英国食品基準庁(UK FSA)からのカンピロバクター関連情報
http://www.food.gov.uk/


カンピロバクター汚染調査の解析結果報告書を発表
Campylobacter survey analysis report published
10 September 2015
https://admin.food.gov.uk/news-updates/news/2015/14418/campylobacter-survey-analysis-report

(食品安全情報2015年21号(2015/10/14)収載)


 英国食品基準庁(UK FSA)は、英国の小売店舗で販売された生鮮鶏肉のカンピロバクター汚染レベルに関する通年調査の最終報告書を発表した。本報告書には、2014年2月〜2015年3月にFSAが行った調査により得られたデータに関する解析結果が収載されている。


 本報告書(Survey report)の要約部分を紹介する。
https://admin.food.gov.uk/sites/default/files/campylobacter-retail-survey-final-report.pdf


 カンピロバクター属菌は英国の食品由来疾患の最大の原因であり、鶏肉がその最も重要な媒介食品と考えられている。FSAおよび業界は、最高レベル(皮膚検体で菌数が>1,000 cfu /g)のカンピロバクター汚染を示す鶏肉の食鳥処理終了時における割合を2015年末までに10%未満にすることを共通の目標としている。今回の全国調査は、小売りの生鮮丸鶏およびその包装のカンピロバクター属菌汚染レベルを把握するために行われた。

 調査では、2014年2月〜2015年3月に英国産の生鮮丸鶏4,011検体の検査が行われた。検体は全期間にわたり英国全地域から偏りがないように(各地域の人口に比例して)採取され、イングランド公衆衛生局(PHE)の5カ所および北アイルランドの1カ所(Agri-Food & Biosciences Institute、ベルファスト)の計6カ所の検査機関で検査が行われた。放し飼いおよび有機飼育の鶏由来の製品の割合も考慮し、各社の鶏肉製品の市場占有率に比例して小売店から検体が採取された。FSAは、調査全体から得られたデータを既に2015年5月28日にオンラインで発表しており、今回の報告書は全データの詳細な解析結果をまとめたものである。

 今回の小売鶏肉の調査では、EN/TS/ISO 10272-2規格の標準菌数測定法が用いられた(検出限界は皮膚検体および包装の外側表面のスワブ検体とも10 cfu/gまたはスワブ)。鶏肉1パックにつき2検体の検査が行われた。1検体は皮膚(主に頸部皮膚)25gで、他の1検体は包装の外側表面(包装の外側表面全体を拭き取ったスポンジスワブ)であった。

 英国の小売段階の生鮮鶏肉のカンピロバクター属菌汚染率は73.3%であった。かなりの割合(19.4%)の皮膚検体が最高レベル(>1,000 cfu /g)の汚染を示し、この割合は小売店により12.9〜29.9%の幅があった。包装の外側表面については、スワブ検体の6.8%でカンピロバクターが検出され、小売店によるばらつきは3.1〜12.5%であった。包装外側表面のカンピロバクター属菌数は概して低レベルであったが、1.6%の検体で100〜4,500 cfu/スワブの菌数が検出された。

 汚染率の小売店による大きな差は、鶏肉検体の残存保存可能期間、鶏肉のサイズ(重量)、検体採取時期、または鶏の飼育方法の違いでは説明がつかなかった。また、鶏肉パックに記載された認可コード番号(食鳥処理施設を特定する)によって、最高レベル(>1,000 cfu/g)の汚染を示す鶏肉の割合が9.4〜29.7%と大きく異なっており、さらに、特定の認可施設のみから供給を受けている小売店がいくつかあることがわかった。

 最高レベルのカンピロバクター属菌汚染を示す鶏肉の割合は、冬季より夏季の方が高かった。重量が1,400 gを超える大サイズの鶏肉の方が、最高レベル(>1,000 cfu/g)の汚染のリスクが高かった。外部にアクセスできる(放し飼いや有機飼育など)鶏の方が、標準的条件下で飼育された鶏より汚染率が高いことを示すエビデンスはなかったが、放し飼いおよび有機飼育の鶏肉の検体数は非常に少なく、精度の高い比較は不可能であった。

 分離株のカンピロバクター種の特定が行われた皮膚検体のうち、76.6%でCampylobacter jejuniが特定された。13.9%でC. coliが、4.2%で両者が検出された。C. coliは冬季および春季より夏季の方が、また、外部にアクセスできる鶏ではそうではない鶏に比べより高頻度で分離された。同一の鶏肉パック由来の皮膚検体および包装外側表面検体の両方からカンピロバクター属菌が分離された場合、その93%で同一種が分離された。

 英国内で販売されている鶏肉のカンピロバクター汚染率は依然として高く、食品由来疾患リスクを考えるうえで鶏肉のカンピロバクター属菌汚染は引き続き重要である。


(食品安全情報(微生物)No.12 / 2015 (2015.06.10)UK FSA記事参照)



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部