60.2%)であった。ブロイラー由来ではナリジクス酸およびテトラサイクリンへの耐性率も高レベル〜極めて高レベルであった。
○サルモネラ
サルモネラ症はEU域内で2番目に多く報告される食品由来疾患である。
広範に使用される抗菌剤に対する耐性が、ヒト由来(テトラサイクリン耐性率30%、スルホンアミド耐性率28.2%、アンピシリン耐性率28.2%)および家禽由来のサルモネラで一般的に認められた。
多剤耐性率はヒト由来(26%)、ブロイラー肉由来(24.8%)および七面鳥肉由来(30.5%)で高かった。サルモネラの血清型KentuckyおよびInfantisは、シプロフロキサシン耐性率および多剤耐性率が高いため特に懸念される血清型である。
基質特異性拡張型βラクタマーゼ(ESBL)産生菌は家禽由来のサルモネラにおいて低頻度で認められた。しかしながら、ESBL産生性で多剤耐性のサルモネラ血清型Infantisクローン株がヒトおよび家禽で報告されている。カルバペネマーゼ産生性のサルモネラは家禽および家禽肉製品から検出されなかった。
背景
欧州連合(EU)域内のヒト、動物および食品由来の人獣共通感染症細菌と指標細菌の抗菌剤耐性に関する年次要約報告書(2014年)
The European Union summary report on antimicrobial resistance in zoonotic and indicator bacteria from humans, animals and food in 2014
EFSA Journal 2016;14(2):4380
11 February 2016
http://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/scientific_output/files/main_documents/4380.pdf (報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4380
(ECDC関連記事)
Antimicrobial resistance on the rise in the European Union, ECDC and EFSA warn
11 Feb 2016
https://ecdc.europa.eu/en/news-events/antimicrobial-resistance-rise-european-union-efsa-and-ecdc-warn