Morbidity and Mortality Weekly Report(CDC MMWR)からのカンピロバクター関連情報
http://www.cdc.gov/mmwr/


主に食品を介して伝播する病原体による感染症の暫定罹患率と動向 − 食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)の米国内10カ所のサイトでのデータ(2006〜2014年)
Preliminary Incidence and Trends of Infection with Pathogens Transmitted Commonly Through Food - Foodborne Diseases Active Surveillance Network, 10 U.S. Sites, 2006-2014
Morbidity and Mortality Weekly Report (MMWR) Vol. 64, No. 18, 495-499
May 15, 2015
http://www.cdc.gov/mmwr/pdf/wk/mm6418.pdf
http://www.cdc.gov/mmwr/preview/mmwrhtml/mm6418a4.htm?s_cid=mm6418a4_w

(食品安全情報2015年16号(2015/08/05)収載)


要旨

 本報告は、主に食品由来の9種類の病原体による感染症について、食品由来疾患アクティブサーベイランスネットワーク(FoodNet)が収集した2014年の暫定データをまとめ、2006〜2008年および2011〜2013年のデータと比較した場合の罹患率の動向を記載している。FoodNetによれば、2014年には合計で感染症例19,542人、入院患者4,445人および死亡者71人が発生した。2014年の罹患率を2006〜2008年と比較すると、志賀毒素産生性大腸菌(STEC)O157およびSalmonella Typhimurium感染では低下し、カンピロバクター、ビブリオ、S. InfantisおよびS. Javiana感染では上昇していた。2011〜2013年の罹患率との比較では、STEC O157およびS. Typhimurium感染では低下し、O157以外のSTEC(STEC non-O157)およびS. Infantis感染では上昇していた。現行の食品安全対策にもかかわらず、多くの感染症の罹患率が依然として高いことから、食品の安全性を向上させ米国の健康目標を達成するためには、さらなる予防策が必要である。


背景

 FoodNetは、カンピロバクター、クリプトスポリジウム、サイクロスポラ、リステリア、サルモネラ、STEC、赤痢菌、ビブリオおよびエルシニア感染の検査機関確定症例について、合わせて米国全人口の約15%(2013年の場合、約4,800万人)をカバーする10カ所の国内サイトで住民ベースのアクティブサーベイランスを実施している。


結果

 感染症例数、罹患率および動向

 2014年は、FoodNetにより感染症例19,542人、入院患者4,445人および死亡者71人が確認された(表)。感染症例数の病原体ごとの内訳(感染症例数、人口10万人・年あたりの罹患率)は、サルモネラ(7,452人、15.45)、カンピロバクター(6,486人、13.45)、赤痢菌(2,801人、5.81)、クリプトスポリジウム(1,175人、2.44)、STEC non-O157(690人、1.43)、STEC O157(445人、0.92)、ビブリオ(216人、0.45)、エルシニア(133人、0.28)、リステリア(118人、0.24)、およびサイクロスポラ(26人、0.05)であった。アウトブレイクに含まれる症例の割合(%)は、STEC O157(16%)、リステリア(11%)、STEC non-O157(7%)、赤痢菌(7%)、サルモネラ(6%)、ビブリオ(6%)、クリプトスポリジウム(5%)、エルシニア(0.8%)、およびカンピロバクター(0.6%)であった。


表:培養により確定した細菌感染および検査機関で確定した寄生虫感染の症例数、入院患者数および死亡者数(病原体ごと、米国FoodNet、2014年*

N/A=数値なし;STEC=志賀毒素産生性大腸菌
*暫定データ
†人口10万人・年あたり
§「Healthy People 2020」で設定された、カンピロバクター、リステリア、サルモネラ、STEC O157、ビブリオおよびエルシニア感染の人口10万人・年あたりの罹患率の目標値
¶ これら病原体については目標値の設定なし


 血清型が明らかになった6,565株(88%)のサルモネラ分離株のうち、上位6位までの血清型の症例数および人口10万人・年あたりの罹患率は、Enteritidis(1,401人、2.90)、Typhimurium(806人、1.67)、Newport(724人、1.50)、Javiana(639人、1.32)、I 4,[5],12:i:-(381人、0.79)、およびInfantis(235人、0.49)であった。ビブリオでは208株(96%)について種の情報が得られ、Vibrio parahaemolyticusが131株(63%)、V. alginolyticusが27株(13%)、V. vulnificusが19株(9%)であった。STEC non-O157では546株(79%)についてO血清群が特定され、O26(31%)、O103(24%)、O111(19%)の順に多かった。

 2006〜2008年と比較して、2014年に罹患率が有意に低かった病原体はSTEC O157(32%低下、95%信頼区間(CI) [18%〜43%])およびエルシニア(22%低下、CI [1%〜39%])で、罹患率が有意に高かった病原体はビブリオ(52%上昇、CI [22%〜89%])およびカンピロバクター(13%上昇、CI [5%〜21%])であり、その他の病原体では有意な変化が認められなかった(図1)。サルモネラのうち最も多く特定された6種類の血清型では、2006〜2008年と比較すると2014年はTyphimuriumの罹患率(27%低下、CI [18%〜35%])が有意に低かったが、Infantis (162%上昇、CI [100%〜244%])およびJaviana(131%上昇、CI[83%〜191%])の罹患率は有意に高かった。2014年に有意な変化がみられたこれら3種類のサルモネラ血清型について2006〜2014年の各年の罹患率を図2に示した。2011〜2013年との比較では、2014年はSTEC O157およびS. Typhimuriumで罹患率が有意に低く、STEC non-O157およびS. Infantisで罹患率が有意に高かった。食品由来の極めて重要な6種類の病原体(カンピロバクター、リステリア、サルモネラ、STEC O157、ビブリオ、エルシニア)を合わせた2014年の罹患率は、2006〜2008年および2011〜2013年のどちらの期間と比較しても有意な差が認められなかった。


図1:培養により確定したカンピロバクター、STEC O157、リステリア、サルモネラおよびビブリオ感染の各年の罹患率の2006〜2008年を基準とした相対値†(米国FoodNet、2006〜2014年)

†各折れ線は年ごとの罹患率を2006〜2008年の平均値と比較したときの相対値を示しており、実際の罹患率を示すものではない。


図2:培養により確定したサルモネラ(Typhimurium、JavianaおよびInfantis)感染の各年の人口10万人・年あたりの罹患率(米国FoodNet、2006〜2014年)


 2013年の18歳未満の下痢症発症後の溶血性尿毒症症候群(HUS)患者は計87人(18歳未満の人口10万人・年あたりの罹患率は0.79)で、このうち46人(53%)が5歳未満の小児であった(5歳未満の人口10万人・年あたりの罹患率は1.55)。5歳未満および18歳未満ともに、2013年のHUS罹患率に2006〜2008年と比較して有意な差はみられなかった。死亡者は報告されていない。

 培養によって感染が確定した症例(このうち一部はCIDT(culture-independent diagnostic test:培養非依存の診断検査)でも陽性)に加え、培養では確認されなかったCIDT陽性例1,597件が報告された。培養で確認されなかった理由は、培養検査が行われたが病原体が増殖しなかったか、培養検査が行われなかったかのいずれかである。これらのCIDT陽性例は感染症例数に含まれていない。カンピロバクターに関しCIDT陽性の1,070検体の場合、553検体(52%)については培養検査が行われず、 517検体(48%)は培養検査結果が陰性であった。同様に、STECに関しCIDT陽性の146検体では、62検体(42%)で培養検査が行われず、84検体(58%)で培養検査結果が陰性であった。これらのCIDT陽性試料を含む培養液135検体について公衆衛生検査機関が検査を行ったところ、65検体(48%)で志賀毒素陽性を確認した。CIDT陽性で培養検査結果が陰性または培養検査が行われなかった検体は、上記以外に、サルモネラ(193件)、赤痢菌(186件)およびビブリオ(2件)関連の各検体であった。


(関連記事)
CDCのデータによると、2014年にはいくつかの食品由来感染症の罹患率が低下している
CDC data show progress in reducing some foodborne infections in 2014
May 14, 2015
http://www.cdc.gov/media/releases/2015/p0514-reducing-foodborne-infections.html



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部