(食品安全情報2015年12号(2015/06/10)収載)
英国食品基準庁(UK FSA)は、生鮮鶏肉のカンピロバクター汚染について1年間にわたり実施した調査を終了し、今回その全期間の集計結果を発表した。カンピロバクターは主に生の家禽肉に存在する食品由来細菌で、英国で発生する食中毒の最大の原因である。
調査は2014年2月〜2015年2月に採取された検体について実施され、主要な小売業者別のデータも含めた集計結果が今回、公式統計として発表された。報告書全文が本記事末尾記載のWebサイトから入手可能である。
12カ月にわたる調査の結果は以下の通りである。
FSAは、現行の鶏肉カンピロバクター検査について今後の詳細な計画も発表した。FSAはこの夏に新しい調査を開始し、再びすべての形態の小売店舗から生鮮丸鶏検体を採取する予定である。調査の継続は、家禽業界がカンピロバクター汚染防止のために現在導入している対策の効果のFSAによる評価に役立つと思われる。
FSAは、Marks & Spencer、Morrisons、Co-opおよびWaitroseの各社が最近カンピロバクター低減案を実行に移し、その結果をケーススタディとして公表したことを歓迎している。各社のデータは、生の丸鶏のカンピロバクター陽性率が有意に低下したことを示している。これらの検査は、FSAによる調査のための検体より新しく採取された検体について行われ、また一部の検査は特定の対策の効果を実証することを目的として実施された。
小売業者別の結果の概要
以下のすべての結果は本調査の公式統計報告からの抜粋である。当該報告書では調査結果の詳細および調査方法の背景が説明されている。
FSAは、小売業者別のデータは慎重に解釈すべきであると助言している。各小売業者および「その他(Others)」の小売業者の結果には信頼区間(CI)が示されている。CIは、採取された検体数に応じて、可能性のある真の値の範囲を示している。
95%信頼区間は、真の陽性率が20回中19回は信頼限界の上限と下限の間に入ることが期待できることを意味する。信頼区間の幅に影響を与える非常に重要な因子は検体数である。市場シェアが比較的小さい小売業者については採取する検体数が少ない。その結果、信頼区間の幅が大きくなる。
信頼区間を考慮すると、鶏肉検体の最高レベル(>1,000 cfu/g)でのカンピロバクター陽性率が小売業界全体の平均より低かった主要小売業者はTesco社のみであった。また逆に、平均より高かった主要小売業者はAsda社のみであった。しかし、今回の結果から、カンピロバクター汚染に関する業界統一の低減目標を本調査期間中に達成した小売業者は1社もないことが示唆された。
(表)
本調査は2014年2月中旬から2015年2月中旬までの12カ月間をカバーする予定であったが、必要な検体数の採取に関する状況から、2015年3月第1週まで若干延長せざるを得なかった。
*「その他(Others)」のカテゴリーには、Kantar社の2010年のデータから市場シェアが小さいと判断されたスーパーマーケット(Lidl社、Aldi社、Iceland社など)、コンビニエンスストア、個人商店、食肉店などが含まれる。
消費者向けの助言
FSAは、生の鶏肉が消費者の手に届く前に製造業者がカンピロバクターの汚染レベルを各製造段階でできる限り低減する責務を果たすよう強く求めている。鶏肉は、消費者が以下の助言に従い適正な調理手順を実践する限り安全である。
(食品安全情報(微生物)No.6 / 2015 (2015.03.18)、No.25 / 2014 (2014.12.10)、No.19 / 2014 (2014.09.17)、No.18 / 2014 (2014.09.03)、No.13 / 2014 (2014.06.25) UK FSA 記事参照)