アイルランド食品安全局(FSAI)からのカンピロバクター関連情報
http://www.fsai.ie/


生乳(未殺菌乳)の喫飲に関連したリスクを欧州レベルで確認
Risks Associated with Drinking Raw Milk Confirmed at European Level
13 January 2015
https://www.fsai.ie/news_centre/press_releases/raw_milk_EFSA_opinion_13012015.aspx

(食品安全情報2015年2号(2015/01/21)収載)


 アイルランド食品安全局(FSAI)は、生乳(未殺菌乳)の喫飲にはリスクが伴う可能性があるとして、これを避けるよう以前から消費者に注意を促しており、今回、再び同様の注意喚起を発表した。FSAIによると、欧州食品安全機関(EFSA)は2015年1月13日、生乳の喫飲により消費者に健康リスクが生じる可能性があり、重篤な疾患につながる場合もあるとの専門家の意見を発表した。FSAIは数年前から、アイルランド国内でヒトの飲用に販売、消費されるすべての乳は低温殺菌されるべきであると強く推奨してきた。アイルランドで販売されている乳のほとんどは低温殺菌されているが、FSAIは、今後も生乳の喫飲を望む人は、今回のEFSAの意見に従い、有害な細菌を死滅させるため少なくとも喫飲前に煮沸を行うべきであるとしている。

 EFSAは今回の意見で、生乳には有害な細菌が含まれている可能性があり、生乳の汚染リスクを減らすための農場レベルでの適正衛生規範(GHP)の実施が不可欠であると同時に、生乳中に生残する細菌の増殖を抑えるための低温流通システム(cold chain)の維持管理が重要であるとしている。しかし、これらの対策のみではリスクを完全に排除することはできないため、喫飲前に生乳を煮沸することが多くの病原菌を死滅させる最も効果的な方法であるとも述べている。

 ベロ毒素産生性大腸菌(VTEC)O157、サルモネラ、カンピロバクター、リステリアなどの病原菌は、重大な食品由来疾患の原因となることがあり、生乳にはこれらの病原菌が含まれている可能性がある。これらの病原菌は、小児、妊婦、高齢者、免疫機能が低下している者などの被害を受けやすい集団では特に深刻な問題となることがある。国内外の研究から、これらの有害な細菌は生乳中に少量の菌数で生残することがあり、低温殺菌や煮沸により食中毒のリスクを効果的に排除できることが明らかになっている。

 FSAIは、低温殺菌は乳を安全に喫飲するための最も確実で許容可能な方法であり、生乳の喫飲には十分に裏付けられた重大な健康リスクが存在しているとの見解を以前から持っている。

 FSAIは過去数カ月間にわたり、生乳の喫飲により小児が重大なリスクに曝されたことを示す世界各地からの報告を調査した。オーストラリアでは、2014年12月に生乳の喫飲に関連して小児1人が死亡し、その他に4人が入院した。英国では、2014年遅くに農場でのウシの生乳の販売に関連して小児5人を含む大腸菌感染患者6人が発生した。

 FSAIは、食品安全に関連するリスクや、特に乳幼児、小児、高齢者、妊婦、免疫機能が低下した者などの健康について懸念している。複数の研究により、これらの人々は生乳の喫飲によって罹患する可能性が高く、また重症化することが示されている。免疫機能の改善法として生乳の喫飲を主張することに正当性はない。生乳の喫飲のリスクは考えられる利益をはるかに上回っている。

 FSAIは、すべての関係者の努力により、過去数年間で、農場での衛生管理および動物の健康が大幅に改善されたことを認識している。しかし、搾乳過程で糞便由来の病原菌に乳が汚染されるリスクは依然として存在しているため、ヒトが安全に喫飲できるように乳を低温殺菌する必要がある。農場における衛生管理の改善は品質の向上につながるが、常に安全性が保証されるわけではない。たとえ最良衛生規範に従っていても、生乳による重大な健康リスクの可能性は残る。


(食品安全情報(微生物)本号EFSA記事参照)



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部