ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)からのカンピロバクター関連情報
http://www.bfr.bund.de/


生乳(未殺菌乳)の喫飲に関するQ & A(抜粋)
Questions and Answers on the Consumption of Raw Milk
13 April 2016
http://www.bfr.bund.de/en/questions_and_answers_on_the_consumption_of_raw_milk-197312.html

(食品安全情報2016年10号(2016/05/11)収載)


 ドイツ連邦リスクアセスメント研究所(BfR)は生乳(未殺菌乳)の喫飲に関するQ & Aをまとめた。


自動販売機を介して販売される生乳に病原菌感染のリスクは存在するか?

 生乳の自動販売機は生乳を冷却下に保つことにより細菌の増殖を防いでいる。しかし、主に搾乳段階ですでに病原菌が動物から乳中に混入している可能性がある。冷却だけでは細菌数は減少しないため、感染リスクは依然として残る。

 最近、自動販売機を介した生乳販売に関連するカンピロバクター疾患アウトブレイクがしばしば報告されている。このような機械を介した生乳販売によって消費者行動が変化し、消費者が事前加熱なしで生乳をその場で直接喫飲する可能性がある。


消費者は生乳による食品由来感染症をどのように防ぐことができるか?

 生乳の喫飲による感染を予防できる唯一の方法は、喫飲前、またはホームメードヨーグルトなどの非加熱で喫食する食品に使用する前に生乳を煮沸することである。法律で、喫飲前に煮沸すべきであるということを消費者に告知せずに生乳を販売してはならないと規定されているのも、このことにもとづいている。この規定の適用が除外されるのは、認定生乳(certified raw milk)の販売許可取得のために特別な衛生要件を満たすことが義務付けられている特別監視対象酪農場である。


認定生乳は安全か?

 認定生乳は、厳格に管理された酪農場から出荷され小売店で入手できる包装容器入り生乳である。認定生乳は製造・取扱いおよび微生物検査に関して厳格な規則によって管理されている。包装容器には「生乳」と表示しなければならないが、喫飲前に煮沸すべきであるとの注意書きは必要ない。厳格な管理や微生物基準の遵守にもかかわらず、食品由来感染症の原因病原菌が認定生乳中に生残する可能性は排除できない。認定生乳による食品由来感染症発症の可能性は通常の酪農場由来の生乳より低いと推定すべきである。


非加熱で喫飲する場合、認定生乳はどのように保存すべきか?

 認定生乳は8℃を超える温度で保存してはならない。この情報および消費期限(use-by date)は包装容器に表示されなければならない。消費期限は、腐りやすい食品の消費可能な期限を示している。認定生乳の場合、消費期限は搾乳後96時間(4日)以内でなければならない。消費者は常に保存に関する指示を守るべきである。認定生乳は、低年齢小児などのリスクグループの人が喫飲する場合は事前に煮沸すべきである。


生乳の販売に関連する法的規制にはどんなものがあるか?

 非包装の生乳の販売は酪農場による直接販売だけが許可されている。非包装の生乳の社員食堂やレストランなどの地域社会の食品提供施設への販売は禁止されている。さらに、包装容器入りの生乳(認定生乳)は、地域の食品提供施設(食堂、病院の厨房、学校や保育施設)では煮沸済みでないと使用できない。生乳の販売施設には、消費者に生乳の安全な取扱いについて知らせるため、「生乳-飲む前に煮沸すること」という掲示を明確に視認できるよう表示しなければならない。


生乳をより安全なものにするために酪農家ができることは?

 生乳を消費者に直接販売する酪農家は、農場直送乳の販売にも微生物リスクがあることを認識すべきである。生乳はカンピロバクター、腸管出血性大腸菌(EHEC)、サルモネラなどの病原微生物に汚染されている可能性がある。したがって、農業経営者は以下の点に特に注意を払うべきである。

  • 飼育棟の衛生(敷き藁、飲料水)の最適化
  • 搾乳時の衛生規則の遵守
  • 搾乳機の設定の定期的な確認
  • 農場の認定生乳生産農場への転換、または販売施設での喫飲用の生乳は事前に加熱
 カンピロバクターを検出するために微生物検査を実施する場合は、検出効率を高めるため、BfRは乳自体ではなく搾乳フィルターを検査することを推奨している。糞便検体の病原微生物検査による乳用牛のモニタリングや、可能であれば自動販売機で販売される生乳用に非感染の乳用牛由来の乳を選択することも、消費者へのリスクを最小限に抑えることに貢献し得る。


(食品安全情報(微生物)本号BfR記事参照)



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部