フィンランド食品安全局(Evira)からのカンピロバクター関連情報
http://www.evira.fi/portal/fi/


フィンランドにおける動物由来分離株の抗菌剤耐性モニタリングおよび抗菌剤の使用量調査
FINRES-Vet 2010-2012
Finnish Veterinary Antimicrobial Resistance Monitoring and Consumption of Antimicrobial Agents
April 2015
https://www.evira.fi/globalassets/tietoa-evirasta/julkaisut/julkaisusarjat/elaimet/finres_vet_070515.pdf (報告書全文PDF)
https://www.evira.fi/tietoa-evirasta/julkaisut/elaimet/julkaisusarjat/finres-vet-2010-2012/

(食品安全情報2015年13号(2015/06/24)収載)


 フィンランドにおける動物由来分離株の抗菌剤耐性モニタリングの結果および動物用抗菌剤の使用量に関する報告書「FINRES-Vet 2010 - 2012 」が発表された。本報告書は2010〜2012年の調査結果を記載しているが、長期的な変動をより適切に把握するため、抗生物質や飼料添加物の使用量に関する表および図のほとんどに2003年まで遡ったデータが含まれている。本報告書の構成は、過去の一連の報告書(前回分の調査対象期間は2007〜2009年)と同じである。すなわち、動物に投与された抗生物質および飼料添加物の量の調査結果につづき、人獣共通感染症細菌、指標細菌および動物病原性細菌における抗菌剤耐性の状況が記載されている。また、2011〜2012年に行われた基質特異性拡張型・ラクタマーゼ(ESBL)産生株のスクリーニング結果と、特定病原体フリー(SPF)の認定を受けているトップクラスの繁殖農場で2011〜2013年に行われたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のスクリーニング結果も記載されている。


動物用抗菌剤の販売量

 動物用抗菌剤の販売量(有効成分のkg重量で表示)は、調査対象期間中に小幅な減少傾向がみられた。抗菌剤のクラスごとの販売量の割合には変化がみられなかった。最も販売量が多かった抗菌剤はペニシリンGで、2012年の総販売量のほぼ半分を占め、注射用抗菌剤の80%以上を占めていた。経口テトラサイクリンの販売量は2008年にピークに達し、その後はピーク前のレベルに戻っている。ヒトの医療に非常に重要な抗菌剤の販売量は調査対象期間中に増加したが、総販売量に占める割合は依然として低かった(2010〜2012年に、第三世代セファロスポリン系は0.03〜0.09%、マクロライド系は3〜3.6%、フルオロキノロン系は0.6〜0.7%)。


抗菌剤耐性

 動物および食品由来細菌の抗菌剤耐性は、前回までの調査対象期間に比べ低レベルにとどまっている。これは、フィンランドでは動物の疾病状況が良好であること、および抗菌剤を制限して使用していることが主な理由である。しかし、数種類の細菌の抗菌剤耐性の状況は懸念すべきものであるため、抗菌剤による治療の必要性を評価し、その使用が正当化される時のみ抗菌剤を使用すべきである。

 人獣共通感染症細菌であるサルモネラおよびカンピロバクターの抗菌剤耐性レベルは比較的低かった。ウシおよびブタ由来カンピロバクター株のフルオロキノロン耐性率のみが明らかに上昇していた。指標細菌としての大腸菌や腸球菌では、ブタ由来の大腸菌株およびブロイラー由来の腸球菌株で耐性が最も頻度高く観察された。腸炎を発症したブタ由来の大腸菌株に高レベルの多剤耐性率が引き続き観察された。乳腺炎を発症したウシ由来の分離株では、ブドウ球菌の場合、ペニシリンおよびトリメトプリムへの耐性が最も頻度高く検出され、ストレプトコッカスの場合はテトラサイクリンへの耐性が最も一般的であった。ペット動物由来の動物病原性細菌株に抗菌剤耐性が高レベルで見られた。イヌおよびネコから分離された大腸菌分離株に占めるESBL産生株の割合が、2011年から2012年にかけて上昇していた。



国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部