欧州食品安全機関(EFSA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.efsa.europa.eu/


欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症、その病原体および食品由来疾患アウトブレイクの傾向と感染源に関する年次要約報告書(2014年)
The European Union summary report on trends and sources of zoonoses, zoonotic agents and food-borne outbreaks in 2014
EFSA Journal 2015;13(12):4329
Published: 17 December 2015
http://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/scientific_output/files/main_documents/4329.pdf (報告書PDF)
http://www.efsa.europa.eu/en/efsajournal/pub/4329

(食品安全情報2016年4号(2016/02/17)収載)


 欧州食品安全機関(EFSA)および欧州疾病予防管理センター(ECDC)は、欧州連合(EU)加盟28国および非加盟4カ国で2014年に実施された人獣共通感染症モニタリングの結果を記載した報告書を発表した。

 EU域内で最も多く報告された人獣共通感染症はカンピロバクター症で(図1および表1)、2008年以降、確定患者数の増加がみられている。食品では依然としてブロイラー肉でカンピロバクター汚染率が高かった。

 サルモネラ症は確定患者数がEU域内で2008年以降減少しており、その傾向が2014年も持続した。血清型別では、2014年はSalmonella Enteritidisの報告患者数が増加し、S. Stanleyの報告患者数は、2013年と同様、アウトブレイクが発生した2011〜2012年より前の時期に比べて多かった。大多数の加盟国は家禽類でのサルモネラ汚染低減目標を達成したが、S. InfantisのEU全体での検出数は増加した。食品では、生鮮および加工家禽肉のサルモネラ基準違反例が、EU全体でそれぞれ「まれなレベル」および「低レベル」であった。

 リステリア症患者数は2008年以降増加しているが、2014年はさらに増加した。そのまま喫食可能な(RTE)食品では、EUの食品安全基準を超えたリステリア汚染はほとんどみられなかった。

 エルシニア症の確定患者数は、EU全体での2008年以降の減少傾向が持続した。エルシニア検査陽性結果は主に豚肉・豚肉製品で報告された。

 ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)感染の確定患者数は2013年に比べわずかに減少した。VTECは食品および動物からも報告された。

 2014年はEU域内で食品由来(水由来を含む)アウトブレイクが計5,251件報告された。これらのアウトブレイクで報告された患者数は45,665人、入院患者数は6,438人、死亡者数は27人であった。592件のアウトブレイクでヒト患者と原因食品との関連を裏付ける強いエビデンスが得られた。

 EUにおける食品由来アウトブレイクの病因物質としてはウイルスが最も多く報告され(全アウトブレイクの20.4%)、サルモネラによるアウトブレイクの件数(同20.0%)を上回った(図2)。細菌性毒素は全アウトブレイクの16.1%、カンピロバクターは同8.5%の病因であった。食品由来アウトブレイクの29.2%については病因物質が不明であった。EU域内のサルモネラアウトブレイクの年間総件数は2008〜2014年に44.4%減の顕著な減少傾向を示したが、ウイルスによるアウトブレイクは2011年(525件)以降2倍以上に増加し、2014年の報告件数(1,072件)は過去最多となった。2014年に報告された食品由来カンピロバクターアウトブレイクの件数は2013年よりわずかに増加した。

 2013年までと同様、強いエビデンスが得られたアウトブレイクで最も重要な原因食品は「卵・卵製品」で、次いで「複合食品」、「甲殻類・貝類・軟体動物およびそれらの製品」、および「野菜・野菜ジュース」であった。

 2014年は強いエビデンスが得られた水由来アウトブレイクがEU域内で12件報告された。これらのアウトブレイクでは5種類の異なる病原体(サルモネラ、カンピロバクター、VTEC、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium parvum)、ウェルシュ菌)が検出された。強いエビデンスが得られた水由来アウトブレイクのうち4件は病因物質が不明であった。

 本報告書はさらに、結核(ウシ結核菌)、ブルセラ症、トリヒナ症、エキノコックス症、トキソプラズマ症、狂犬病、Q熱(Coxiella burnetii)、ウエストナイル熱および野兎病の発生の動向とフードチェーン各段階での感染源について詳しくまとめている。


図1:欧州連合(EU)域内の人獣共通感染症の確定患者報告数および人口10万人あたりの報告率(2014年)

各疾患の棒の右側カッコ内に示されている数値がそれぞれの確定患者報告数である。ウエストナイル熱については患者報告数が示されている。


表1:人獣共通感染症確定患者の入院率および致死率(EU、2014年)

a)ウエストナイル熱の場合は確定患者数ではなく患者数が示されている。
b)すべての国がすべての疾患について調査しているわけではない。
c)NA(データなし)は当該の情報が得られなかったことを示す。


図2:病因物質別の食品由来疾患アウトブレイク件数(EU、2014年)

図2の説明:
食品由来ウイルスには、アデノウイルス、カリシウイルス、A型肝炎ウイルス(HAV)、フラビウイルス、ロタウイルスなどが含まれる。細菌性毒素には、バチルス、クロストリジウム、ブドウ球菌由来の毒素が含まれる。その他の病因物質には、化学物質、ヒスタミン、レクチン、海産毒、キノコ毒、ワックスエステル(魚由来)が含まれる。寄生虫は主にトリヒナであるが、クリプトスポリジウム、ジアルジア、アニサキスも含まれる。その他の細菌性病原体には、ブルセラ、リステリア、赤痢菌、腸炎ビブリオなどが含まれる。この図では、VTECアウトブレイクおよびVTEC以外の病原性大腸菌によるアウトブレイクが「病原性大腸菌(VTEC含む)」に分類されている。


(関連記事)

EFSA
Campylobacter and Listeria infections still rising in the EU - say EFSA and ECDC
17 December 2015
http://www.efsa.europa.eu/en/press/news/151217

ECDC
Increasing food-borne infections in the EU in 2014, show data from ECDC and EFSA in latest annual zoonoses report
16 December 2015
https://ecdc.europa.eu/en/news-events/increasing-food-borne-infections-eu-2014-show-data-ecdc-and-efsa-latest-annual-zoonoses



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部